「顧客接点を最大化する、型破りなカスタマーサービス」:コストセンターから、プロフィットセンターへ_CHANNELCON後日レポート
D2Cブランド・コアラマットレス(Koala JP K.K.)が実践する、AIと人で“感動”を生むCSのつくり方
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「快適な睡眠」を追求するオーストラリア発のD2C寝具・家具ブランド、コアラマットレス。2017年から参入した日本市場では現在、平均レビュー評価4.6/5.0、「mybest AWARD 2025」寝具部門で最優秀賞を獲得するなど、多くのユーザーに支持されている。そんなコアラマットレスがいま力を注いでいるのが、CSを単なる問い合わせ窓口から、ブランド体験そのものを生み出す“事業の起点”へと進化させる取り組みだ。
本セッションのテーマは「顧客接点を最大化する、型破りなカスタマーサービス」。掲げられたのは、CSを「コストセンターからプロフィットセンターへ」という大胆なメッセージである。登壇したのは、Koala JP株式会社でカスタマーサービスのシニアチームリードを務める諸橋 佳乃子氏。ファシリテーターは、チャネルトーク 執行役員でセールスとマーケティングを統括する山本 凌嗣が務めた。
諸橋氏は、現場のマネジメントやオペレーションの統括を担いながら、業務改善や、システム構築に応じた最適なオペレーション設計に従事してきた。ちなみに山本はコアラマットレスの愛用歴5年、諸橋氏は6年半という“筋金入り”の二人のセッションとなった。
トラックでマットレスを届けた創業者と、根づく「顧客起点」
Koala JP 株式会社 カスタマーサービス シニアチームリード 諸橋 佳乃子氏
セッションは、コアラマットレスという会社の成り立ちから始まった。
創業者は、オーストラリアの元ラガーマン2人。選手時代の大怪我をきっかけに「快適に眠れるマットレス」を徹底的に追求し、生まれたのがこの会社だという。象徴的なのは、創業当初のエピソードだ。彼らは自分たちでトラックを運転し、お客様の手元へマットレスを直接届けに行っていた。買ってくれたお客様がどんな人で、商品が届いた瞬間にどんな喜びの反応をするのか。その「顧客起点」を何よりも大切にしていたのだ。
「そんなカスタマーファーストの2人が作った会社ですので、その思想は今も全社の全メンバーに深く根付いています」と諸橋氏。その姿勢が成長の原動力となり、コアラマットレスは3ヶ月ほど前に、オーストラリアの証券取引所へ新規上場を果たした。さらなるグローバル成長に向けて、世界中のチームが走り続けている。
中間業者を挟まないD2Cのモデルだからこそ、コアラマットレスは「お客様とダイレクトに繋がれる環境を、いかに最大限に活かして感動を生み出すか」に重きを置く。それを象徴するのが、2つの取り組み、「S&D(Surprise&Delight)」と「VoCを活かした商品開発」だ。
型破りなCSの象徴:予期せぬ感動を届ける「S&D」
「S&D」とは、その名の通り、お客様に予期せぬサプライズと歓喜を届ける活動である。
CSのエージェントが日々チャットやメールでお客様と会話するなかで、ふとプライベートな情報を打ち明けてもらえる瞬間がある。「結婚して新生活が始まるのでマットレスを新調します」「赤ちゃんが産まれて家族が増えたので、大きなサイズを注文しました」。そんな人生の大切な節目に、数あるブランドの中からコアラマットレスを選んでくれたのなら、マニュアル対応を超えてお祝いの気持ちをプラスで届けたい。その想いから、CSメンバーの発案で、マットレスのお届け日に合わせて花束を送ったり、オムツケーキをプレゼントしたりしている。
このS&Dには、3つのこだわりがある。1つ目は、現場のエージェントが上長の承認なしに、自分の裁量だけで即座にギフトを送れること。「稟議を回している間にタイミングを逃しては意味がない」と、現場へ完全に権限委譲されている。2つ目は、この活動のためだけに、オリジナルのギフトボックスや特製グッズを自社で企画・制作していること。3つ目は、お客様の言葉からライフイベントを敏感に察知し、こちらから能動的にハッピーを届けることだ。注目すべきは、これがマーケティング部門ではなく、CSチーム自らが予算を持ち、企画・運用・実行までを担う「CS主導」の取り組みだという点である。
象徴的な事例も語られた。あるお客様が里帰り出産のため、ご実家宛てにマットレスを注文。ところが届いた後、「サイズを間違えて購入してしまった」という交換の問い合わせが入った。対応の中でエージェントが“里帰り出産”だと知り、迅速にサイズ交換を進めると同時に、ご出産のお祝いとして「オムツケーキ」をサプライズで同梱したのだ。受け取ったお客様は、嬉しさのあまりInstagramのストーリーに温かい投稿をしてくれた。中には、オフィス宛てに手書きのお礼の手紙を送ってくれるお客様もいるという。「単なる“売り手と買い手”という枠組みを超えて、人と人としての深いエモーショナルな繋がりが生まれていると実感しています」と諸橋氏は語る。
型破りなCSの象徴②:VoCから生まれた日本専用商品「コアラフトン OASIS」
もう一つの強みが、顧客の声を活かした商品開発だ。その結晶が、日本のお客様の声から生まれたプロダクト「コアラフトン OASIS」である。
もともとコアラマットレスは、ベッド用の厚みのあるマットレスだけを販売していた。しかし日本のCS窓口には、「狭い住環境に合わせて、折りたたんで押し入れに収納できる三つ折りの布団タイプはないか」「フローリングや畳に直接敷いて使えるコアラマットレスはないか」という声が日々大量に届いていた。これをマーケティングやプロダクトチームに共有し市場データを調べると、当時の日本では全人口の約3分の1が、ベッドではなく敷布団で寝ているという明確なデータがあったという。
そこでコアラマットレスは、オーストラリア本社の開発チームと何度も協議を重ね、日本の伝統的な「布団文化」に最先端テクノロジーを融合させた、日本市場専用のプロダクトを開発。収納・持ち運びのしやすさ、室内干しのしやすさ、四季を通じて快適に使える工夫まで、使う人の暮らしに寄り添って設計し、大ヒットへとつなげた。外資系グローバル企業では、本国の開発チームがローカルニーズに合わせてくれない苦労がつきものだ。それをVoCの力で動かした点に、コアラマットレスの顧客起点の凄みがある。
チャネルトークを選んだ理由は「コンセプトの共鳴」
そんなコアラマットレスが、CSのシステムとしてチャネルトークを選んだ最大の理由。それは、UI/UXや機能性を前提としつつ、何より「チャネルトークが掲げるコンセプト、思想に心から共感できたから」だった。
「顧客中心の考え方」や「CS起点での改善によってビジネス全体に大きなインパクトを与える」という思想は、コアラマットレスが最も大切にする価値観と完全に一致していた。導入前、担当と何度も重ねたディスカッションの中で、山本は決まってこう問いかけたという。「コアラマットレスさんの理想の体験を作るために、どんな機能が欲しいですか。要望があれば何でも教えてください。私たちがプロダクトを変えますから」。その姿勢そのものがチャネルトークのサービスコンセプトを体現していると感じ、信頼につながった。「導入した今でも、素晴らしいサポートチームが密に伴走してくれている。選んで本当に良かった」と諸橋氏は振り返る。
導入前、コアラマットレスには大きく三つの悩みがあった。問い合わせの流入チャネル(電話・メール・SNS・Webチャットなど)がバラバラで、同じ顧客の対応履歴を追えなかったこと。配送状況の確認や返品ルールなど、FAQで済む“同じ質問の無限ループ”に現場のリソースが奪われていたこと。そして、会話の中に宝物のようなVoCがあるのに、それを綺麗に可視化して他部署へフィードバックする仕組みが追いついていなかったことだ。
これらを、コアラマットレスはすべての顧客コミュニケーション窓口をチャネルトークに統合することで解決した。あらゆるチャネルが一つの画面で一元管理できるようになり、対応品質のばらつきがなくなり、顧客の過去の履歴も一瞬で把握できる。とりわけVoCの集約は大きく進化した。以前はスタッフが手動でスプレッドシートに入力し、集計や抽出に限界があったが、今は「タグ機能」とダッシュボードを活用し、どんな課題の問い合わせがどれだけ発生しているかがリアルタイムで綺麗なグラフとして見える化される。「このVoCの可視化だけでも、導入した価値があった」と諸橋氏は言い切る。これにより、開発チームやマーケティングチームへ、より迅速かつ正確なデータをもとにした改善提案ができるようになった。
AI導入の目的は「コスト削減」ではなく、余白を生む「おもてなし」へ
セッションは、CHANNELCON26のメインテーマであるAIの活用へと進む。コアラマットレスのAI導入の目的は明確だった。
「世間一般でよくあるような“CSのコスト削減”のためではありません。本来CSがやるべき、最高峰の顧客体験を創造するための“余白の時間”を作るためです」。効率化して顧客を突っぱねるのではなく、人間が時間をかけるべきクリエイティブな仕事に集中するために、AIを手段として活用する。その思想が貫かれている。
役割分担も明快だ。チャネルトークのAI機能「ALF」は、お客様がサイト上で「検索感覚で気軽に使える超高性能なコンシェルジュ」。商品スペックや配送エリアの確認、返品手続きの案内など、FAQやWebサイトで自己解決できる定型的な内容を、驚異的なスピードと正確さでアシストする。一方、人間のエージェントは「感情に寄り添い、お客様の期待を超える感動を生み出す対応」に特化する。これにより、先述のS&Dに、現場のメンバーがより多くの時間を割けるようになった。
成果も着実だ。商品スペックやサービス仕様といったナレッジに関する回答は、ほぼ100%に近い正答率を実現。そして何より優れているのは、ALFが自分の知識の範囲外や、お客様の感情の機微を察知した複雑な内容については、無理に答えを作らず、ハルシネーションを起こさない。「ここから先は人間のオペレーターにバトンタッチします」とスムーズに有人対応へパスを繋ぐ点だ。この明確な棲み分けこそが、高い正答率と安心感の両立を支えている。山本も「AIに何でも全自動で自己学習させる無責任な設計はあえてせず、人間がコントロールできる範囲で100%正確に回答し、分からないことは瞬時に人間に繋ぐ。CSの現場と長く向き合ってきたからこその設計思想だ」と強調した。
AI時代にCSが目指すのは、人生の節目に寄り添う「アンバサダー」
最後のテーマは、AIという強固な土台を築いた先にある、これからのCSの姿だ。
諸橋氏が語ったのは、「他社との決定的な差をつけるのは、人間にしかできない対応であり、心のぬくもりである」という確信だった。スピードが求められる処理や定型業務はすべてAIに任せ、そこで生まれた時間でお客様とより深い信頼関係を築く。CSは単なる「問い合わせ処理の窓口」から、ブランドの顧客体験そのものを創造し、事業全体を動かすコアな起点へと進化していく。
AIが生んだ“余白”は、現場に三つの素晴らしい変化をもたらした。
一つ目は、問い合わせを「捌く」作業から「おもてなし」へのマインドシフト。心に余裕が生まれ、一人ひとりに深く寄り添えるようになった。
二つ目は、レビュー返信の徹底だ。自社サイトはもちろん、楽天やAmazonなど各ECモール、さらには運営するショールームやコラボカフェの「Googleマップの口コミ」にまで、CSチームが責任を持って丁寧に返信する。これが最高のVoC集約になっている。
三つ目は、S&D用オリジナルグッズの自社企画・制作。ホットアイマスク、充電ケーブル、ピローミスト、フードクリップといった“もらったら嬉しい”限定グッズを、CSメンバー自身がゼロから企画・デザインし、ベンダー選定や社内クリエイティブチームとのやり取りを経て完成させる。自分たちが作った特別なギフトでお客様に感動してもらえる経験は、メンバーのモチベーションを大きく高めているという。
そして諸橋氏は、目指す未来像をこう語った。「AI時代だからこそ、私たちは単に問い合わせを効率的に処理する集団ではなく、お客様の人生の節目に寄り添う唯一無二の存在でありたい」。引越し、結婚、出産といった人生の大きな転換点で、最高の睡眠と快適なハッピーライフを提案する、コアラマットレスの最高の「アンバサダー(親善大使)」になること。そのために大切なのは、まず自分たち自身が仕事を全力で楽しみ、ハッピーで満たされていることだという。内側から溢れるワクワクのエネルギーがお客様へ伝播し、世界中にハッピーの連鎖が生まれていく。
「AIテクノロジーで、人間の心のぬくもりを最大化する」。これが、コアラマットレスCSの次なる挑戦だ。オムニチャネルの一元管理、VoCのリアルタイム可視化、そしてALFによる余白の創出。そのすべてのピースが噛み合い、CSを“事業のど真ん中”に据える最高峰の組織が生まれている。顧客接点を最大化する、型破りなカスタマーサービス。コストセンターからプロフィットセンターへ。コアラマットレスの挑戦は、これからも続いていく。
当日のセッションの様子を詳しくご覧になりたい方は、以下のアーカイブ動画と投影資料のEbookをご覧ください。