「CSは、組織のPMになる」:スニーカーダンクが描く次世代カスタマーサポートのかたち_CHANNELCON後日レポート
コストセンターから、事業を動かすPMへ。AIが生んだ“余白”で挑むCSの進化
West • 既存顧客のサポート〜PRがメインの担当領域です!
- イベント
- お知らせ
スニーカーやアパレル、そして市場が急拡大するトレーディングカードを、個人間で安心・安全に売買できる国内最大級のCtoCプラットフォーム「スニーカーダンク(スニダン)」。これを運営する株式会社SODAは、チャネルトークの全導入企業のなかでも、AIエージェント「ALF」のタスクを最も高度に使いこなす企業の一社として知られる。
本セッションのテーマは、「CSは、組織のPM(プロダクトマネージャー)になる」という挑戦的な一文だ。登壇したのは、SODAでCustomer Support部 マネージャーを務める阿部 幸太氏。ファシリテーターはチャネルトークの皆巳 怜(Ray)が務めた。AIによる自動化の“その先”で、CSがいかにして事業を動かす存在へと進化していくのか、その最前線が語られた。
阿部氏は、Amazon、メルカリ、SmartHRといった大手・成長企業で一貫してCSの現場を歩んできた、CS歴14年のプロフェッショナルだ。2024年7月にSODAへ入社し、同年12月にマネージャーへ就任。長年の知見をもとに、チャネルトークの活用がCS組織をどう変革させ、これからどんな未来を描くのかを語った。
スニダンの強さの源泉「正規品保証」という信頼のインフラ
セッションは、一見ふつうのフリマアプリに見えるスニダンが、メルカリやヤフオクと決定的に異なる点の解説から始まった。その象徴として、阿部氏は会場にクイズを投げかけた。
スクリーンに映し出されたのは、NIKEでも人気の「Air Force 1」が2足。片方は本物の正規品、もう片方は極めて精巧に作られた偽造品だ。横向きの全体写真、かかとの「AIR」刺繍の拡大、つま先の質感まで見せても、会場の挙手は割れた。「プロのバイヤーでもない限り、画面越しじゃ絶対に分からないですよね」と阿部氏。正解は右側だったが、今や市場には、素材の質感や縫い目、箱のフォントに至るまで目視では100%判別できない偽造品が大量に流通しているという。しかもそれは数十万円の超レアスニーカーに限った話ではなく、1万円台の定番品にまで偽造品が溢れているのがリアルな現状だ。
ではスニダンはどう見分けるのか。プロの鑑定士による目視・触感のダブルチェックに加え、最終的には「X線撮影システム」でスニーカーの内部構造まで鑑定する。外見をどれだけ完璧に真似ても、中の構造までは誤魔化せない。出品された商品は一度必ず自社の物流拠点へ送られ、鑑定チームが全品を検品・鑑定し、「鑑定バッジ」を付けた状態で初めて購入者へ発送される。この強固な物流と鑑定の仕組みこそが、CtoCでありながら「正規品保証」を実現する信頼のインフラだ。
そして、このインフラを裏側で支えるのがCS組織である。仙台と東京の2拠点に、約70名のスタッフが在籍。組織は、実応対を担う「オペレーションチーム」、品質管理やナレッジ整備を担う「オペレーションサポートチーム」、VoCをもとにシステムやアプリの改善を他部署へ働きかける「プログラムチーム」、そして規約違反アカウントやクレジットカードの不正利用を未然に検知・排除する「リスクチーム」の4つで構成される。一般的なCSは前者3チーム体制が多いが、専門性の高いセキュリティ部隊である「リスクチーム」をCS内に組み込んでいる点が、プラットフォームならではの特徴だ。
「タスク」という革命:AI(ALF)が基幹システムを“見て、操作する”
スニダンに届く問い合わせは、「配送」「商品の状態」「決済・返金」「アカウント・不正利用」の4カテゴリーに大別される。だがCtoCゆえに、一つの取引には「出品者側」と「購入者側」の双方向の視点が存在する。さらに自社倉庫を挟むため、「出品者から倉庫に届いて鑑定中」「鑑定は通ったが梱包中」「倉庫から購入者へ発送済み」といった独自の取引ステータスが何十パターンも存在する。「出品者 × 購入者 × 数十通りの取引ステータス」という掛け算になり、問い合わせは極めて煩雑で、人力対応の大きな負担になっていた。
この課題に対し、SODAは2024年12月にチャネルトークのALFを導入した。当初は、ナレッジベースのテキストをAI(ALF)に読み込ませ、ヘルプページにある一般的なルールをチャットで自動案内する一次対応からのスタートだった。
転機が訪れたのは、1年後の2025年10月。チャネルトークのALFに「ルール」、そして阿部氏が「歴史的な革命」と呼ぶ「タスク」がリリースされた。タスクとは、ALFが決まったテキストを返すだけでなく、SODA社の基幹システムのデータをAPI経由で直接読みに行き、さらにデータを書き換える処理まで行う機能だ。
「それまでのAIは裏側のデータベースが見えなかったので、お客様から『私の取引は今どうなっていますか』と聞かれても、一般的な日数の目安しか答えられませんでした」と阿部氏。結局は有人オペレーターが毎回、注文番号を自社システムで検索し、状況を目視で確認して個別の案内文を作るか、手動でキャンセル処理をするしかなかった。それがタスクを活用することによって、AI自身が基幹システムへリアルタイムに状況を確認しに行き、個別データに基づく完璧にパーソナライズされた回答や、システム処理の自動実行まで可能になった。対応できる自動化の範囲が一気に広がった。
株式会社SODA Customer Support部 マネージャー 阿部 幸太氏
具体的な事例の一つ目が、取引ステータスの自動案内とイレギュラーの出し分けである。お客様が取引番号を伝えた瞬間、ALFが基幹システムへAPIでアクセスし、「現在、豊洲の倉庫で鑑定が完了し、発送手続きに入っております。あと2日以内にお手元へ到着予定です」といった100%正確な個別状況を自動で案内する。さらに見事なのは、データに基づくイレギュラーの自動判別だ。たとえば「ステータスが鑑定中のまま、規定の目安日数を3日以上超過している」異常を検知すると、ALFは自動で「専門スタッフによる倉庫調査が必要」と判断し、瞬時に有人チームへパスを回す。正常な取引はALFがその場で完結させ、問題のある取引だけを人間にトリアージする仕組みが完成した。
「ステータスの種類に加えて『○日経過しているか』という日付の掛け算が入るので、5個や6個ではまったく収まらず、数十パターンの複雑なマトリクスを設計しました」と阿部氏。皆巳も「この条件分岐の設計は、画面の裏側で何度も膝を突き合わせて構築しましたね」と振り返る。注目すべきは、この仕組みが既製システムでなくても、自社独自のスクラッチシステムであっても、APIさえあれば完全に再現可能だという点だ。
成果は驚異的だった。このステータス案内のカテゴリーでは、届く問い合わせの89%を、人間が1秒も介在することなくタスクだけ自動解決。さらに、ALFが基幹システムのデータを自ら書き換えて処理を完了させる二つ目の事例でも、本人確認や意思確認といった要件をチャットで満たしたとALFが判断すれば、その場で処理を完結させ、手続き関連のカテゴリーで85%を自動解決している。そして全体では、月間数万件という膨大な問い合わせのうち、実に53%がALFだけで完全に自己解決して完結しているという。「管理画面を見に行き、直接操作する」というタスクの恩恵は、文章を返すだけのボットとは桁違いの成果をもたらした。
効率化は目的ではなく手段:CSが自らプロダクトを動かし始めた
だが、本セッションの核心は「53%自動化して凄いでしょう」という効率化の自慢ではない。皆巳の問いかけに、阿部氏ははっきりと答えた。「効率化は目的ではなく、あくまで手段に過ぎません」。
膨大な時間を生み出した最大の理由は、コスト削減(人件費カット)ではなく、ユーザーの信頼を守り、もっとアプリを使いやすくするための「プロダクト改善」にCSの全時間を使いたかったからだ。AIによって新たな余白が生まれたことで、CS組織には型破りな業務が当たり前に生まれ始めている。
一つ目は、簡易的なプロダクト開発や文言修正を、CS自身が手を動かして実行していることだ。「このUIの文言が分かりにくいから問い合わせが来る」とVoCで判明した場合、エンジニアへ開発チケットを切って何週間も待つのではなく、簡単な修正ならCSメンバー自身が社内システムを操作してアプリの文言を直接アップデートする。オペレーター業務を効率化するための社内管理画面のUI改善も、CSが自ら開発している。二つ目は、最も大きな変化として、プロダクト・ロジスティクス・鑑定といった社内のコア部署とCSが密に連携し、「どうすれば根本的にトラブルをゼロにし、顧客体験を最高に高められるか」という戦略の企画立案に、CSが圧倒的な時間を使えるようになった点だ。CS組織が、まるで社内の「PM(プロダクトマネージャー)」のように動き始めている。
「CSはスニダンのPMになる」:データを武器に会社を動かす
阿部氏が掲げるのは、「CSはスニダンのPMになる」という強いビジョンだ。CSは、社内で誰よりもお客様と会話している「ユーザーの第一代理人」であり、後ろに控えて処理をするだけの「コストセンター」ではない。これからのCSは、ユーザーのリアルな意思を背負ったPMとして、開発・マーケティング・物流など全部署に能動的に介入し、事業全体の成長をドライブしていく存在になるべきだという。
ただし、そこには大きな壁があった。これまでのCSの提案は、「お客様はきっとこう感じているはず」「こういう不満の声が上がっている」といった主観や定性的な情報に頼らざるを得ず、開発の優先順位を上げてもらうための決定的な説得力に欠けていた。新機能を作りたいマーケやプロダクトチームが「これくらいの売上が作れる」という事業KPIを武器に提案してくるのに対し、CSは「問い合わせが何件来ているから改善して」としか言えなかったのだ。
「これからのCSは、圧倒的な数字の根拠を武器にすべきです」と阿部氏は語る。たとえば「この画面でエラーにより問い合わせをしたユーザーの何%が、その後アプリを二度と開かず完全に離脱している。だから、どんな新機能開発よりも、ここを最優先で今すぐ改善しなければいけない」。そんなビジネスインパクトの数字を、CS自らが提示して会社を動かしていく姿だ。
その強力な武器になるのが、チャネルトークの最新データ分析機能「AI CoS」である。AI CoSを活用すれば、これまで一部ユーザーのVoC分析に何日もかけていたものが、問い合わせすらしてこない“サイレントカスタマー”も含めた全ユーザーの行動データと、離脱や売上減少という重大なビジネスインパクトの数字を、チャットベースでわずか5分で可視化できる。CSが分析作業に追われる時間はゼロになり、ビジネスインパクトをもとにした「次の改善企画を考えるクリエイティブな時間」へ100%注力できるようになる。
すでに、CSが主導してプロダクトをアップデートした成功事例も生まれている。スニダンの「預かり品」機能の一覧ページを、CSチームが主軸となって全面リニューアルしたのだ。VoCをベースに、UIデザインの設計から、裏側のロジスティクス(倉庫)との新しいオペレーション連携の構築まで、コードを書くこと以外のほぼ全工程を、CSの現場メンバーがPMとなってやり遂げた。リリース後、お客様の課題は見事に解決され、CSが事業を主導した大きな成功例となった。この取り組みはAI CoSを活用する前で、今後はさらに早いスピードでの改善が期待されている。「ただ問い合わせに答えるだけでなく、お客様がそもそも迷わないためのプロダクト自体をCS起点で作っていく。これこそ、AIによって時間が生まれた先にある、最高にエキサイティングなCSの姿です」と皆巳は語る。
CSを「プラチナ職」へ:CS歴14年のプロが描く未来
最後に、阿部氏は個人的な熱い想いを語った。
CSの世界に足を踏み入れて14年。業界に入ったばかりの頃、カスタマーサポートは「クレーム処理のコールセンター」「マニュアル通りに喋るだけで誰でもできる仕事」と、低く見られる瞬間が本当に多かったという。今でこそ「CSは大切だ」と語る経営者は増えたが、世間一般のイメージやキャリアとしての市場価値は当時から大きくは変わっていないのではないか、と阿部氏は悔しさをにじませる。本来、カスタマーサポートは誰よりも専門性が高く、最前線でお客様を直接ハッピーにできる、クリエイティブで素晴らしい職種だ。「私の人生最大の夢は、この日本において、CSを誰もが憧れる最高峰の『プラチナ職』へ引き上げることです」。
定型問い合わせをALFで自動化し、タスクでシステム処理を完了させ、AI CoSでビジネスインパクトを瞬時に分析する。このプラットフォームの活用によって、CSの仕事は同じ作業を繰り返す「オペレーティブ」なものから、付加価値を生む「クリエイティブ」な仕事へと進化し、CSが自ら事業を動かし、売上を作る存在であることを証明できるフェーズに来た、と阿部氏は確信する。
そしてこの挑戦は、SODA1社だけでは成し遂げられないと阿部氏は言う。「ここにいる皆様全員と手を携えて、成功事例を共有し合い、CS業界全体の市場価値を一緒に盛り上げていきたい。私たちがその先陣を切って、圧倒的な成功事例をこれからもスニダンから作り続けます」。
AIが生んだ“余白”を、事業を動かす力へ。コストセンターから、ユーザーを代弁するPMへ。スニーカーダンクが切り拓く次世代のCSは、業界全体の未来そのものを照らし始めている。
当日のセッションの様子を詳しくご覧になりたい方は、以下の投影資料Ebookをご覧ください。