ナレッジマネジメントとは?現場で仕組みが回り続ける考え方

ナレッジマネジメントとは、社員の知識やノウハウを組織で集めて共有し、業務に活かし続ける経営手法です。暗黙知と形式知、SECIモデル、サポート現場でナレッジを作り直し続けるKCS、AI時代にナレッジの質が重要になる理由と失敗パターンを解説します。

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カスタマーサポートの現場でナレッジマネジメントが必要になるのは、回答の質が担当者によってばらつき、ノウハウが特定のベテランに偏るからです。マニュアルを整備したのに、気づけば使われなくなっているケースも少なくありません。

ナレッジマネジメントとは、社員が持つ知識やノウハウを組織で集めて共有し、業務に活かし続けることで、属人化の解消や生産性の向上につなげる経営手法です。単なる情報共有にとどまらず、知識を「集める・整理する・使う・更新する」仕組みとして回し続ける点が特徴です。

本記事では、基本的な考え方であるSECIモデルと、日々の問い合わせ対応の中でナレッジを作り、育て続ける方法論「KCS」を解説します。

AI時代にナレッジの質が重要になる理由も取り上げます。属人化や対応品質のばらつきに課題を感じている方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

ナレッジマネジメントとは?意味と重要性

ナレッジとは、社員が業務を通じて身につけた知識や経験、ノウハウのことです。

ナレッジマネジメント(Knowledge Management)とは、社員が持つ知識やノウハウを組織で集めて共有し、業務に活かし続けるための経営手法です。日本語では「知識管理」「知識経営」とも訳され、属人化の解消や生産性の向上につなげることを目的としています。

この章では、その基礎となる「暗黙知」「形式知」という考え方と、混同されやすい「ナレッジ共有」との違いについて解説します。

暗黙知と形式知とは?

暗黙知とは、個人の経験や勘に基づく、言葉にしにくい知識のことです。一方、形式知とは、文章や図などで言語化され、他者と共有できる知識のことです。

カスタマーサポートの現場で言えば、ベテラン担当者が持つ「この言い回しだと顧客が納得しやすい」といった感覚は暗黙知にあたります。それをマニュアルやFAQとして書き起こしたものが形式知です。

区分

特徴

現場での例

暗黙知

言語化しにくい経験・勘

ベテランの対応の勘所

形式知

言語化され共有可能

マニュアル、FAQ、ナレッジ記事

属人化の多くは、この暗黙知が形式知に変換されないまま、個人の中にとどまることで起こります。

ナレッジ共有との違いとは?

ナレッジ共有とは、知識を組織内で共有する活動そのものを指します。

これに対してナレッジマネジメントは、知識を集める・整理する・使う・更新するという一連の流れを指します。この流れを、仕組みとして運用し続ける点が特徴です。

つまり、ナレッジ共有はナレッジマネジメントを構成する一部分です。共有の仕組みを作っただけでは、情報は徐々に古くなり、使われなくなっていきます。

ナレッジマネジメントを始めるときの基本的な流れは、次の4段階です。

  • 集める:問い合わせ対応の中で出てきた回答やノウハウを記録する

  • 整理する:重複や古い情報を取り除き、探しやすい形に分類する

  • 使う:日々の対応で参照し、回答のばらつきをなくす

  • 更新する:使われ方や問い合わせの変化に合わせて直し続ける

なお、組織でナレッジ共有を進める具体的な手順については、「ナレッジ共有とは?マニュアル整備が進まないチームを変える改善ステップ」で詳しく解説しています。

SECIモデルとは?知識が生まれる仕組み

SECIモデルとは、暗黙知と形式知が互いに変換されながら、組織の知識が生まれていく過程を示したモデルです。

経営学者の野中郁次郎氏・竹内弘高氏が、著書『知識創造企業』(東洋経済新報社、1996年。原著は1995年)で示しました。

参考:【追悼】いまこそ、知の作法を身につけよ(前編) - ダイヤモンド・オンライン

この章では、SECIモデルを構成する4つの段階について解説します。

知識創造の4段階(共同化・表出化・連結化・内面化)

SECIモデルは、以下の4段階が循環することで知識が創造されるとしています。

  • 共同化(Socialization):経験を共有し、暗黙知を暗黙知のまま伝える段階

  • 表出化(Externalization):暗黙知を言葉や図にし、形式知に変換する段階

  • 連結化(Combination):複数の形式知を組み合わせ、新たな知識を作る段階

  • 内面化(Internalization):形式知を実践することで、再び個人の暗黙知として定着する段階

カスタマーサポートの現場に当てはめると、以下のような循環になります。

  • ベテランの対応の勘所(暗黙知)をチームで話し合う(共同化)

  • 話し合った内容をマニュアルに書き起こす(表出化)

  • 既存のFAQと組み合わせて整理する(連結化)

  • それを読んだ新人が、実践の中で自分のものにしていく(内面化)

この循環が止まると、知識は個人の中にとどまったまま組織全体には広がりません。次章では、この循環を回すことで得られるメリットを整理します。

ナレッジマネジメントのメリットとは?

ナレッジマネジメントに取り組む代表的なメリットは、対応の属人化を防いで品質を安定させ、組織全体の対応レベルを底上げできることです。

この章では、「属人化防止と対応品質の安定」「人材育成・引き継ぎの効率化」という2つの観点から解説します。

属人化防止と対応品質の安定

ナレッジが形式知として整理されていれば、担当者が誰であっても、同じ水準の回答ができるようになります。そのため、特定のベテラン社員が不在の日でも、対応品質が大きく落ち込むことを防げます。

一方で、ナレッジが暗黙知のまま放置されていると、担当者ごとの経験差がそのまま回答のばらつきにつながります。この差を埋める役割を果たすのが、ナレッジマネジメントの仕組みです。

人材育成・引き継ぎの効率化

ナレッジが整理されていると、新人教育や担当者の引き継ぎにかかる時間を短縮できます。口頭での説明に頼らず、整理された形式知を参照しながら学べるためです。

具体的には、新人は過去の対応履歴やFAQを見ながら実務に近い形で学習でき、指導役の負担も軽減されます。結果として、育成にかかる工数を他の業務に振り向けやすくなります。

現場で回すナレッジ管理「KCS」とは

KCS(Knowledge-Centered Service)とは、問い合わせ対応などの日々の業務の中でナレッジを作り、使い、直し続けるための方法論です。もともとはサポート部門向けに生まれ、現在はサポート以外の業務にも広がっています。

米国の非営利団体Consortium for Service Innovationが1992年から研究し、策定・管理しています。

参考:KCS v6 Practices Guide - Consortium for Service Innovation

この章では、KCSの2つのループと、国内の導入事例について解説します。

Solveループで都度ナレッジを直す

Solveループとは、問い合わせに対応しながらナレッジを探し、なければ作って使いながら直し続ける一連の流れのことです。マニュアルを別作業として整備するのではなく、日々の対応そのものがナレッジ更新の機会になります。

具体的には、担当者が回答する際に既存のナレッジを確認するのが起点です。情報が古ければその場で直し、存在しなければ新たに作成します。

このため、ナレッジが実際の問い合わせ内容とずれにくくなります。

Evolveループで全体を見直す

Evolveループとは、ナレッジの使われ方のデータをもとに、ナレッジ全体の構成や品質を定期的に見直す仕組みのことです。Solveループが個別の対応に対する改善だとすれば、Evolveループは組織全体のバランスを整える役割にあたります。

このように、日々の改善(Solve)と全体の見直し(Evolve)を両輪で回す点が、KCSの特徴です。

国内事例|生産性向上の実績

KCSを導入した国内企業の1つに、東京海上日動コミュニケーションズがあります。

情報処理学会の会誌によると、4チーム全体での運用開始から1年後に生産性が向上し、内訳は2チームで約25%、残り2チームで約7%です。要員14名分に相当する削減効果も試算されています。

参考:新しいナレッジマネジメントの方法論・KCSの導入と成果について - 情報処理学会

一方で、同社では移行直後に生産性が一時的に下がる傾向がみられたため、対象者を段階的に広げる方式に切り替えました。Solveループの定着には、一時的な生産性低下を織り込んだ移行計画を立てることが重要だと考えられます。

KCSは理論だけでなく、運用の立ち上げ方そのものが成果を左右する方法論だといえるでしょう。

AI時代のナレッジマネジメント

AIが生成する回答の精度は、登録されているナレッジの質によって決まります。

この章では、その理由と、顧客理解のためのAIエージェント「チャネルトーク」の中でナレッジの質を保つために役立つ機能を解説します。

なぜナレッジの質がAI回答を左右するのか?

AIは、ナレッジとして登録された情報を根拠に回答を生成します。そのため、情報が古かったり誤っていたりすると、そのまま誤った回答をしてしまいます。

つまり、AIを導入するだけで自動的に回答精度が上がるわけではありません。根拠となるナレッジを、正しく整備し続けることが前提になります。

一方で、AIが答えられなかった問い合わせは、ナレッジに不足がある箇所を発見する手がかりにもなります。具体的には、未回答や誤答が多い質問を定期的に洗い出し、該当するナレッジを追加・修正する運用が有効です。

ナレッジ管理に役立つチャネルトークの機能

ナレッジの整備と更新を支える機能として、チャネルトークの「ALF」と、チャネルワークスの「ドキュメント」「AI CoS(Chief of Staff)」を紹介します。

チャネルワークスは顧客対応の画面とは別に社内の業務を支えるワークスペースで、ドキュメントはそのAIナレッジベースにあたります。

ALFは、顧客からの問い合わせに自動で回答するAIエージェントです。「ルール」と「ナレッジ」という2つの要素をもとに、回答を生成します。

「ナレッジ」はALFが参照する資料を集めて管理する場所で、「ルール」は回答の方針をチームであらかじめ設定しておく仕組みを指します。

ドキュメントは、FAQやご利用ガイドなどの記事を作成・公開できる機能です。ここに登録した記事を、ALFが回答の根拠として参照する仕組みです。

AI CoSは、社員が業務中の疑問を自然言語で質問できるチャネルワークスのAIエージェントで、ドキュメントの情報をもとに回答します。

機能

主な役割

参照する情報

ALF(ルール・ナレッジ)

顧客対応の自動回答

ナレッジに登録した資料、ドキュメントの記事

ドキュメント

記事の作成・公開・管理

自社で作成した記事

AI CoS

社員からの業務質問への回答

ドキュメントに登録された記事

このように役割を分担させると、顧客対応用のナレッジと社内向けの情報を整理でき、ナレッジ全体の質を保ちやすくなります。

なお、ドキュメントの具体的な作り方・整え方は、「社内Wikiの作り方5ステップ!マニュアル散在を防ぐ効率的な運用方法」で詳しく解説しています。

仕組みが回らなくなる失敗パターン

ナレッジマネジメントがうまく回らなくなる背景には、いくつかの共通したパターンがあります。この章では、代表的な2つの原因を解説します。

登録作業が続かない理由とは?

ナレッジの登録が日常業務とは別の「追加作業」として扱われてしまうことが、続かなくなる主な理由です。問い合わせ対応で忙しい中、わざわざ別の画面や手順でナレッジを登録する手間は、どうしても後回しにされがちです。

KCSのSolveループは、問い合わせに回答する作業そのものの中でナレッジを直せる仕組みです。この仕組みを取り入れれば、負担を減らせます。

逆に、登録の手間が大きいほど、仕組みは形骸化しやすくなります。

情報の陳腐化と検索性の低下

情報が更新されないまま放置されると、どの情報が正しいのか分からなくなり、ナレッジ自体が使われなくなっていきます。製品の仕様変更やキャンペーン内容の更新があっても、該当するナレッジが直されなければ、古い情報が残ったままです。

また、ナレッジの数が増えるにつれて、必要な情報を必要なときに探し出せないという課題も起こりやすくなります。この状態では、せっかく登録したナレッジも、担当者に活用されないまま埋もれてしまうでしょう。

まとめ

ナレッジマネジメントとは、知識やノウハウを組織で集め、業務に活かし続けるための経営手法です。カスタマーサポートの現場の属人化や対応品質のばらつきは、SECIモデルが示す知識循環の仕組みが回っていないことが一因です。

KCSのSolveループ・Evolveループは、日々の対応と定期的な見直しを通じて、ナレッジを作り直し続ける仕組みです。この仕組みを持つことが、形骸化を防ぐ鍵になります。さらにAI時代においては、ナレッジの質がそのままAIの回答精度を左右するため、整備を怠ることはできません。

チャネルトークのALFと、チャネルワークスのドキュメント・AI CoSは、こうしたナレッジの整備と活用を支える機能です。自社の仕組みが「回っているか」を見直すきっかけとして、ぜひ機能の詳細も確認してみてください。

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