カスタマーサポートツールの稟議を通す5つのポイントとROI算出法
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「カスタマーサポートツールを導入したいが、稟議が通らないかもしれない」
そう悩むカスタマーサポート責任者は少なくありません。
稟議を通すには、ROI(投資対効果)を具体的な数字で示すことが欠かせません。しかし、現場の課題は分かっていても、数字への変換は簡単ではないはずです。
稟議書を提出しても、「効果が見えない」と差し戻されることもあるでしょう。
対応を先送りすれば、顧客対応の質の低下や機会損失につながる恐れもあります。
主な原因は、経営層視点の欠如と、ROIの具体的な数字不足にあります。
本記事では、稟議書に書くべき5つのポイントを解説します。
経営層を納得させるROIの算出方法や、承認を勝ち取る伝え方のコツも紹介します。
すでにツール比較を終え、社内承認の進め方に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
カスタマーサポートツールの稟議承認に必要な準備の全体像
稟議を通すには、思いつきで書類を用意するのではなく、事前の準備が欠かせません。
この章では、稟議が止まりやすい理由と、承認までに整えておくべき準備の全体像を解説します。
なぜ稟議で止まってしまうのか?
稟議が止まる主な理由は、承認に関わる人数の多さと、事前の根回しに時間がかかることです。弁護士ドットコム株式会社の調査では、稟議の承認完了までに1日以上かかる企業が73.5%に上りました。
課題として最も多かったのは、承認に関わる人数の多さで41.0%を占めています。
次いで、事前の相談や根回しに時間がかかることも35.9%が課題に挙げました。カスタマーサポートツールの導入でも、関係部署への説明を省くと稟議が長期化しがちです。
参考:<社内稟議の実態調査>稟議の承認までの所要時間、1日以上が約7割-弁護士ドットコム株式会社
承認までに必要な準備とは?
承認までに必要な準備は、課題の数値化、ROIの算出、関係者への事前説明の3点です。
現状把握とROIの算出方法は、次章以降で詳しく解説します。
まずは、誰にどの順番で説明するかを整理しておくことが重要です。
すでに複数のツールを比較検討済みの方は、比較時に整理した情報がそのまま稟議書の材料になります。
また、稟議書の件名は「〇〇導入に関する稟議」のように、内容が一目で把握できる具体的なものにしておくと、承認者が内容を判断しやすくなります。
稟議を通すために準備すべき5つのポイント
稟議書には、感覚的な説明ではなく、数字の根拠として裏付けられた資料が必要です。
ここでは、稟議を通すために準備すべき5つのポイントを解説します。
1.現状の課題を数値で示す資料
現状の課題を数値で示すには、問い合わせ件数・対応時間・対応漏れ件数を可視化することが基本です。
準備しておきたいデータは、次のとおりです。
月間の問い合わせ件数と対応時間
対応漏れや遅延の発生件数
一人あたりの対応工数
2.導入目的・効果を整理した資料
導入目的は、効率化だけでなく、経営層が重視する指標に紐づけて整理することが重要です。応対時間の短縮、顧客満足度の向上、対応履歴の共有などが代表例です。
カスタマーサポートツールは、対応の自動化や情報共有を通じて、チームの業務効率化に貢献する点も、目的整理の際に押さえておきたいポイントです。
また、FAQやナレッジベースを充実させることで、問い合わせそのものの件数を削減できる点も、導入目的として整理しておくと良いでしょう。
目的を明確にすると、経営層は投資の意義を理解しやすくなります。
3.削減効果を金額で示す資料
削減効果を金額で示すには、削減時間・時給・対応件数を掛け合わせて算出することが基本です。算出した削減効果額は、ツールの導入コストと合わせてROI(投資対効果)の算出にも活用できます。
具体的な計算手順は、後ほど詳しく解説します。
4.費用・セキュリティ・撤退条件を示す資料
費用だけでなく、セキュリティと撤退条件も、稟議の可否を左右する重要な要素です。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、クラウドサービス選定時に安全性・信頼性を比較できる情報の確認を推奨しています。
準備しておきたい項目は、次のとおりです。
費用:初期費用・月額費用(利用人数による変動を含む)
セキュリティ:セキュリティ認証の有無(ISO/IEC 27001等)
撤退条件:解約条件と、データの移行・削除方法
費用については、「月額◯万円」という総額だけでなく、見積書レベルの内訳まで整理しておくことが重要です。基本プランの料金に加え、どのオプション機能が必要で、それがいくらなのか、そして合計でいくらになるのかを一つずつ書き出しておきましょう。
内訳まで用意しておくと、経営層から「なぜこの金額なのか」「このオプションは本当に必要か」と質問された際にもその場で答えられ、稟議の通過率が高まります。
稟議申請の経験談
実際にカスタマーサポートツールの導入稟議を経験した担当者からも、「なぜこのオプションが必要か、それがいくらで、結果いくらになるかを細かく説明をする必要があった」という声があがっています。総額だけでなく、内訳まで準備しておくことが、稟議通過の鍵になりそうです。
5.他社ツールとの比較資料
複数のツールを比較する際は、料金・機能・セキュリティを一覧化した比較表を用意すると、経営層への説得力が高まります。
選定にあたっては、料金の安さだけでなく、コストと効果を総合的に評価することが重要です。
多くのカスタマーサポートツールはチケット管理機能を備えていますが、AIによる自動化機能や、チャット・メール・電話など対応チャネルの網羅性は、ツールによって差が出やすいポイントです。
比較項目 | 候補ツールA(本命) | 候補ツールB | 候補ツールC |
|---|---|---|---|
月額費用 | 例:50,000円〜(10ユーザー) | 例:45,000円〜(10ユーザー) | 例:38,000円〜(10ユーザー) |
主要機能 | 例:チャット・メール・電話に対応、FAQ自動応答・AIの自動化機能あり | 例:チャット・メールに対応 | 例:チャットのみ対応 |
セキュリティ認証 | 例:ISO/IEC 27001取得済み | 例:取得予定 | 例:情報未公開 |
サポート体制 | 例:専任担当者による導入支援あり | 例:メールサポートのみ | 例:ヘルプページのみ |
※上記は記入例です。実際に資料を作成する際は検討しているツールの情報に置き換えて掲載してください。
比較の際は、自社の問い合わせ量やチーム規模に合ったツールを選ぶことも忘れずに確認しましょう。
ROI算出の準備ステップ
ROIの算出は、削減できる人件費の計算と、問い合わせ量の可視化という2つのステップで進めます。
ここでは、それぞれの具体的な手順を解説します。
1.削減できる人件費を計算する
削減できる人件費は、「1件あたりの削減時間(時間換算)×時給×対応件数」という式で試算できます。対応時間を「分」単位で把握している場合は、60で割って時間に換算してから計算してください。
たとえば、1件あたりの対応時間を5分短縮できたとします。 月間1,000件の問い合わせなら、月間で約83時間の削減効果です。
時給2,000円で換算すると、月間で約166,000円の削減効果になります。
時給や件数は、自社の実際のデータに置き換えて試算してください。
2.ROI(投資対効果)を算出する
削減できる人件費(=利益に相当する効果)が算出できたら、ツールの導入コスト(投資額)と合わせてROIを算出します。
ROIの基本式は、次のとおりです。
ROI(%) =(削減できる人件費 - ツール導入コスト)÷ ツール導入コスト × 100
ROIは一般的に「利益÷投資額×100」という式で表されますが、今回の場合は、削減できる人件費から先にツールの導入コストを差し引く形で計算しています。
これは、「削減できる人件費」がまだ導入コストを引く前の効果であり、そこから導入コストを引いて初めて「導入した場合と導入しなかった場合のコストの差額」(=利益に相当する部分)が確定するためです。
式の見た目は異なりますが、この差額が一般的な式でいう「利益」にあたるため、理論上は同じ計算式です。
たとえば、月間166,000円の削減効果に対し、ツールの月額費用が50,000円の場合、ROIは次のように計算できます。
ROI=(166,000-50,000)÷50,000×100=232%
自社で試算する際は、削減効果額とツールの導入コスト(初期費用+月額費用)を実際の数字に置き換えて計算してください。ツール導入コストは、基本プランとオプション費用の内訳まで整理した見積金額を使うと、より精度の高いROIを算出できます。
ROIが高いほど投資効率が良いと判断できるため、稟議書に記載する際の説得材料になります。
3.問い合わせ量を可視化する
問い合わせ量を可視化するには、まず今使っている環境でデータを集めることから始めます。
メールの受信件数や電話の着信ログ、Excelでの手動集計など、既存の手段で件数や対応時間を洗い出すのが基本です。手作業での集計は、件数が多いほど工数がかかり、正確性も下がりやすいため、1〜2週間など期間を区切って集計すると負担を抑えられます。
さらに精度を高めたい場合は、候補ツールの無料トライアル期間を活用する方法もあります。たとえば問い合わせ件数や対応時間、担当者ごとの対応状況などを自動で集計でき、稟議書に使うデータをExcelなどでダウンロードできるツールのトライアルを活用すると良いでしょう。
顧客理解のためのAIエージェント「チャネルトーク」は無料プランを利用でき、有料機能は14日間の無料トライアルで試すことができます。カスタマーサポートツールの導入をご検討中の方は、以下よりチャネルトークのサービス概要資料をご確認ください。
承認を勝ち取るための伝え方
稟議の承認率を高めるには、効率化だけでなく、リスク回避や利益への貢献を伝えることが重要です。ここでは、伝え方の工夫と、効果を証明する準備を解説します。
リスク回避・利益貢献として伝える
単なる効率化ではなく、クレーム防止や機会損失の回避として伝えると、経営層に響きやすくなります。
中小企業庁の2025年版中小企業白書でも、デジタル化の取組段階が進んでいる企業ほど、売上面・コスト面・人材面のいずれにおいても効果を実感している割合が高いというデータが示されています。
対応の遅れは、顧客離れや売上機会の損失につながりかねません。稟議書には、導入しない場合に起こりうる損失も併記すると説得力が増します。
参考:中小企業白書-中小企業庁
トライアルで効果を証明する
カスタマーサポートツールによっては、無料プランや無料版のトライアル期間が設けられているものがあります。ツールによっては機能が制限される場合もありますが、稟議申請前に無料で試してみることをおすすめします。
トライアルを実施し、現場の使いやすさや効果を検証したデータを添えることで、稟議の説得力を高めます。稟議書には、口頭の感想だけでなく、対応時間の変化など具体的な記録を残すことが有効です。
トライアル期間中に得たデータは、ROIの試算や、前章で紹介した比較表の裏付けとしても活用できます。
稟議が通らない準備不足のパターン
稟議が否決される稟議書には、共通する準備不足のパターンがあります。
ここでは、提出前に確認したい3つのチェックポイントを解説します。
経営層視点の準備が足りているか?
経営層視点が足りているかは、稟議書が現場の困りごとの説明だけで終わっていないかで判断できます。現場の課題を数値化し、経営指標に紐づけて説明できているか、提出前に見直しましょう。
:現場のオペレーターの負担が大きく、対応が追いつかない状況です。
⭕️:対応漏れにより月間◯◯件のクレームが発生し、CSAT(顧客満足度)が前年比5pt低下しています。
投資しないリスクを説明できているか?
投資しないリスクを説明できているかは、導入しない場合に何を失うかを明記しているかで判断できます。クレームの増加や顧客離れなど、放置した場合の影響を具体的に書けているか確認しましょう。
:効率化のため、ツールを導入したいです。
⭕️:導入を見送った場合、対応遅延による顧客離れで年間◯◯万円相当の売上機会損失が続く見込みです。
セキュリティ・撤退条件の準備不足はないか?
セキュリティ・撤退条件の準備が足りているかは、比較表にこれらの項目を含めているかで判断できます。費用や機能だけでなく、セキュリティ認証や解約条件も確認済みだと示すと懸念を払拭しやすくなります。
:機能と料金を比較した結果、A社のツールが良いと判断しました。
⭕️:A社はISO/IEC 27001取得済みで、解約時のデータ移行手順も確認済みのため、セキュリティ・撤退条件の懸念はありません。
まとめ
稟議を通すには、現状の課題を数値で示し、ROIを具体的に算出することが欠かせません。加えて、経営層視点でリスク回避や利益貢献を伝え、セキュリティや撤退条件まで準備できれば、承認の可能性は高まります。
比較表やトライアルの結果を添えることも、説得力を高める有効な手段です。これらの準備を一つずつ積み重ねることで、稟議書の説得力は着実に高まっていきます。
チャネルトークは、カスタマーサポートツールとして多くの企業に導入されています。またチャネルトークに蓄積されたデータは、AIビジネスOS「チャネルワークス」の分析機能で分析・ダッシュボード化することができます。現状把握やROI算出に必要なデータを、可視化して確認することができるため上層部への成果報告に役立てられます。
稟議書の作成に取り組む際は、まず現状の数値化から始めてみましょう。