放棄呼率とは?コールセンターにおける計算式・原因・改善策を解説
放棄呼率とは、オペレーターが応答する前に顧客が電話を切った呼の割合です。コールセンターでの計算式や5〜10%とされる目安、応答率・稼働率との関係、高くなる原因と改善策を実務目線で解説します。
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コールセンターの放棄呼率が高止まりし、応答率との関係をうまく説明できず悩んでいませんか。特に、KPIを経営層へ報告する立場の方は、数値の根拠を的確に説明する力も求められます。
放棄呼率とは、着信に対してオペレーターが応答する前に顧客が電話を切った呼の割合を示す指標です。応答率と表裏一体の関係にあり、機会損失や顧客満足度の低下に直結します。
稼働率や人員配置が適正に見えても、放棄呼率だけが改善しないケースは少なくありません。その背景には、IVR設定や業務フローなど複数の要因が絡んでいます。
本記事では、放棄呼率の計算式や目安を整理します。そのうえで、原因の切り分け方や、具体的な改善策までを実務目線で解説します。
コールセンターの放棄呼率改善に取り組む方は、ぜひ本記事の内容をお役立てください。
放棄呼率とは?意味をわかりやすく解説
放棄呼率とは、コールセンターへの着信のうち、オペレーターが応答する前に顧客が電話を切ってしまった呼(放棄呼)の割合を示す指標です。放棄呼は英語で「Abandoned Call(アバンダンドコール)」と呼ばれます。ここでは、放棄呼が発生しやすい場面と、応答率との関係を整理します。
放棄呼が発生しやすい場面
放棄呼は、待ち時間が長い場合や、IVR(自動音声ガイダンス)の操作が複雑な場合に発生しやすくなります。
この放棄呼が積み重なることで、放棄呼率は上昇します。放棄呼率が高い状態が続くと、問い合わせできなかった顧客が増え、機会損失や顧客満足度の低下につながります。
応答率との関係とは?
放棄呼率と応答率は、足し合わせるとおおむね100%になる「表裏一体」の関係にあります(営業時間外の着信などを除き、同じ着信件数を分母にした場合)。
応答率とは、着信件数のうちオペレーターが実際に応答できた割合を指す指標です。
放棄呼率が上がれば応答率は下がり、応答率が上がれば放棄呼率は下がります。
そのため、放棄呼率だけを単独で見るのではなく、応答率とあわせて確認することが重要です。両者を組み合わせて確認することで、受電体制の課題をより正確に把握できます。
放棄呼率の計算式と目標値
放棄呼率は、放棄呼数を着信件数で割ることで算出できる指標です。あわせて、応答率・SL・ASA・稼働率といった関連指標も押さえておく必要があります。ここでは、計算式と目標値の考え方、関連指標について整理します。
放棄呼率の計算式
放棄呼率は「放棄呼数 ÷ 着信件数 × 100」という計算式で求められます。たとえば着信件数が1,000件、放棄呼数が50件であれば、放棄呼率は5%です。この式はシンプルですが、コールセンター全体で着信件数と放棄呼数の定義を統一しておくことが欠かせません。
放棄呼率の目標値はどう決めるべきか?
一般的には、放棄呼率は5〜10%程度が目安とされ、5%以下を適正値とする例もあります。ただし、業種や問い合わせ内容によって許容水準は異なります。
自社の目標値を決めるときは、理論値である0%を起点に考えることが基本です。とはいえ、実務上は完全にゼロへ近づけることは容易ではありません。そのため、稼働率やASAなど他の指標とあわせて、自社に合った許容水準を定めることが求められます。
応答率・SL・ASAなど関連指標
放棄呼率は単独で見るのではなく、応答率・SL・ASA・稼働率といった関連指標と組み合わせて確認することが重要です。
応答率:着信件数のうち、オペレーターが実際に応答できた割合を示す指標
SL(サービスレベル):あらかじめ設定した目標時間内に応答できた件数の割合
ASA(平均応答時間):着信からオペレーターが応答するまでの平均待ち時間
稼働率:オペレーターの勤務時間のうち、通話・保留・後処理などの対応業務にあてた時間の割合
これらの指標を組み合わせて確認することで、放棄呼率が高い原因をより正確に切り分けられます。
コールセンターの放棄呼率が高くなる主な原因
放棄呼率の上昇は、一つの原因ではなく、複数の要因が重なって起こります。
主な原因には、人手不足や対応効率の悪さ、一時的な着信増加、IVR設定の不備などが挙げられます。ここでは、代表的な原因と、稼働率が適正でも見落としやすい注意点を解説します。
なぜ放棄呼率は高くなるのか?
放棄呼率が高くなる主な原因は、人手不足・対応効率の悪さ・一時的な着信増加・IVR設定の不備の4つです。
人手不足:着信件数に対してオペレーターの人数が不足している状態
対応効率の悪さ:オペレーターのスキルのばらつきや非効率な業務フローが、対応時間を長引かせている状態
一時的な着信増加:キャンペーンや障害発生時など、想定を超えて着信が集中する状態
IVR設定の不備:メニュー階層が複雑で、顧客が操作に迷い離脱してしまう状態
これらの要因は独立して発生するのではなく、複合的に絡み合って放棄呼率を押し上げるケースが多く見られます。
稼働率が適正でも注意が必要な理由
稼働率が適正な水準にあっても、業務フロー自体に非効率があれば放棄呼率は改善しません。稼働率の目安は、80〜85%程度が一つの基準とされています。
この水準でも放棄呼率が高止まりする場合は、業務フローの見直しが必要です。
一方で、稼働率が70%を下回っているのに放棄呼率が高い場合は、人員の総数ではなく配置に問題がある可能性があります。
着信が集中する時間帯に人が足りず、閑散時間帯に人が余っている状態です。
この場合は、増員よりも先にシフトやルーティングの見直しを優先すると効果的です。
放棄呼率を改善する具体的な方法
放棄呼率を改善するには、複数の対策を組み合わせることが効果的です。代表的な方法を、以下にまとめました。ここでは、それぞれの具体的な進め方を解説します。
増員:受電体制そのものを強化する
WFM(ワークフォースマネジメント):入電予測に基づいた人員配置の最適化
IVR最適化:メニュー階層の簡素化
FAQの充実:顧客の自己解決を促進
コールバック機能:待ち時間中の離脱防止
増員とWFMで受電体制を整える
受電体制を整える基本的な方法は、オペレーターの増員と、WFMによる人員配置の最適化です。WFMとは、入電予測に応じて人員配置を最適化する管理手法です。
増員のみでは人件費が増加するため、WFMを活用して着信の多い時間帯に人員を集中させることが効果的です。
IVRを最適化するには?
IVRを最適化するには、メニュー階層をできるだけ簡素化することが基本です。選択肢が多すぎるIVRは、操作に時間がかかり離脱の原因になります。
よく使われる問い合わせ内容を上位階層に配置するなど、利用実態にあわせた設計が求められます。
FAQページの充実
FAQページを充実させることで、顧客が電話をかける前に自己解決できるケースが増えます。その結果、着信件数そのものを減らせます。
頻出の問い合わせ内容を分析し、検索性の高いページを整備することが、放棄呼率の改善にも効果的です。
コールバックで離脱を防ぐには?
待ち時間が長い場合に、電話番号を預かり、後で折り返す「コールバック機能」も有効です。顧客は電話を切らずに待ち続ける必要がなくなり、心理的な負担が軽減されます。
結果として、待機中の離脱が減り、放棄呼率の低下にもつながります。
チャット・電話両輪の改善アプローチ
放棄呼率の改善には、電話の受電体制を強化するだけでなく、電話に頼らない問い合わせ導線を用意する視点も欠かせません。
電話だけで対策する場合と、チャットも組み合わせる場合の違いは、次のとおりです。
手法 | 対応チャネル | コスト傾向 | 即効性 | 運用負荷 |
|---|---|---|---|---|
増員 | 電話 | 高い(人件費) | 高い | 中程度(採用・教育が必要) |
IVR最適化 | 電話 | 低〜中 | 中程度 | 低い(設定変更が中心) |
チャット・電話両輪(AI活用) | チャット+電話 | 中程度(利用量に応じて変動) | 中〜高 | 低〜中(初期設定が必要) |
電話だけの対策は、着信を受けきる力を高める方法です。一方でチャットを組み合わせると、着信件数そのものを減らせます。
ここでは、チャット・電話の両方からアプローチする方法を紹介します。
チャットで着信件数を減らすには?
チャットで着信件数を減らすには、電話に頼らない問い合わせ窓口を用意し、そこでの一次対応を自動化することが有効です。
これを実現するのが、顧客理解のためのAIエージェント「チャネルトーク」です。チャネルトークでは、チャットでの問い合わせを、顧客情報や過去の対応履歴とあわせて一元管理できます。
その一次対応を担うのが、チャネルトークに搭載されたAIエージェント「ALF」です。
ALFは、事前に登録したFAQやマニュアルなどのナレッジをもとに、チャット上の問い合わせに24時間自動で回答します。
顧客が希望した場合はオペレーターに接続するため、自己解決できない問い合わせも取りこぼしません。
これにより、着信件数そのものを減らすノンボイス対応(電話以外で問い合わせに対応すること)が可能になります。
導入事例:伊藤久右衛門(京都・老舗茶舗)
コロナ禍で電話対応を短縮するにあたり、チャットで問い合わせを受けられる体制を整えました。よくある悩みにはあらかじめ用意した回答を自動で返し、多く寄せられる質問はサイト内のQ&Aにも追加し続けています。
活用機能:接客チャット
電話の問い合わせ:導入後、時期によっては約半分に
電話とメールの問い合わせ:従来から約30%削減
問い合わせの対応人数:4人 → 2人
電話対応をAIで補完する方法
電話対応をAIで補完する方法として、チャネルトークのボイスALFによる一次対応の自動化があります。
ボイスALFは、着信時にAIが一次対応を行い、必要に応じてオペレーターへ引き継ぐ機能です。すべての通話を代替するものではありませんが、受電体制を補完する選択肢の一つとして活用できます。
導入事例:TUVA(韓国・B2Bサービス)
全国40か所以上の店舗とアフターサービスセンターへの電話が、5名のオペレーターに集中していました。
💻活用機能:ボイスALF、ALF(チャット)
オペレーター1人あたりの処理コール数:1日120〜130コール → 70〜80コール(約42%減少)
オペレーター約3名を追加採用したのと同じ効果
コールセンターの顧客満足度は99%以上を維持
🔗 事例を詳しく読む
電話別統計・電話モニタリングで放棄呼を把握する
チャネルトークで電話対応を行っている場合は、電話別統計と電話モニタリングで放棄呼の状況を確認できます。どちらも、チャネルトークの電話機能に蓄積された着信・発信のデータを集計して表示する機能です。「放棄呼率」という名前の指標はありませんが、次の数値を組み合わせて見ることで代わりになります。
着信応答率:総着信電話のうち、オペレーターと接続した電話の割合
不在着信数:着信電話のうち、接続されずに終了した電話の数
不在理由別の件数・比率:キューで待機中や着信(Ring)中に顧客が切電した電話など、不在の理由ごとの件数
指標設定では、不在着信として数える理由を選べます。営業時間外などを除き、顧客が切電した理由だけを含めれば、「100 − 着信応答率」が放棄呼率に近い数値になります。
電話別統計では、期間ごとの推移を確認できます。
電話モニタリングでは、当日の応答と不在を時間帯別に確認できるため、不在着信が集中する時間帯を見つけて、オペレーターの配置を調整するのに役立ちます。
また、IVRのボタンごとに離脱の状況も確認できるため、どの選択肢で顧客が離れているかも分かります。
チャットやALFを導入する前後でこれらの数値を比べれば、改善策の効果を確かめられます。
放棄呼率管理で注意すべきポイント
放棄呼率は単独の数値だけで判断せず、応答率や稼働率とあわせて総合的に確認することが重要です。
ここでは、管理する際に注意すべきポイントを整理します。
応答率だけで判断してよいのか?
応答率だけで判断するのは適切ではありません。
期間全体の応答率が高くても、特定の時間帯に放棄呼が集中しているケースがあるためです。時間帯別に放棄呼率を確認して、初めて実態を正しく評価できます。
放棄呼率の推移を追う方法
放棄呼率は、ある時点の数値だけでなく、推移を追うことで改善の効果や悪化の兆しをつかめます。多くの電話システムには、着信件数や応答率を期間別に確認できる統計機能があります。応答率が分かれば、「100 − 応答率」で放棄呼率に近い数値を把握できます。
ただし、「応答できなかった電話」には、営業時間外の着信や、受けられるオペレーターがいなかった着信も含まれる場合があります。顧客が自分から電話を切った件数だけを見たい場合は、不在や切電の理由別に件数を確認しましょう。
稼働率と放棄呼率の組み合わせで状態を見分ける
放棄呼率を稼働率と組み合わせて見ると、今の状態と打つべき対策を絞り込めます。
稼働率 | 放棄呼率 | 考えられる状態 | 優先する対策 |
|---|---|---|---|
高い(85%超) | 高い | オペレーターの人数が着信件数に追いついていない | 増員、WFMによる人員配置の最適化 |
適正(80〜85%程度) | 高い | 人数は足りているが、対応に時間がかかっている | 業務フローやIVRの見直し |
低い(70%未満) | 高い | 人数は足りているが、時間帯ごとの配置がずれている | シフトやルーティングの見直し |
高い(85%超) | 低い | 今は受けきれているが、オペレーターに余裕がない | 繁忙期の前に、FAQやチャットで着信件数を減らす |
なお、1日の平均だけを見ると、時間帯ごとの偏りが見えなくなります。
稼働率と放棄呼率は、時間帯別に並べて確認しましょう。
電話システムの統計機能で、時間帯別の着信件数を確認しておくと便利です。
まとめ
放棄呼率は、応答率と表裏一体の関係にある重要なKPIです。
放棄呼数を着信件数で割ることで算出でき、一般的には5〜10%程度が目安とされています。ただし実務では、理論値の0%を起点に、稼働率など他指標とあわせて自社に合った許容水準を定めることが大切です。
高くなる主な原因は、人手不足・対応効率の悪さ・一時的な着信増加・IVR設定の不備の4つでした。改善には、増員やWFMによる人員配置の最適化、IVRの見直し、FAQの整備、コールバック機能の活用が基本となります。加えて、チャネルトークのチャット機能やALF、ボイスALFも有効な選択肢です。
放棄呼率は単独で見るのではなく、電話別統計などを活用して、応答率・稼働率とあわせて継続的にモニタリングすることが欠かせません。
自社の受電体制を見直すきっかけとして、本記事の内容をぜひお役立てください。