Channel Talk
12月 19日
日本国内のコスメ業界のEC化率は、僅か6%。コスメは店頭ならではの接客体験が充実していることから、実店舗で購入するユーザーが圧倒的に多くEC展開に苦戦している企業が多いのが現状です。「本当はECも成長させていきたい」「オンラインでファンを増やしながら売上を伸ばしたい」と思いながらも「本当にコスメをオンラインで販売することができるのか?」という不安の声も聞かれます。 そこで今回は、化粧品メーカーとして、PAUL & JOE 公式オンラインストア、ANNA SUI JAPAN公式ウェブストアという2つのブランドサイトを運営する株式会社アルビオン販売推進部の榊原さんに、アルビオンの強みである1to1接客をECでも実現した方法について教えていただきました。
ーー実店舗でお客様を大事にしてきたアルビオンについて教えてください。
私たちアルビオンは、創業から66年を迎える高級化粧品メーカーです。私たちはものづくりのメーカーとしてブランドを展開しながら、その商品を全国の化粧品専門店様や百貨店様のお力をお借りして販売してきました。お客様には実店舗での実感体験を通して、商品の良さをしっかりとお伝えすることを大切にしてきました。
ーー私もアルビオンのファンなのですが、実店舗での体験はとても良かったです!そんなアルビオンでも、EC立ち上げの際に戸惑いがあったとか?
EC事業を立ち上げた当初は、メイク用品やスキンケア、香水などは実店舗で試して買うものだと私自身も思い込んでいましたが、思いのほか多くの方が購入されたんです。なので、まずはその思い込みを外して、「ECサイトだから」「実店舗だから」という概念にとらわれることなく、お客様の購入スタイルに合わせて、お客様が満足できることを極めていきたいと考えるようになりました。
ーーECでの1to1接客をCSチームが行っているそうですね。どのようなチーム構成になっていますか?
いわゆるお客様相談室を設けているのとは別にECサイトのCS担当を設けて、2つのチームで対応しています。電話対応をお客様相談室で受けて、メールとチャットでのお問い合わせはECサイトのCSチームが対応しています。2つのECサイトでそれぞれ電話が1日5〜10件、メールが10件、チャットで20件程度のお問い合わせがあります。
ーーどのようなバックグラウンドをお持ちの方がCS対応をされていますか?
CSチームには実店舗で美容部員をしていたスタッフと、社内の別ブランドでマーケティングを担当していたスタッフが所属しています。ブランドとしてECサイトを運営するうえで一番大事にしなければいけないことは何かと考えた結果、実店舗でも大切にしてきたお客様対応だと感じました。ECサイトの運営ということであれば、コーディングができる方やデザインスキルが高い方を採用するのがいいかもしれないと思い、最初はそのような人材を採用するつもりでした。しかし、どうもしっくりこなくて……やはり“お客様目線で販売ができる人”が最適だと思い、今のチームを作りました。
ーーコアファンの多い、「PAUL & JOE」「ANNA SUI」ですが、ファンやVIPをどのように定義し、増やしていますか?
「PAUL & JOE」や「ANNA SUI」は、一つの商品を大切に使い続けるお客様が多いブランドです。数年前に購入いただいた商品が故障したので修理したいといった問い合わせも寄せられます。VIPの定義が購入回数や金額だとしたら、そういったお客様は対象にならなくなってしまいます。しかし、私たちの商品を楽しんで使っていただいている方は、みなさんファンでVIPだと考えています。 商品を一度しか購入したことがなくても、ブランドに好印象をもち続けていただけるのは、商品の良さだけでなく、ステキな美容部員に紹介してもらったとか、そういう思い出があったりします。良い商品に出会ったり、心地よい接客を経験することで、お客様の口コミは自然と広がっていきます。だからこそ、ECサイトでも一回一回のやり取りを大切にしようと考えています。
ーーEC立ち上げ当初、ファンを増やしていく中で肝となる顧客体験の部分で課題があったとか?
そうなんです。メールだけでお問い合わせ対応をしていた時は、メールが届かない、あるいは、買い物を間違えたといった、相談というよりもお買い物上のトラブルに関連する内容が多く、1日30〜40件くらいは来ていました。ECサイトでのお買い物は一般的に夜中に多くなるので、夜中でもメールに返信していた時期もあったのですが、そもそもメールを送る時点でお客様は欲しい答えにたどり着けていないという不便さを抱えているため、それはストレスだと考えました。 対策としてFAQも強化しましたが、なかなかすみずみまでは見て頂けませんでした。そのため、何らかのかたちで解消したいと思っていました。
ーーメールでお問い合わせされるお客様は本当に困っている状態ですよね。
そうです。そこで別のチャットツールを導入しましたが、お客様側からすればすぐに返信が来なかったらどうなるのかとか、私たちは私たちでとにかく早く返信しなければとか、チャットに対するマイナスなイメージが双方にあったせいか使わなくなりました。
ーーそんな中でなぜまたチャット接客に取り組むことになったのでしょうか?
それで色々とツールを探していくうちに、「答えは顧客にある」という哲学を掲げる顧客コミュニケーションツールのチャネルトークに出会ったんです。普通のツールはKPIを改善するのにフォーカスされていますが、チャネルトークでは、アルビオンの理念でもある「美しい感動と信頼の輪を世界に広げる」に通ずるものを感じました。さらに機能面でも顧客中心のCS対応ができる仕組みがあり、チャネルトークを通して実店舗のような顧客対応ができると確信しました。
ーー実店舗のような顧客対応はいいですね!実際にはどのように実現しているのでしょうか?
例えば「PAUL & JOE」のプライマーの色を選ぶ時、お客様はご自身の肌色に合うのはどれかと悩まれます。一般的にはご自身の肌色にはこれが合うという回答をするのですが、「PAUL & JOE」ではお客様がどんな肌色になりたいのかに合わせておすすめしています。どんな対応をどんな言葉で行っているのかを美容部員出身のCS担当者がチームに共有して、実店舗同様のアドバイスをCS担当全員ができるように心がけています。
過度にカジュアルさを追求するのではなく、画像や動画も用意して、より丁寧に詳しく返信するようにしています。
ーー他に、特に力を入れて顧客体験を改善させたポイントはありますか?
お買い物に困っている方が自己解決できるようにチャットbotを細かく設定しました。botを通してスピーディーかつ簡単に困っていることが解決すると、続けてテンポ良く商品に関する質問がしやすくなったため、1to1接客に繋がる問い合わせがむしろ増えたんです。そのため、「口紅を選びたい方へ向けたbot」や「新製品専用やシーンを想定したチャットbot」をつくって、お客様が具体的に相談しやすくなるようにしています。数値的には、「PAUL & JOE」でいうとチャットbotが月に2万回くらい利用されています。チャットbotの活用でお客様が自己解決しやすくなった結果の表れです。
ーーたしかに、以前よりアルビオンらしさを感じるECサイトになったと感じてました!
ーー今後どのようなことに取り組みたいと考えていますか。
ECサイトと実店舗を分けて考えるのではなく、ECサイトが実店舗にも寄与していくような仕組みをつくりたいですね。ECサイトはブランドのことを好きな方が集まる場所だから、この顧客体験をより良くすることによって、実店舗にも行きたいと思ってもらえるきっかけ作りにもなるはずです。このようにVIPやファンを増やす好循環をチャネルトークで作っていきたいです。
ーー最後にチャネルトークをひと言で表すとしたらどう表現しますか。
ひと言では語れないので長くなります(笑)。例えばLINEが世の中に出はじめた頃、特に年配の方からは仕事にLINEを使うなんてという声も聞かれました。でも今は抵抗なく使われている。これってすごいことですよね。チャネルトークの利用者が増えたらチャットへのハードルが下がるし、チャネルトークが先陣を切ってくれたらチャットが文化として根付くと思っています。チャットが世の中にもっと広がったら、いろいろなことができるはずだから、私もそのつもりでチャネルトークを使っていきたいし、他社にも紹介したいです。 チャネルトークは、カジュアルさや絵文字というところにフォーカスが当てられがちですが、本当に素晴らしいのは「答えは顧客にある」という理念がプロダクトになっていることだと思います。お客様からの疑問に必ず回答を届ける安心感、お客様の声をプロダクトに反映させることが得意だということが一番の強み。この強みを前面に打ち出して、チャットを文化にしてほしいです。