Marry • CX Team Leader / Biz-dev
10月 25日
サマリー
アパレルの小売チェーンとして、ショッピングセンターを中心に展開しているファッションカジュアル専門チェーン『アダストリア』は、働き方改革を要因に業務改善を見据えてチャネルトークを導入。最大で約50%有人チャットの問い合わせ件数削減に成功し、チャットボットの自己解決率は88%を記録。
「GLOBAL WORK(グローバルワーク)」や「LOWRYS FARM(ローリーズファーム)」をはじめとする30以上のブランドを抱え、国内外約1,400の店舗を運営するファッションカジュアル専門チェーン『アダストリア』。自社EC「and ST(アンドエスティ)」では、会員数が約1,600万人に昇り、すべての業態において昨対比を上回り、オンライン・オフラインともに好調です。この成長の背景には、アダストリアの推進するDX戦略が存在し、その中核には、顧客体験改革と働き方改革がありました。
今回はCSのDX戦略を推進する、宇都宮さん、内藤さん、北山さんに、アダストリアにおけるDX戦略や改革に欠かせなかったチャネルトークの活用について伺いました。
ーー『アダストリア』では現在転換期を迎えているとのことで、どのような取り組みをされていますか?
宇都宮さん:弊社では、70周年を迎えるにあたって『アパレルカンパニーからグッドコミュニティカンパニーへと昇華する』ことをスローガンにし、『Play fashion!(その人だけのファッションスタイルを通じて、自分らしさを表現したり、新しい何かを生み出したり、創り出すこと)』というミッションを掲げていました。しかしコロナ禍でアパレル業界全体が大打撃を受けて厳しい時期を経験したことから、より『Play fashion!』を意識し、人々が集い、豊かな時間を共有することのできる『グッドコミュニティ』を創出する会社になりたいと考えはじめました。
現在、国内外に1,400店舗ほど出店しており、ECの売り上げが国内でも大きく、EC化率も約28%という数字を出しています。その中で、『and ST(アンドエスティ)』という自社サイトからさまざまな企業さまに出店していただくことで、『Play fashion!』という軸を中心に据えてサービスを打ち出していき、グッドコミュニティカンパニーの共創を進めています。
さらには、『バリューチェーン』という、自社の生産から技術販売、マーケティングまでを自社で内製化していることに加え、30を超えるマルチブランドを展開しており、服だけではなく、家具やカフェ、飲食住に寄り添ったライフスタイルなどのマーチャンダイジング(商品をお客さまへ適切に届けるための戦略)を所有しています。『and ST(アンドエスティ)』ではデジタルサイネージを活用した新しい接客体験の提供や、会員データを分析して商品開発や生産計画、在庫管理などへの活用をおこなった結果、2021年に経済産業省にDX認定をいただくなど、企業としてDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進している点も弊社の強みのひとつとして挙げられます。 ーー多くの企業がCSのDX化に取り組んでいますが、その中でもアダストリアでCSのDX化が必要となった背景はどういったものがありましたか?
宇都宮さん:第一に、雇用問題が挙げられます。正社員が多い中で、ママさん社員をはじめとした時短社員もたくさん働いているのですが、産休で働きたくても働けない方や、現場で長く活躍したゆえにセカンドキャリアを形成しにくいと考えている方がおり、CS起点での営業支援(売上貢献)や働き方改革をおこなわなければいけない課題に直面していました。また、コロナ禍になってリモートワークが増え、メンタル不調をきたしてしまう方がいたこともあり、そのような方たちを会社としてケアしていきたいと考えはじめたことも理由のひとつです。話し合いを行う中で、「CS部でサポートできないか」という話が出てきました。
さらに私たちCS部のDXを推進するチームでは、弊社が抱えるさまざまな問題に対してDXと絡めながら仕事を進めています。今まで、CS部というとどうしてもクレーム処理的なイメージが強かったと思いますが、CS部では『お客さまの声が一番集まる場所』と捉えています。その特徴を生かしながら、お客さまの声をどれだけDXと掛け算しながら成長させていくかが、ミッションです。これまで弊社では、オフラインで顧客の声をダイレクトに事業やサービスに反映してきましたが、これからはEC上でも顧客の声を収集していくことが必要でした。顧客の声を生かしながら体験を改善し続け、事業を伸ばすための次世代CSを実現していくことが求められていました。そんな中で、これらの課題を解決できるツールとしてチャネルトークに出会いました。 ーー具体的にチャネルトークのどのような部分でこれらの課題を実現できると思いましたか?
宇都宮さん:チャネルトークは単なるチャットだけでなくCRMと連動しているため、顧客を認識・理解しながらお客さまとの会話を行うことができます。さらにチャットbot機能を活用することでよくある質問といった有人で対応する必要のない問い合わせを自動で解決することが可能です。そのため、顧客体験を損なわずに業務の効率化も図れますし、結果的に削減できたリソースで、ブランド営業部と連携しながらWEB接客プロジェクトを推進したり、CSとしての接客の質を高めることができます。またオンラインで実店舗のような接客を実現できることから、実店舗で働くことが難しいママさん社員への雇用の場を創出することができると思いました。 ーーオンラインコミュニケーションツールを選定するうえで他社のツールと比較されたと思いますが、その際に比較要素として優先的に据えていたものはなんでしょうか?
宇都宮さん:お客さま目線では『UX』、従業員目線では『使いやすさ』を重視していました。大手を含めいくつものツールを試したのですが、画像が貼れなかったり、シナリオを分岐させるたびにコストが発生するなど、使い勝手の悪さが目立ちました。またチャネルトーク導入前に他社のツールを利用していましたが、高頻度でセッション切れが発生することから離脱が多くお客さまと繋がり続けられない課題がありました。しかしチャネルトークではそういったこともなく、画面に触れてみてそのスムーズさに驚きました。これならお客さまにも快適なコミュニケーション体験を提供できると思いましたし、実際に従業員が使ったときにも「一番使いやすい!」という声が多かったことから、導入に至りました。
ーー有人チャットの問い合わせ件数やチャットbotの自己解決率など、チャネルトークを導入してからどのように変わりましたか?
宇都宮さん:以前と比較して、有人チャットの問い合わせ件数が最大で50%減りました。チャットbotの自己解決率は88%を記録しており、よくある問い合わせなどを有人で返信せずに自動で解決できる仕組みが整いました。お客さま自身で疑問を解決できるので、顧客体験が良くなったことに加え、リソースを削減できたことから、有人での売上につながるコアな問い合わせ対応により注力することができるようになりました。
また、以前のツールよりもチャットボタンがクリックされる割合が高まりました。年末年始の休み期間中、チャネルトークを導入する前はヘルプセンターへ訪れてチャットボタンを開くお客さまが8%ほどだったのですが、導入後には年末年始期間に28%の方がクリックされ、休みのお知らせやセール期間の告知などの情報収集をお客さま自ら行い、疑問を解決してくださったので、非常に助かりました。 ーーチャットbotでの自己解決率が高まったことで人的リソースが削減できた結果、どのようなメリットがありましたか?
宇都宮さん:チャネルトークを導入することで、人的リソースの削減と共にCSの成長戦略が具体性と実現可能性を帯び、DXの可能性を最大限に引き出したCS部のDXチームへ成長いたしました。現在では、チャットの有人問い合わせ件数の削減により、AIレポートの設計やお客さまのVOC(Voice Of Customer:顧客の声)を生かして、どのようにCS部からほかの部署へ価値を提供するかに時間を当てられています。これからは、オンライン接客とあわせてお客さまの声を集約しデータとして可視化したり、サービス改善に向けての提言などを行えればと思っています。また、現在は約6,000人いるリアル店舗の従業員が集めたお客さまのアンケートを分析し他部署の垣根を越え、連携して改善提案もおこなっています。 また、チャネルトークを活用し、オンライン接客とあわせてお客さまへのアンケートもチャット内で実施しています。
接客やツール、さまざまな側面でのお客さまのリアルな声を収集することができ、施策の改善にも役立っています。チャット画面からそのまま入力できるシームレスさに要因し、回答率は約30%を記録しました。 ーーチャネルトークを導入してから、定量・定量の両面で効果が出ていますが、社内からはどのような印象を持たれていますか?
宇都宮さん:今まで、CS部はコストセンターと認識され、クレーム処理がメインの部署でした。しかし、DXを推進をすることで社内での重要度が高まっていると感じており、今後は次世代CSとして全社に顧客の声を届ける役割を担い、企業の成長を支えていける存在になりたいと考えています。
ーー実際にチャネルトークを導入されてから、オンライン接客をしている中で、チャネルトークでよかったと感じるシーンはありましたか?
北山さん:チャネルトーク導入前に使っていたチャットサービスでは、仕様上、途中離脱が目立ちました。肌感ではありますが、以前は10人に2人ほどは離脱していました。なかには、一回のお問い合わせでセッションが5,6回切れてしまう方もいたりと、「使いづらい」とご不満のお声をいただくことが多かったです。チャネルトークに移行すると途中離脱がなくなり、お客さま側でもカスタマー側でも、ストレスなくスムーズにトークなどを進められるため、お客さまの満足度向上につながっていると同時に、私たちも仕事を進めやすくなったと感じています。 またセッション切れを心配する必要なくなったことから、自由に商品をご紹介した結果、購入にもつながるようになりました。
内藤さん:私が魅力的に感じているのは、タグ運用です。一日にどのようなお客さまがどのような内容でお問い合わせいただいたかがパッと一目でわかることで、忙しい中でもお問い合わせの内容をすぐに把握できる点が、今までにない部分だと思っています。さらに、統計画面からタグごとの推移やデータが見れることから、問い合わせ全体の分析にも活かすことができています。
宇都宮さん:チャットのみならずCRM機能と連動しているところも魅力的です。購買データや閲覧ページなどを含めた顧客情報を、チャットしながら一つの画面で確認しながらできることも強みですし、セグメントを分けて配信もできることから、それぞれのお客さまに合ったコミュニケーションがしやすくなりました。今後は社内に分散したデータをチャネルトークに紐付けたり、一元化していくことで全社としてより強力なCRMを構築していけると期待しています。
ーーアダストリアでは『こころとからだの保険室』という、従業員の健康相談窓口を設けていると聞いたのですが、チャネルトークをどのように活用しているのでしょうか?
宇都宮さん:弊社では、『Play fashion! Play wellness! ~ファッションと人生を楽しんで、もっと健康に、もっと自分らしく~』をスローガンに、2022年度より健康経営を推進しており、その一環として『こころとからだの保険室』を2023年11月にスタートさせました。現在では、お問い合わせをする方と受ける方との間をつなぐツールとして、チャネルトークを活用しています。
健康問題は相談が難しいですが、チャットツールを使用して相談することのハードルを下げることに加え、健康経営推進室主催のセミナーを開くなど、会社全体で心と体のケアに取り組むことで、開設月の11月はまったくなかった相談が翌12月には10件ほどまで増えました。相談しにくい内容を気軽にチャットで相談する入口(窓口)を作れたのは、チャネルトークを導入したメリットのひとつです。
今後は、社内含めさまざまな面でチャネルトークを活用していきたいと思います。