創業2年で年商14億円の“SATUR”が語る、広告なしで自社ECを成長させる5ステップ

Marry • CX Team Leader / Biz-dev

10月 17日

  • 活用事例

創業2年で売上14億円を創出し、海外進出も期待されているアパレルブランドとして、今韓国国内で注目されているブランド「SATUR

SATURの代表であるソン・ホチョルさんはブランド成長には5つのステップがあると語ります。そこで今回は、立ち上げ期から拡大期へのブランド成長のステップや、実際に行ってきたファンづくりの施策を伺いました。

SATUR代表 ソン・ホチョルさん

自社製品に想いを込めて2年で年商14億円!SATURの商売に徹するスタイルとは

ーー良いブランド・勢いのあるブランドを作りたいと思うEC事業者の方は多く存在しますが、どのようなマインドで初期は取り組むことが良いのでしょうか?

初期に確実にブランドを成長させていくコツとして、「自分がブランドをやっているんだ!」、あるいは「ブランディングが全てだ」とは思わずに、“商売に徹する”ことが重要です。 ーー“商売”という単語は、EC運営においては新鮮な感じがしますが、なぜ商売にフォーカスする必要があるのでしょうか?

それは、売上フェーズごとに、「商売」「事業」「企業」で分けられるからです。

  1. 商売(年商5億円未満):消費者が必要なモノ(need)を論理的に説明して販売

  2. 事業(年商5億円〜):消費者が欲しがっているモノ(want)を感性に触れて販売

  3. 企業(年商50億円〜):イデオロギーの浸透や口コミによる認知を広げての販売

ブランディングで売上を作ることができるのは規模の大きい会社がそれまで商売や事業を通して、顧客を獲得してきたからこそできるのです。

だからこそ、ブランド立ち上げ期商売を通して自社の顧客が友人・知人に伝えてくれたり、口コミを通して広めてくれたりすることを意識して、とにかく泥臭く顧客を増やしていかなければなりません。

こうして人を起点に商売を始め、自身のブランドが安定してきた頃に、自分の好みを加えていきました。ブランドをスタートされるほとんどの方が、顧客や市場の反応よりもブランディングに注力してしまうことから、最初から自分の好みや主張ばかりを強調してしまいます。しかし、そこには顧客が存在せず、結果的に自分たちブランド側がいつまでも取り残されてしまいます。だからブランド立ち上げ期はブランディングにこだわりすぎることは良くないと思っています。 ーー顧客なくして事業成長はあり得ませんよね!

まさにそうです。韓国国内の話ではありますが、一般的なアパレルブランドより、モールECの方がビジネスに長けています。なぜなら、売上を創出するという商売の基本を徹底的に実現し、どのように顧客が購入するのかを多角的に分析するからです。

しかし多くのブランドでは、ECをスタートして商品を登録するだけで、その後は放置してしまいます。「これくらいイケてるデザインの商品なら、勝手に売れるだろう」と過信してしまうんですよね。そのままでは次のステップに成長することはできません。

だから私は、ブランディングではなく、一人の商売人として、一生懸命に売ることに集中しました。「とにかく一生懸命に売る」、これが立ち上げ期にやるべきことです。

そして、ブランドが徐々に安定してきた時に、自社としての好みやブランド要素を追加していくことで、自然に顧客が集まってきます。 ーー「一生懸命に売る」という言葉は心に突き刺さりますね……ちなみにSATURでは、「一生懸命に売る」以外にも大事にしている指針やマインドはありますか?

とにかく“直接自分たちでやる”というマインドセットも大事だと思います。例えば、広告は広く世間に知らせるという意味がありますよね。でもその知らせたい内容やコンテンツは自分たちで作り出さなければなりません。でも多くのブランドでは「代行会社がやってくれるだろう」と勘違いしていて、これは良いスタートではありません。

「こういうことをしたらお客さんが喜んだ」という経験から、確信を持ってユーザにとって魅力的なコンテンツを発信していく必要があります。「とりあえずこの商品を広告で回してください」と代理店に丸投げするのは間違っています。世界には無数のブランドが存在し、もしかしたら、1日に見るブランドの数は300以上あるかもしれません。そこからクリックを生み出すためには、0.1秒以内に「これはまさに自分に当てはまるものだ」と思ってもらえるメッセージを伝えられなければいけません。

でもこれはかなり難しいことです。しかし、お客さんと向き合いながらコンテンツを作っていくということにリソースをかけずに、広告にお金を使っても、ブランドにとってのファンがいつまでも生まれません。

広告に頼らないブランド成長の5ステップ

ーー初期には自分たちで泥臭くやることが重要だとわかりましたが、その後の拡大といった時に、どのように戦略で取り組んでいけば良いのでしょうか?

売上規模別にやるべきことは変わってきます。SATURでは、以下のように定義しています。

  • Step1: 月商1,000万円、広告費30万円/月

    自社ECを運営し、ファンダムを構築する時期です。この際にリピート率の向上と口コミを大事にする必要があります。商品は、顧客のニーズを満たせるものであり、商品訴求は論理的に行う必要があります。

  • Step2: 月商2,000万円〜3,000万円、広告費30万円/月

    継続的に新規顧客を獲得しながらモールECへの展開も始める段階です。

  • Step3: 月商5,000万円〜1億円、広告費50万円/月

    この段階から少しずつ安定して利益を上げる必要があります。また、この段階からオフライン展開もしながら顧客体験により深みを持たせる必要があります。実際、SATURではポップアップストアや百貨店入店を始めました。

  • Step4: 月商1~2億円 広告費200万円/月

    ブランドとして確立する時期であり、同時にグローバル展開も行います。

  • Step5 : 月商3億円~5億円 広告費500万円/月

    顧客管理がより重要になるフェーズです。メジャーな流通市場を掌握する時期でもあります。

ーー全体的にどのフェーズでも広告費が少ないと感じますが、どんな理由からでしょうか?

論語の孔子の言葉で“近きもの喜び遠き者来る”があるのですが、傍にいるひとが喜べば、自然と遠くからもひとが寄ってくるという意味です。ブランドから遠い存在の人に何度も発信しても、周りの人がブランドを好きになってくれなければ、意味がありません。外観の素敵なお店があっても、中に人がいなければ、他のお客さんは入ろうとは思わないですよね。特に初期のブランドは、まだ顧客自体も形成されていない段階なのに、そこで広告をするというのは単純にコストがかかるだけです。だからこそ、広告費は最小限に抑えるべきです。

実は、月商が約1億円のフェーズだった2022年の秋ごろに月の広告費を120万円まで上げてみようとしたのですが、失敗して中断しました。新規ではなく既存顧客に露出される割合が高くなったからです。

既存顧客に対しては、広告よりもコンテンツを届けることの方が有利ですコンテンツを作って既存顧客にデリバリーする方法には、低コストでできることばかりです。プッシュ通知やニュースレターを送ったり、新商品をInstagramにアップロードしたりすることができます。これらはすべて既存顧客にアピールするものです。 ーーだからこそ、新規顧客獲得には広告のコストをかけずに、製品にかけるべきということでしょうか?

その通りです。初期は、製品にほとんどのコストを投資することが正しいです。SATURでも、すべての顧客に「私たちのブランドを知ってください」とアピールするのは避けています。顧客はブランドのことは知らずに、商品だけを見て購入する場合もあるためです。「良い商品はマーケティングが必要ない」という言葉がありますよね?まず、商品自体だけでも購入が生まれるようにしなければなりません。 ーーでは、良い商品を作っていくには、何を意識すればよいのでしょうか?

まず最初にやらなければならないのは、既存顧客をきちんと掴み、彼らとコミュニケーションすることです。

多くの事業者さんが失敗する理由は、市場だけを見て判断しているからです。「今の市場にはこれがないから作ればうまくいくだろう」と思ってしまっています。本来お客さんから「これが欲しい」と言われたものを作るべきなのですが、「これが欲しいだろう、好きだろう」と推測するだけになってしまっています。憶測ではなく、本当にお客さんが望むものを作るために、ECではチャネルトークを利用してお客さんに逆に質問したり、たくさんコミュニケーションをとるようにしています。

実際にSATURでは単なる問い合わせにも返答するだけではないので、お客さんとの会話が弾み仲良くなった結果、次のお問合せの際にわざわざスタッフを指名してくださるお客さまもいますし、スタッフの誕生日にはギフトを送ってくださる方もいます。

さらには、インスタグラムでブランドを好きになってくれそうな方や、お客さんに直接連絡して、会って食事をしたりもしています。その際も「うちのブランドはここが良いんです」と必死にアピールするのではなく、相手が何を知りたいのか・どんな話をしたいのかに合わせて話します。そうすると相手が本当に求めるものが見えてきます。誠意を持って接するからこそ、一回会っただけでも仲良くなりますし、お客さんの声を商品作りに反映すると、さらに喜ばれる……このサイクルを作ることが欠かせません。

ーー日々のお客さんとのコミュニケーションが商品作りには欠かせないということですが、売上を伸ばす観点では、どのようなコミュニケーションやタッチポイントを意識されていますか?

多くのブランドでは、売り上げ拡大=新規顧客の獲得と思い込んでいます。売り上げを作るには、既存顧客にフォーカスし、さらにもう一回・もう一つの商品を買ってもらうことの方が簡単です。全く知らない新しい人に対し「これを買ってください」と説得することは遥かに難しく、リソースもたくさんかかります。

この新規獲得にかかるリソースは、会社に余力がある時にやるべき領域なのですが、初期のブランドにはそういった余力はないはずです。ブランドが成立する条件は、「顧客」×「リピート」だと思います。

リピート率を上げていく上で大事なのが、顧客に適切なメッセージを送ることです。SATURでは、潜在顧客やVIPにはそれぞれ異なるメッセージを送っています。特にチャネルトークの場合、細かくセグメントができることから、セッション数や最終アクセス日から、顧客を分類して、コミュニケーションを取るようにしています。

余談ですが、記憶に残っているデータで、サイトをオープンして1年経過した時点で、累計のアクセスが560回だったお客さんがいました。製品もさることながら、コンテンツを見にきてくれる本当のファンがいるんだと実感しました。そういうお客さんをさらに増やしていきたいです。

ファンは購入回数・有無に関係なく、作ることができる

ーーファンや既存顧客を大事にしているSATURですが、どのようにファンを作っているのでしょうか?

ブランド成長に欠かせない“ファン”。しかし多くの方が誤解していることがあります。それは長い期間・多くのタッチポイントを持つことによってしかファンは生まれないということです。

しかし、SATURでは違います。時間をかけることと関係なくファンを作れると考えています。

SATURでは、消費者やファンのことを以下のように定義しています。

  • ファン・メンバーシップ : ブランドを応援するために自分の時間と努力を投資してくれる人。

  • お得意さん(リピーター):3回以上購入した人

  • 顧客:1回でも購入した人

  • 消費者:ブランドを知っている潜在的な顧客

ファンは自分たちの時間を費やしてブランドが成功することを望み、応援しているため、時間と労力の投資を喜んでしてくれる人たちです。そのため、ファンは購入回数・金額に関係なく、“感動の大きさ”が重要です。 ーー“感動の大きさ”がファン作りに直結するというのはとても共感しました。実際にSATURでは、ファン作りをするためにどのような取り組みを行なっていますか?

実店舗では直筆の手紙を書いてお客さまにお渡ししています。さらにブランド初期には私が自らお客さんに商品を届けにいっていましたね。

▲直筆の手紙に感動したお客さまのInstagramの投稿

あとこれは毎回話すと驚かれるのですが、Instagramの公式アカウントへのコメントに返信したり、モールECでのコメントにも全て返信しています。

モールECの担当者さんに「そんなことをするのはSATURさんだけですよ」と言われたのですが、これはお客さまにも喜ばれるのでやらないという選択肢はありませんね。 ーーSNSでのファンの熱狂度が高いことでも有名なSATURですが、代表自ら「こんな指標まで見ている!」というものはありますか?

毎日午前11時半に必ず見る指標があります。それはInstagramで顧客が公式アカウントをタグ付けする数です。SATURは常にストーリータグが99以上ついている必要があります。特に土曜日には爆発的に伸びて、必ず200件以上タグ付けされます。タグが付いている数=ブランドが拡散されている数なので、その指標を見ることが一番明確だと考えています。

自分のブランドがどれだけ拡散されているか、顧客がいかにSATURに対して誇りに思ってくれているのかを必ず見ています。この指標が下がると、いわゆるブランドへの熱量が下がっていると判断して、「この状態を打破しなければならない」と危機感を感じるようになります。だからこそ毎日どれくらいのタグ付けがあるのか、リアルタイムでブランドに対する顧客の反応を見ることが重要です。私はこの指標が売上よりも重要な指標だと思います。

そして、タグづけしてくださったお客さんのアカウントは絶対に入ってみることをお勧めします。なぜなら私たちの顧客だからです。顧客がどのような人なのかを知らないでいるのはもったいないですし、私は自分でコメントを残しにいくようにしています。ブランド側からお客さんに訪問する形のマーケティングが必要です。「商品をご購入いただきありがとうございます!デートの時ぜひ着てくださいね!」といったコメントはどんどん残すべきですね。

最後に、SATURのように成長するには?

ーー具体的な取り組みも多くありましたが、最後にSATURのように成長するにはどうすべきでしょうか?

意思決定の順番がとても大事だと思います。SATURでは、顧客、従業員、取引先、役員、代表の順に意思決定を行っています。顧客が最優先の意思決定対象です。この順番を逆にすると、事業は失敗します。代表が最優先で、役員が次、それから従業員があるという誤った考え方をすると、会社は破滅の道を進むことになります。常に顧客を最優先に考えて、代表の優先順位を一番下げることが成長の秘訣ですね。

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