生成AI時代における新しいCS担当者のスキルとケイパビリティとは
Rooney • JP Organic Team Leader
テクノロジーの進化、とりわけ生成AIの登場は、私たちの働き方に劇的な変化をもたらしています。顧客対応の分野においてもそれは例外ではなく、今やAIを活用したチャットボットやFAQ生成ツールは、カスタマーサポートの現場で“当たり前”に活用されるようになりました。
このような状況下で、カスタマーサポートおよびカスタマーサクセス(CS)担当者は「AIに置き換えられる存在」ではなく、「AIと共に顧客価値を最大化する存在」として、より高度で人間的な価値の提供が求められるようになってきました。
本記事では、CS担当者が生成AI時代にどのようなスキルとケイパビリティを備えるべきか、そして今後どのように働き、どんなキャリアを描けるのかについて深掘りをしていきます。
生成AIの急速な進化により、CS担当者の仕事は劇的に変化しています。単にFAQを整備する、問い合わせに対応する、という「受動的なサポート」から、AIを活用して能動的に課題を特定し、顧客の成功を先回りして導く「プロアクティブなサポート」への転換が進んでいます。
CS担当者は、AIが処理・提示した情報を的確に解釈し、必要に応じて改善を提案するファシリテーターとしての役割も担う必要があります。また、AIによる顧客対応のロジック設計やナレッジベースのチューニングなど、AIを“育てる”視点も不可欠です。
今後は「AIオペレーション」や「プロンプトエンジニアリング」といった新しいスキルセットも、CS職の一部として捉えられていくことでしょう。
AIが定型業務を担うようになる一方で、CS担当者にはより「人間らしい対応」が求められるようになります。顧客の背景や心理状態を瞬時に読み取り、単なる問題解決ではなく、心地よい体験を提供する力が問われています。
共感力、信頼関係の構築、ニュアンスを読み取る感受性など、非定量的な「情緒知性(EQ)」は、AIには再現しづらい領域であり、CS担当者が価値を発揮できる重要なポイントです。
特にBtoBのシーンでは、企業の複雑なニーズに応じた柔軟な提案や、長期的な関係性の構築が求められるため、「人間にしかできない仕事」は今後ますます増えると考えられます。
AIが蓄積したログデータや利用状況のレポートを分析し、顧客の声を可視化・構造化する力も求められます。インサイトを導き出す力があれば、プロダクトチームへのフィードバックもより精度の高いものとなり、結果的に顧客満足度や継続率向上に寄与します。
定量的なKPI(NPS、LTV、チャーン率など)と、定性的な顧客の声の両面から状況を読み解き、戦略的な施策へと昇華させる力が、今後のCS担当者には不可欠です。
チャネルトークが開発したAIエージェント「ALF」では、顧客対応の一次窓口としてAIが自然な文章で対応し、対応件数を50%以上削減。さらに有人対応の質も向上しています。
しかし、AI任せではユーザー体験が無機質になるリスクも。AIの正答率を高めるだけでなく、「この質問は人間が対応した方が良い」「今はすぐにエスカレーションした方が良い」といった判断ができる、判断力と顧客志向も今後は求められます。
参考記事『PAUL & JOEがAIでの24時間顧客対応を実現!』
「課題が発生した時にだけ連絡する存在」から、「顧客の成長を伴走するパートナー」へ。顧客のビジネスや業務課題を深く理解し、必要に応じて提案や支援を行うことが、今後のCSのスタンダードになります。
チャネルトークでは、オンボーディングから定着支援、アップセルの提案まで、各フェーズでデータに基づくパーソナライズされた対応を実施し、高い継続率を実現しています。
参考記事『BtoBのCS現場に必要なAIへの向き合い方。AIエージェント「ALF」を活用したチャネルトークCXチームの取り組み』
CSの仕事は、もはや「問い合わせに答える人」ではありません。AIの台頭により、より「創造的な仕事」「人の心を動かす仕事」へと進化しています。
たとえば、今後のキャリアパスとしては以下のような道が考えられます:
AIを活用した業務改善のスペシャリスト(CSOps、AIオペレーションなど)
顧客体験の全体設計を担うカスタマーエクスペリエンス・ディレクター
プロダクトと顧客をつなぐブリッジ役となるカスタマーマーケティング担当
グローバル対応や多言語展開に強みを持つCSマネージャー
このようにCS職は、今後ますます戦略的かつ創造的なポジションへと進化し、企業の中でも中核的な役割を果たしていくと予測します。
生成AIの普及により、CSの現場では確かな変化が訪れています。しかしそれは「仕事が奪われる脅威」ではなく、「人間にしかできない価値提供に集中できるチャンス」と捉える事ができると考えます。
AIを理解し、共に働きながら、ご自身の強みを活かして顧客に貢献していく。そんな未来志向のCS担当者こそが、これからの時代における真のプロフェッショナルと呼べるのはでないでしょうか。