Marry • CX Team Leader / Biz-dev
サマリー
どんなものでも買わずにためせる家電のサブスク・レンタルサービス「レンティオ」は常にカスタマーファーストを心掛けています。その考えからECサイトの運営を行う上で、お客さまの対応を行うCSが最も重要だと考えており、サービス展開初期からCSを重視していました。そこで、よりお客さまが気軽に質問や会話ができるツールの中で、お客さま目線で使いやすく、距離を縮めることのできるUI設計のチャネルトークを導入しました。
買わずにためせる、家電のサブスク・レンタルサービス「レンティオ」。月間13万人以上が利用し、累計新規注文件数は100万件を突破。ユーザー評価は★4.7と非常に高く、SNS上での口コミが多いことでも有名なレンティオ。成長の根幹にあるのは、カスタマーファーストの考えです。 レンタルサービス成長の根幹となった、レンティオの思想やCS運営の裏側を代表の三輪さん、CS 菊池さん・大河原さんに伺いました。
ーーレンティオといえば“カスタマーファースト”の考え方が深く全社に浸透しているイメージですが、その考え方はどのようにして生まれたのでしょうか?
三輪さん:私がモールECを展開する前職で働いていた経験が大きく影響しています。在職中は約500店舗くらいを担当していたのですが、売り上げを伸ばし続けている数社には“CSにしっかりと注力している”という共通点がありました。CSが機能していない状態で、広告を出稿したとしても一時的な売上増で終わってしまい苦戦している企業がいる中、例えば、商品の発送と合わせて直筆のメッセージカードを同封する等、CSをしっかり行っている企業は、広告出稿後にも継続して売り上げを伸ばしていきました。ユーザーをしっかり見ている会社と見ていない会社では、はっきりと差がでます。今は口コミがバイラルするからこそ、CSが果たす役割は大きくなっています。そのため初期の頃からCSや顧客を中心としたサービス開発が重要だと思いました。そういった背景から、レンティオでは、お客さまとコンタクトがない部署でも、常にカスタマーファーストを心掛ける意識が根付いており、入社すると、上から下へ伝える文化があります。 ーーレンティオはサイトのレビューがとても多い印象があります。これもカスタマーファーストが顧客体験に影響しているのでしょうか?
菊池さん:レンティオのレビュー投稿率は約8%を維持しており、一般的なモールECが0.8%くらいだということを考えると、高い水準を保っていると思います。レンタルという体験を通じて、別のユーザーにご自身の体験を伝えたいという思いと、CSのクオリティの高さが起因していると考えています。またレビューだけでなく、お客さまからありがたいお声をお手紙でたくさん頂戴しています。
また、低評価のレビュー投稿を確認した際には、内容によって投稿から数分以内にお客様に直接連絡し、ご迷惑やご不便をお掛けした点をヒアリングすることがあります。その商品に対して一度でもネガティブなイメージを持ってしまうと、レンタルのご利用以外でも、その後もずっとその商品を敬遠される可能性があるので、そのイメージを払拭するため、電話やメールなどでフォローをして、お客さまの不満やお困り事を解決するように心掛けています。実際にお話をお伺いすると、使い方に誤りがあったことが判明することも多く、こういった少しのお声掛けで、不満を成功体験に変えることができるので、積極的にアプローチするようにしています。
ーーCSも30名とかなり大きいチームですが、これにはどのような理由があるのでしょうか?
三輪さん:CSは問題を解決して、お客さまに喜んで頂いたり、新しい何かを発見して貰ったり、お客さまの成功体験に繋げられる重要な役割を担っています。また、通常のECと比べてレンタルは問い合わせが多くなる傾向にあり、請け負っている業務範囲も広いことが特徴です。そのため、CSのメンバーは自ずと増えていきました。しかし、月間で約13万件の利用があることを前提として考えるなら、30名というメンバー数が特段多いわけではないと考えています。
ーー問い合わせが多いとのことですが、そのような中でもレンティオでは電話は3〜4コール以内に出て、チャットは5秒以内に返信するという脅威のスピードで対応されていますが、このルールに至った背景などあれば教えていただけますか?
大河原さん:お客さまは困っている状態で電話をかけてくださっているのに、直ぐに電話に出てくれないとなると「レンティオって何なんだ?大丈夫か」とお客さまに不安を与えてしまいます。こちらは初めての対応でも、お客さま側は紆余曲折の上、ようやく電話がつながった状態です。そのためひとつひとつのお問い合わせを大切に対応するようにしています。CS側とお客さまの温度感のギャップをできるだけなくしたいという思いがあり、このルールを作成いたしました。 また、レンタル商品を明日使いたい、旅先で困っている、という急ぎのケースも想定して、安心できる対応を心がけています。
ーーCSに注力している企業に共通点はありますか?
三輪さん:社長や役員、責任者が進んでクレーム対応できるか、という点にあると思います。自分で対応することで、クレーム対応の大切さや大変さもわかります。その経験が良いCSの組織を作る土台となります。 クレーム対応なんてやりたくないという人も多いですよね。その考えのまま、ユーザーと向き合わずに大きくなった会社を私は知りません。ZOZOTOWNやAmazonも、CSはしっかりしています。結論、顧客に向き合うことが成長を加速させると思います。 ーースピーディーかつ顧客満足度の高い対応を実現するには、CSの教育・育成が重要になりますが、どのような体制を作っているのでしょうか?
菊池さん:基本的に先輩社員マンツーマンのOJTが中心です。チャットの他に電話やメール対応もあるのですが、まずはメールの返信に携わってもらいます。メールの場合、考えながら返信ができるので、新入社員の人にはぴったりです。 慣れてきた段階で少しづつチャットや電話対応を行ってもらいます。1人で対応するようになっても、困ったことがあれば社内チャットシステムのQAチャンネルで気軽に質問できるため、不安を抱えながら対応することが無い様にしています。QAチャンネルには多くの問題解決のノウハウが積み重ねられ、ナレッジが溜まっているので、解決の糸口としては最適な状態です。 1人で完全に対応できるようになるまで、おおよそ半年程度かかります。取扱商品が6,000種類もあるので、わからないことは分からないとはっきり伝えることも重要です。メンバーそれぞれに得意分野があるため、お互いに支え合いながら解決しています。
ーーCSという部署は離職率が高いイメージがありますが、レンティオでは、どのようにモチベーションの維持をされているのでしょうか。
菊池さん:難しい対応やクレームを1人で抱え込まないように、全体でサポートできる体制を作っています。例えば社内チャットシステムでQAというチャンネルを作り、些細な質問や疑問でもQAチャンネルに投稿し、それに対して誰かが答えるという仕組みです。 回答する人に決まりはなく、分かる人であれば誰でも答えを返します。深く思い悩む前に解決できる他、良かった点や改善ポイントもその都度フィードバックするようにし、CS全体のモチベーションアップにつなげています。 さらに、CSメンバー一人ひとりの裁量権が大きいのも特徴です。最低限のルールはありますが、お客さま優先を考えてのことであれば、ある程度の判断は対応した人に委ねています。テンプレートな対応に終始せずに、自分なりの考え方をお客さま対応に反映できる点が、やりがいにつながっているのかもしれません。 ーーCSのメンバーに与えられた裁量権はどの程度まで委ねられているのでしょうか
大河原さん:例えば、運動会など大事なイベント使用目的で機材をレンタルしていただき、中には、やむを得ない事情でご使用ができなかったというケースがあります。柔軟な対応が必要になった際、その判断は実際に対応しているCSがするべきだと思っています。 それがカスタマーファーストであり、来年の運動会もレンティオで借りようと思ってくれることにつながるのではないでしょうか。 ーー来年の運動会でも使ってもらえる、という長期のことまで見据えているのはすごいですね。普通は返品やキャンセルが面倒だと感じる人がいてもおかしくないと思いますが、長期を見据えたCSを当たり前にできるのはどうしてなのでしょうか?
菊池さん:CS全体で売上を作っている意識が強いからです。例えば、お客さまから「こういう商品はありませんか?」と聞かれたときに、ありませんと答えるのではなく、現状その商品の取り扱いをしていなくても、すぐに社内で検討して取り扱いを開始することも当たり前に対応しています。
ーー創業当初からCSが事業の中心になるイメージを持っていたのでしょうか?
三輪さん:はい、そうです。弊社はレンタルからサブスクまでプランを広げたり、細かい事業形態の変更は行っていますが、根本はお客さまからの要望を具現化したものです。 事業の変化や拡大の重要なポイントはCSが握っており、CSでまとめたお客さまの声を事業に反映させることがあります。チャネルトークを導入したのも、現在のCSの運用があってこそです。よりお客さまと身近に接することで、何か新たに得られるものがあるのでは?と考えています。 ーーお客さまの問い合わせの背景から適切な答えを導き出すのは、CSとして大事だと思います。CS対応についての教育のほかに、採用時点での資質の見極めもあるのでしょうか。
菊池さん:コールセンターでの経験や量販店での勤務経験などあると良いのですが、それよりもサービスへの共感が大事だと思っています。素直で純粋である、という点も重要ですね。育成やサポートの体制は整っているので、採用のときは経験よりも人柄を重視しています。
ーーそんな中でチャネルトークを選ばれた理由は何故でしょうか?
大河原さん:先ほどもお伝えした理由から、お客さまが気軽に質問ができて、会話のしやすさが重要と考えています。以前、他ツールを利用していた際は動作が重く、利用できる機能も少なかったんです。特に困ったシーンとしては、営業時間設定ができないため、誰かがチャットを抜け忘れてそのまま離席するとどうすることもできず、ずっと問い合わせ対応しなければならないことがありました。またお客さまが誤ってチャットから退出することも多く、対応が完了する前に離脱したり、お客さまとの接点を継続することが難しかったんです。このようなことから、CSとしても対応しやすく、お客さまも質問しやすいUIで距離が縮まるツールとしてチャネルトークを導入いたしました。
ーー実際、どのようにチャネルトークを活用していますか?
菊池さん:サポートbotを活用して、よくある質問を自動で解決することができるようになったことで、問い合わせ対応の総数が大幅に減りました。そのため、より有人で対応すべき問い合わせ対応に集中しやすくなりました。
現在チャネルトークを1日約20名で運用しており、チャット経由の問い合わせは1日約80件です。問い合わせにはチャットと並行して電話やメールでも対応しています。 ーーチャット経由の問い合わせはどのようなルールで割り当てるのでしょうか?
菊池さん:基本的には、チャットがきた時にリソースが空いているメンバーがすぐに担当者になります。チャネルトークの場合、だれが今何件対応しているのかを一目で見れることから、問い合わせが特定のメンバーに集中することを避けて、質の高い対応ができるようになりました。
ーーCSとして最終的に目指したいところや今後取り組みたいことはありますか?
大河原さん:レンティオを好きになってもらえるサービスを提供できたらいいなと思っています。お客さまの問題を解決することで、喜びや新しい発見を提供できて、かつ継続的に利用してもらえると励みにもなりますね。 CSを通じて、繰り返し利用してもらえるサービスになれたらいいなと考えています。
ーー最後になにかお伝えしたいことはありますか?
三輪さん:CSが元気だと会社が元気になれる、という実感があります。レンティオの場合はCSの人数が多いということもありますし、CSの元気がなくなってしまうと「コストセンター」という位置づけになってしまいます。会社の熱量そのものにも影響が出てくるのではないでしょうか。今後も会社のマインドを、CSを通じてお客さまに伝えられるようにしたいです。