aya 🍑 • Head of Sales Revenue & 일본 부대표 전 백엔드 엔지니어 & GE팀 👩💻
「バナナ餅」に「インスタント トッポギ」、「豆餅」。Instagramで数多くの口コミが飛び交い、話題を呼んでいるのが、大人気のおやつをデリバリーするフードテックECスタートアップ“WINGEAT(ウィングイート)”だ。なんとこの会社、食品業界出身者は一人もいないというから驚きだ。にも拘わらず、毎月40%ずつ成長し、2年足らずで黒字化した。また、一小売企業という枠を超え、競争が激しい食品業界で年商6億円規模の優良企業へと成長した。彼らの成長の秘訣とは何だろうか。インタビューで詳しく聞いてみた。
ウィングイートのバナナ餅は、Instagramで 大きな反響を呼んでいる(出典:インサイト/イメージ:チャネルトーク訳)
取材のために向かったのは、韓国ソウルのとあるブックカフェ。ブックカフェを事務所として使っているスタートアップとは物珍しい。哲学や文学の書籍が壁いっぱいに詰められた空間で、代表取締役社長であるイムさんが直接淹れてくれたコーヒーを飲みながら、さあ、インタビューを始めるとしよう。
ブックカフェを事務所にしたのはなぜでしょう?
代表:弊社、じつは読書同好会から始まったのです。代表2人とも読書同好会メンバーでして。社員の80%が同じ同好会のメンバーなんです。プライベートでの関係が、ビジネスの関係へと発展したという感じですかね。
読書同好会から始まったウィングイート(出典:WINGEAT)
なるほど。それで事務所がブックカフェなんですね。
代表:はい。じつは、以前同好会で使わせて頂いていたカフェで集まることが出来なくなってしまいまして。じゃあ、いっそ自分たちの手で作ってしまおうということになったんです。 読書会の規模がかなり大きくなったもので、カフェの営業に支障をきたしていたようです。
あれ、でもお客さんが増えるので良さそうなんですが。
代表:読書とディスカッションをする同好会だったので、結構長居することが多くて。売り上げに悪影響を与えていたようです。
そうですね。読書会からはじまったスタートアップならではの変わったカルチャーがあったりしますか?
代表:なんといっても仲は良いですね。あと、読書会からのカルチャーをずっと維持しています。例えば、新しく誰かがチームに参画する際には、本を読んでオリエンテーションを行います。私のチームの必読書は、『Delivering Happiness』(邦題:『顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか』)です。
また、何か課題があるときには、チームで関連書を一緒に読んでワークショップを行うカルチャーもあります。読書会のように、本と討論によって進むべき方向性について意見を共有しているのです。
経営学科出身のイ・ダビン代表はセールスとマーケティングを担当し、プログラマー出身のイム・スンジン代表は開発とグロースハッキングを担当。(出典:ウィングイート)
すごく興味深かい企業カルチャーですね。では、ウィングイートの事業紹介をお願いします。
代表:ウィングイートは、お客様が"ズボラ"になれるようお手伝いするお手軽料理マーケットです。ほぼ全てのメニューを5分以内に調理できる形で販売しています。弊社のお客様は、出来れば美味しくてヘルシーな食品が食べたいけれど、電子レンジで温めて食べるくらいの手軽さを求めている方々です。
私もこの前ウィングイートで冷麺を頼んでみたのですが、70円台という値段と美味しさに驚かされました。ただ、それで利益が出るのかという疑問が...
代表:すべて調理済みのデリバリーフードと違って、半調理済みの食品をお客様のもとに届けることで、後の調理にかかる人件費やガス代、電気代を節約できるため、コストを抑えられます。少しの努力でグルメの美味しさが味わえるため、出前をとるよりコストパフォーマンスが良いのです。
半調理済み食品は品質を維持しつつ原価を安くできる(出典:WINGEAT/イメージ:ZOYI訳)
食品市場においては既に多くの大手スタートアップが参入しているかと思いますが、他の食品系コーマスとの差別ポイントは何ですか?
代表:費用面にはかなり気を使っています。お金を節約しつつビジネスを成長させるために日頃から工夫を重ねています。Instagramマーケティングに重点を置いたのも、お金を節約したいという背景がありました...
コマースにおいて最も重要なのは、いかにリピートして頂くかです。特に弊社の場合、売り上げの80%がリピーターのお客様から出ているためカスタマーサービスを重要視しています。
売上の80%がリーピーターとは、驚きです。お金を使わずとも事業を拡大させるノウハウは、他のスタートアップにとってもとても気になるところだと思います。少し共有して頂けますか?
代表:もちろんです。弊社のアイデンティティはCRM to CRMカンパニーです。徹底的にカスタマーファーストの姿勢を貫きます。一方で、その場しのぎではなく、スケーラビリティを保った状態でお客様との関係性を維持できるよう、様々な角度から日々試行錯誤しています。
代表:まず大切なことは、お客様のニーズについて正確に把握することです。弊社の方法は、至ってシンプルです。お客様に直接伺います。購入したお客様にSMSでアンケートを依頼しています。“こんな商品があったら買いたいですか?” ”購入しようと決定した最大の理由は何でしたか?”などの質問をしています。回答すると、送料無料クーポンがもらえるため、回答率約11%と、かなり多くの方に回答して頂いています。今では、2万件近くのデータが集まりました。
ウィングイートは、購買客の皆様にアンケートをお願いしています。(イメージ:チャネルトーク訳)
このようなデータが、インスタントトッポギやバナナ餅を新商品として発売する際にも一役買ったりしましたか?
代表:はい。というか、一役買ったどころではなく、100%顧客データを活用して発売したといっても過言ではありません。じつは、弊社は食品系企業出身のスタッフは一人もいないんです。 もし、スタッフの直感で商品企画してしまうと、失敗する確率が非常に高いのです。お客様が何を求めているのか直接聞くことができたのが、ニーズを的確に捉えた商品企画に非常に役立ちました。ほら、恋愛だって相手に聞きもしないで決めつけてはうまくいかないじゃないですか(笑)。お客様も同じだと考えています。
食品系企業出身者がゼロのフードテックスタートアップなんて、可能なんでしょうか?
代表:むしろ、専門家がいないため、お客様の声により耳を傾けられるのだと思います。従来のカスタマーサービスを再定義することも違和感なく行うことが出来ました。弊社にとって、カスタマーサービスとはお客様を幸せにする商品を見つけ出すことです。クレーム処理担当部署ではないのです。お客様から問い合わせがあったら、お客様の疑問点・問題を解決するのはもちろん、お客様を幸せにする商品を見つけて紹介します。
カスタマーサービスチームが、セールスとしての役割も担っているというわけですか。
代表:そうです。弊社は、インバウンドだけでなくアウトバウンドのカスタマーサービスにも積極的です。購買歴が5回以上のお客さまには、こちらからお電話で顧客体験に関する感想を伺い、そのお客様にとってベストな商品をキュレーションしています。
電話されるのを面倒に感じるお客様もいるのではないでしょうか?
代表:顧客データを参照し適切な商品をおススメしているため、むしろ快く受け入れて頂いています。自分のことをよく理解してくれている人から何かおススメされると信頼できますよね。そんな気持ちになって頂いているようです。セールスとお客様の満足に良い循環を生むことが、ウィングイートカスタマーサービスチームの目標です。
ウィングイートのCSは、クレーム処理ではない、お客様とより深い関係を築くというミッションを担っている。(出典:イ・スンジン社長のFacebook/イメージ:チャネルトーク訳)
:Instagramのページを拝見したのですが、フォロワーが7万7千人とは驚きました。
代表:Instagramに全力を注いでいます。弊社にとってInstagramは重要なお客様とのコミュニケーションの窓口です。弊社のターゲットとして最適です。実際のところ、売り上げの大半が、Instagramから流入したお客様によって生み出されています。さきほどお話しした通り、弊社は新規顧客をターゲットとした広告は全く行っていません。
弊社が行っているのは、インフルエンサーの方々とダイレクトメールを通して関係を構築した後、新製品を試食して頂いてレビューとして感想をSNSに投稿してもらうという方法です。ただし、Instagramのフォロワーが多いからと言って、一概に広告がうまくいっているとは言えません。フォロワーが20万人のインフルエンサーよりも、5万人以下のインフルエンサーが写真をアップして下さったときのほうが、売り上げにつながるサイト訪問が多かったのです。
メント一つ一つに対して返答するライブ配信(出典: ウィングイート公式Instagram/イメージ:チャネルトーク訳)
スタートアップのためにInstagramマーケティングのコツを教えてください。
代表:代表が一日もサボることなく、ライブ配信をしています。反応が良い時には、一時間の放送のなかで、30万円ほど売り上げることもあります。その間、寄せられたコメント一つ一つに反応するよう心がけています。私はこのように人の気持ちを揺り動かすのは得意ではないのですが、代表はこれが本当に上手くてですね。ライブ動画ではお客様からの投稿を直接紹介したり、お客様がアップして下さった商品の写真を公式ページでregram(リグラム)したり、毎日お客様との接点を作ろうと努力しています。
Instagramのレビュー共有イベントというのも変わった取り組みですね!
代表:ウィングイートについてのレビューをSNSに投稿し、リンクをchannel.io(接客チャットサービス)で送ると200円クーポンをプレゼントするイベントを行っています。投稿して下さったレビューはウィングイートの公式ページにも共有しています。お客様の声をより多くのお客様に届けると同時に、ご愛顧への感謝の気持ちを伝えるのが目的です。投稿していただいたInstagramのリンクをチャットで受け取る方法は、大切なお客様と少しでも多くのコミュニケーションをとり、日頃の感謝を伝えられるため、おすすめです。
お客様からの口コミは、ウィングイートの公式ページにregramされる。(出典:WINGEAT公式Instagram/イメージ:チャネルトーク訳)
詰まるところ、Instagramマーケティングを通してお客様が自発的に口コミを投稿してくれるようにしているということですね!
代表:はい。ですが、弊社が究極的に目標にしたいのは、お客様にウィングイートに対する深い愛着を感じて頂きたいということです。ウィングイートの顧客体験をほかのお客様と共有し、ライブ動画を見て、自らもウィングイートのクルーになったという帰属意識や愛着を感じてもらえたらと思っています。今後は、そのためのWINGEATファンコミュニティーを作っていく計画です。私たちは、これまで通り既存顧客を大切にすることが、今後のさらなる成長につながると信じています。
ファンコミュニティーを作るための具体的な計画はありますか?
代表:現在は、Instagramを中心としたファンコミュニティーがあります。今後、弊社のInstagram上での活動の拠点を、弊社サイトに移すつもりです。食品に関するコンテンツも増設していこうと考えています。美味しい料理やそれに関連した体験を共有し、笑い、コミュニケーションを取りながら購買にも結びつくコミュニティーにしていきたいです。
ECサイトを運営しながらコミュニティーまで管理するのはちょっと手がかかりすぎませんか?
代表:お客様と深い関係築いていくためには、単純作業だったりルーティーンワークに気を取られている暇はありません。弊社にとって最も重要な業務以外は、アウトソーシングしています。
例えば、入店先である総合ECサイトの商品詳細ページ作りがその一つです。弊社と関係の深いインフルエンサーの方々のコミュニティーをつくり、写真撮影をお任せしています。写真専門家だと、商品一つを撮影するのに7~8万円かかります。Instagramのコミュニティーでは、3万円でハイクオリティの写真を撮ってくださいます。じつは、大企業から写真撮影の依頼を頂いたくらいのノウハウをお持ちなのです。
また、詳細ページのキャッチコピー作成をお願いするアウトソーシングの人脈もあります。ウィングイートの詳細ページは、テンプレート化されており、外注を引き受けた方も直接修正できるようになっています。このように、弊社のメンバーが事細かに手を加えなくともハイクオリティな詳細ページを作成して頂いています。
商品詳細ページ制作を依頼できる外注先がある(出典:WINGEAT)
斬新なアプローチですね。スケールアップ後もこの外注戦略を続ける予定ですか?
代表:弊社は、コマース運営のための手間から自由になってこそ、本業となる事業やサービスに全力投球できるようになると信じています。なにも、これは食品系コマースに限った話ではなく。ウィングイートは、今後もできる限り効率的なアウトソーシングを実施することで本業に集中できる事業体制をつくっていくつもりです。
最後に、ウィングイートの今後のビジョンについてお聞かせください。
代表:私たちは、既存顧客へのマーケティングやサービスに集中し、口コミを広げる戦略は、全業界のコマースでも有効だと考えています。弊社チームの目標は、お客様と深い絆をつくり、維持し、拡大するノウハウを持ったチームへと成長することです。
今後、このようなノウハウを食品だけでなく、他業界にも拡大していく計画です。Diapers.com(米国のベビー用品に特化したECサイト)のように一つの業界に特化し、お客様と親密な関係を築くこと、さらにそういった業界を増やしていくことが弊社のビジョンです。
終わり
お客様オタクでも呼ぶべきだろうか。お客様のニーズを問い、お客様と日々コミュニケーションをとり、顧客満足だけに集中する。筆者の目に映ったウィングイートのお客様に接する姿は、まるでお客様と恋愛しているような印象だった。最も大切な人に接するように、お客様をもてなすこと。これが、ウィングイートの生存戦略だ。
読書同好会から始まった企業であるぶん、他企業には真似できない組織マネージメントスキルを持ち得ている点も印象的だった。
独自の戦略で、見事な成長を成し遂げるウィングイート。とことん顧客にこだわる彼らの戦略を、あなたのビジネスに応用してみてはいかがだろうか。