創業5年 年商35億円 MAISON SPECIALが実践する埋もれないブランドの作り方

Marry • CX Team Leader / Biz-dev

10月 25日

  • 活用事例

創業5年 年商35億円 MAISON SPECIALが実践する 埋もれないブランドの作り方

「ブランドは膨張させてはいけない。健全に成長させることが重要。」

そう語るのは、2019年からスタートしたアパレルブランド「MAISON SPECIAL」の福田氏と秋山氏。年商35億円まで成長させてきたが、今年からはブランドの地盤作りを行うという。

今まで成長してきた要因である強い武器である【クリエイティブ×商品】と、武器を生かすための戦略の軸となる【CRM×チャット接客】、そして膨張と成長の違いについて話を伺った。

①今までの成長を支えた【クリエイティブ×商品】

クリエイティブ×商品が何よりも重要

–MAISON SPECIALは単一ブランドで成長しており、アパレル業界の中でも注目を集めています。どのようなことに注力してきたのでしょうか?

秋山:MAISON SPECIALとして重要だと考えていることは、ブランドの個性です。その個性を磨き、発信してきた結果、多くのお客さまから支持をいただけたと思っています。

物がありふれている日本では差別化のないブランドは埋もれてしまいます。そして、ブランドの個性が正しくお客さまに伝わっているブランドは少ないと思います。

福田:ブランドの個性を強くし、発信するためにMAISON SPECIALは主に2つの強みは持っています。

1つ目が「クリエイティブ×商品」を掛け合わせることにより、商品力が高まる取り組みを行なってること。2つ目がビジネス力が高いデザイナーの存在です。

1つ目の「クリエイティブ×商品」についてですが、店頭であればデザイン・触り心地・接客体験などを鑑みて、実際の価格を値札で見ていただいて購入しやすいと感じていただいていると思います。しかしECでは直接商品に触れることはできないですし、スタッフがすべてのお客さまに接客を行うことは難しいです。

そのためECで注力していることは商品写真です。商品が魅力的に映り、見た人の印象に強く残るように尖らせたクリエイティブにしています。

「ECで服を売るため」の商品写真としては行き過ぎていると感じるレベルまで力を入れています。

例えば、MAISON SPECIALでは海外のモデルを活用し、写真投稿できるスタッフも社内の中で承認制をとっています。クリエイティブ力が強いメンバーのレベルをボーダーにすることで、クオリティの最大化を行なっています。

–商品写真の投稿を承認しているスタッフはどのような方なのでしょう。

福田:何かECのスキルがあるわけではありません。言ってしまえば「MAISON SPECIALらしさ」をどこまで体現できるかの感性によっていると思います。承認スタッフは2人います。1人はブランド立ち上げ当初からMAISON SPECIALを成長させてきたメンバー、もう1人は顧客心理を掴みSNSフォロワーを増やした店舗スタッフ。

MAISON SPECIALのブランディングをこの人に任せておけば大丈夫という人がいることはとても心強いです。

秋山:ブランディングは抽象的ですが、とても重要なことです。例えば、これをすれば売上が間違いなく上がる施策は結構あるんです。もっと低価格帯のアイテムをZOZOで量産したり、日本人モデルを採用して新規のお客様にアプローチしたり。しかし、この施策をすることはMAISON SPECIALとして正しいことなのかを考える必要があります。

福田:EC事業部の数字を見る立場として、売上とブランディングで迷うことは多いです。MAISON SPECIALとしての大前提はオシャレで売れること。オシャレじゃないけど売れることを選択するくらいなら、「オシャレであること」を優先して考えてほしいと社内で常々言われています。

そのため、クリエイティブでどう商品を上手く魅せるかはとても重要です。商品とクリエイティブの掛け合わせこそ、MAISON SPECIALの強みになっていると感じています。

商品デザインにも強いこだわりが。鍵はビジネス力

福田:もう一つの強みがビジネス力の高いデザイナーの存在です。MAISON SPECIALではトレンドは押さえつつ、ありそうでないものを追求しています。これに関してはデザイナーが優秀であるが故に実現できていると思っています。

この優秀というのは、デザイナーには欠かせないセンスや感性はもちろんですが、アパレルのマーケットを誰よりも見ており、ビジネスにおける戦闘力が高いということです。

MAISON SPECIALのデザイナーは今伸びているブランドや顧客のトレンド、ECチームよりZOZOで何が売れているかを把握しています。アパレルがトレンドばかり追いかけすぎると似たようなアイテムが並んでしまうことは多いです。

しかし、MAISON SPECIALのデザイナーはマーケットと他社のアイテム、そして顧客動向を深く見ているため、大枠のトレンドを捉えつつも、差別化できているデザインのアイテムを展開できています。

バランスがすごく大事ですね。おしゃれなものを作っても誰にも売れなきゃ意味がないですし、誰でも購入できるような当たり障りのないものを作りたいのかと言われたらそうではない。

秋山:会社のメンバー誰しもが売上に意識があることはMAISON SPECIALの強みになっています。ECや店舗のスタッフだけでなく、デザイナーも日々の売上・マーケット調査を行なっています。全てはビジネスとしてブランドを成功させるためです。

そのためデザイナーとECの戦略について相談することも日常茶飯事です。

福田:そうですね。ECは商品が既にあって、そこからどう最大化していくかが主流だと思います。しかし、MAISON SPECIALではデザイナーと密に連携することで、商品からECチームは携われますし、逆にデザインチームも売るところまで携わっています。

自分が作った商品がどのような写真、文章でお客様に見られているか気になるじゃないですか。そこに対してもデザインチームと意見交換をしながら、商品写真の撮影などのささげは行なっています。ただ作る・ただ売るだけのチームは存在しません。

ささげは最も重要な接客だと考えています。全て内製で行なっているのですが、お客様に商品の魅力を伝えるには、制作したデザイナーの意見はとても参考になることが多いです。

秋山:お客さまからいただくチャットなどの問い合わせは、サイズと生地感についての質問が圧倒的に多いです。ささげにおいても商品ページ内の接客を最大限行えるように、生地感が最大限伝わるように商品に寄った写真を用意するなど、お客さまからの声も反映しています。デザイナーからの意見とECチームで普段培っている顧客の声を上手く融合できていると思います。

–ここまで優秀なデザイナーがいるにも関わらず、商品単価はクオリティに対して安い気がします。

福田:実は優秀なデザイナーがいるから、価格も相場やデザインに対して安価に作れているんです。

一般的には工場から提示された価格に対して、会社の利益率を鑑みて値付けを行います。しかし、MAISON SPECIALのデザイナーはこの価格じゃないと売れないということをマーケットや直近で売れている商品や他ブランドについてわかっているため、根拠と今までの実績を持って工場に提案しています。

デザイナーが消費者のトレンドを把握して、売上を作ることに長けている。実績を積むことで工場の方々もついてきてくれるようになるんです。

ただ素材を安くすることで工場が損してはいけません。このデザイナーにならこの価格で預けても、工場も儲かると信じていただくことが大事です。継続的にいい取引をしたいと考えるのはブランドも工場も同じです。顧客・ブランド・工場の3方よしの状態を作れています。

このようにデザイナーがビジネス感覚を持っていることは、優れた商品のデザインを作れる以外にもささげのクオリティ・価格の安定化など多くの影響があると実感しています。

特に自信があるとした商品であるションヘルシリーズ(

–MDを代表が担っていると伺ってます。

福田:その通りです。商品×クリエイティブをブランドの一番のコアに置けたのは代表がMDをしていたからこその自然の流れだったように思います。

秋山:代表自身がMDをすることで、他のブランドに比べて数字をより細かく見ていると考えています。商品×クリエイティブを軸にしつつもビジネスとして、会社として存続させていかなければいけない想いが誰よりも強い人間が代表だと思うので、より俯瞰した目線を持っています。

その結果、ただおしゃれなものを作って満足するだけではなく、自信ある商品を多くのお客さまに届けるところまで最初からビジネス設計ができていたのだと思います。

②これからの成長の鍵となる【CRM×チャット接客】

いいものを作るだけではない。戦略がビジネスを生き抜く。

秋山:ビジネスとして事業を成長させるためには、おしゃれなアイテムを作るだけでは生き残れません。お客様に正しくアプローチしなくてはいけないと思っています。

福田:今、MAISON SPECIALは設立5年目を迎えました。今までは商品×クリエイティブの掛け合わせを中心に会社全体で年商35億円まで成長することができました。しかし、今までの成長速度と同じペースで走ると、どこかにブランドとしての歪みが生まれるのではと危惧しています。

冒頭にも話しましたが、MAISON SPECIALはブランディングを大事にしています。そのため、ブランドの濃度が薄まるような体験や安価な商品は提供しません。濃いブランド体験を提供し続けるために、今のMAISON SPECIALを気に入っていただいているお客さまに対してのサービス提供を強化していくことを考えています。

中身がない状態で新規のための広告やクーポンでブランドを膨らませても、投資をし続けないとその膨らみは萎んでしまいます。また、似たブランドが出てきたらお客様が流れてしまう可能性も高いと思います。無理に膨張させてもブランドの成長には繋がりません。

そのため、5年目はCRMと接客を軸に、MAISON SPECIALで購入するメリットを提案できるようにして、よりブランドの地盤を強固なものにしていくことを考えています。

主軸の戦略としては

①会員ごとにポイント還元率が変わるランク制度 ②チャネルトークによるチャット接客 ③アプリによる新たな顧客接点作りです。

–2023年に入ってからサイトやアプリも大幅リニューアルを行いましたね。

福田:そうですね、このリニューアルにより戦略面も以前よりパワーアップすることができています。

MAISON SPECIALのアプリ

ランクとアプリは株式会社Stackが提供する「VIP」と「Appify」を活用しています。チャネルトークとランク・アプリは連携ができます。セグメント毎にチャットができることはMAISON SPECIALの戦略と上手くはまっていると感じます。

秋山:お客さまに対して、ブランド側から会話を投げかけることができるチャネルトークの機能はかなり活用しています。ご利用いただいているお客さまが以前購入した商品や今気になっている商品も1つの画面で把握することが可能です。

そのため、ブランドからその人に合ったおすすめ商品やコーディネートを提案することができます。実店舗の接客と本当に変わらないですね。実際にロイヤルカスタマーにおすすめをしてみると50%くらいの方が返信をしてくれます。

お客さまが気になる事に対してBotでの自動返信や迅速な返信も心がけていますが、お客さまの体験がより高まるポイントとしては自分に合った商品をドンピシャで提案してくれるような期待を超えてきた瞬間だと思います。

チャットは非効率?1対1の接客にこだわる理由は

–ECだと広告を投下して大きいターゲットを確保する戦略を取るケースも珍しくないと思いますが、MAISON SPECIALが接客を通して、ロイヤルカスタマーひとりひとりの満足度を高めようとするのはどのような狙いがあるのでしょうか?

福田:大前提、MAISON SPECIALの商品は一般的には買いやすいものではないと思っています。多くの人が購入するアパレルアイテムであればまだしも、初めてMAISON SPECIALに訪問してくれた方は価格もデザインも鑑みると購入しにくい部分もあると思うんですよね。

そういう意味では「接客をきちんとしないと買ってもらえないブランド」で、広告などだけでは不十分です。そのため、お客さまに対しての接客は引き続き注力していかなくてはいけません。

秋山:冒頭でもお伝えしたブランドの個性を正しくお客様にお伝えするために、チャットなどで会話を行うことは大事だと感じています。自社のことを知ってもらうことはブランド理解が高いファンを増やし、継続的な関係を築くきっかけになります。また会話を通すことでブランドのお客さまの理解を深められます。このお客さまの好みの色やスタイルを把握することで満足度の高いご提案ができるようにしています。

チャット施策では新規のお客様とロイヤルカスタマーへの対応も変えています。新規のお客さまがいきなり声がけされたら少し驚くと思うんですよね。一方、ロイヤルカスタマーはよりいい商品をどんどんおすすめしてほしいというニーズがあるため、ブランドからも積極的にご案内を行なっています。

–実際にどのようなお声がけを行なっているのでしょうか?

秋山:新作アイテムのご案内など、ランクがAとSのお客さまには毎週1回、チャネルトークからチャットを送っています。

チャネルトーク内で管理している顧客データのセグメント情報

それ以外にも、セットアップ商品の下のアイテムだけしか見ていないお客さまに上のアイテムをおすすめしますし、毎週のようにご購入いただくお客さまは趣味嗜好もわかるのでこの商品好きじゃないです?のようなチャットを送ることもあります。

画一的な広いご案内だけではなく、個人のニーズに合った細かい提案も日頃から意識しています。既読率も50%から60%、チャットを送って3日以内にご購入いただけるお客さまが約10%〜20%いらっしゃいます。

チャットでご案内したアイテム以外を購入している方もいらっしゃいますが、チャットで案内したアイテムを見たあと、類似商品が気になった方もいると思います。そういう意味ではお客さまとのタッチポイントの始まりになっていると思っています。

この動きを毎週繰り返すことで、お客さんの理解も深められますし、VIP顧客を離さない取り組みになっていると思います。

–今後の目標を教えてください。

福田:既存顧客の売上構成比50%以上かつロイヤルカスタマーの売上構成比20%以上を目指しています。ブランドの土台をしっかり作り上げることで持続的な成長を考えています。

ただ既存顧客の売上構成比はかなり50%近くになってきているので、ロイヤルカスタマーに向けた取り組みの強化を今後はしていきたいですね。

秋山:定性的な目標は、顧客の顔の見える化です。何人かはその人の趣味やなぜMAISON SPECIALで買い物をしてくれているのかをかなり深く把握できています。その人数をもっと増やしていき、より自社ECで購入しやすい環境を整えることを考えています。

福田:ロイヤルカスタマーに向けては返品をよりしやすくしたり、過去のご購入いただいた商品が多いとタンスも嵩張ると思うので買取りを行い、新しい商品をより楽しんでいただけるようなことができると面白いかもしれないなと考えています。よりCRMの戦略を深くしていき、お客様満足度を高められる取り組みを増やしていきます。

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