AI電話とは?仕組みやメリット・デメリットを紹介

日本語音声認識(STT/TTS)の課題も解説

Jay • VP in Japan

  • AI Tips
  • CS Tips

企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)AX(AIトランスフォーメーション)推進において、コールセンターや電話窓口の自動化は急務となっています。しかし、慢性的な人手不足やスタッフの負担増加を解消したい一方で、「従来の自動音声応答システム(IVR)では利用者の満足度が下がるのではないか」と懸念されているIT部門の責任者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、最新の「AI電話」の仕組みや、日本語特有の難解な発音に対する音声認識(STT:Speech to Text)音声合成(TTS:Text to Speech)技術の現在地を解説します。導入による業務効率化のメリットだけでなく、運用上のデメリットやリスクも客観的にお伝えします。

自社の電話接客における課題解決や、社内への導入提案を検討されている方は、ぜひ本記事の内容をお役立てください。

AI電話とは?従来のIVRとの違いや仕組みを解説

DX・AXの潮流のなかで「AI電話」が注目される背景

近年、企業の経営課題を解決するアプローチとして、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と「AX(AIトランスフォーメーション)」という2つの変革が重視されています。

DXとは、紙やアナログに依存していた業務をデジタル技術に置き換え、データ活用を通じて組織の効率を高める取り組みです。一方のAXは、DXで整えたデジタル基盤の上で、AIを活用して業務プロセスそのものを自動化する考え方を指します。DXが「デジタル化による土台づくり」、AXが「その土台の上でAIが人の代わりに働く仕組みづくり」と捉えるとわかりやすいでしょう。

コールセンターや電話窓口は、まさにAXの恩恵を受けやすい領域の一つです。定型的な応答業務を自動化しつつ、人間の判断力が必要な場面には有人対応を残す「自動化と人の共存」を実現する手段として、AI電話が注目されています。

AI電話の基本的な仕組みと役割

AI電話とは、人工知能が人間のオペレーターに代わって電話の応答を行うシステムを指します。音声認識や音声合成、そして自然言語処理といった高度な技術を組み合わせることで、相手の発した言葉を理解し、文脈に沿った適切な回答を音声で返すことが可能です。

例えば、営業時間の問い合わせや予約の受付といった定型的な「電話接客」を、人間を介さずに24時間体制で自動化することができます。これにより、電話窓口における業務効率を大幅に引き上げることが期待されています。

従来の自動音声応答(IVR)との決定的な違い

従来の自動音声応答システム(IVR)とAI電話の大きな違いは、対話の柔軟性にあります。

IVRは「〇〇に関するお問い合わせは1を、△△については2を押してください」というように、あらかじめ設定されたプッシュ操作に沿って案内を進める仕組みです。利用者は決められたルートから外れることができず、求める回答にたどり着くまでに時間がかかるケースも少なくありません。

一方でAI電話は、利用者が自然な言葉で話しかけた内容をその場で認識し、自律的に返答を生成します。利用者はダイヤル操作を強いられることなく、まるで人間と話しているようなスムーズなやり取りができるようになります。

音声認識と音声合成の課題

日本語特有の技術的ハードル:漢字の多様な読み方や同音異義語が抱える課題

日本語の音声認識と音声合成において、大きな障壁となるのが漢字の多様な読み方と同音異義語の存在です。

たとえば、「生」という漢字一つをとっても、「なま」「せい」「しょう」「い(きる)」など文脈によって発音が異なります。また、「きかい」という音声に対して、「機械」なのか「機会」なのかを前後の文脈から正確に判断しなければなりません。

従来のシステムでは、こうした複雑な日本語の処理において誤認識が発生しやすく、スムーズな電話接客の妨げとなるケースが見られました。

AIが実現する自然な「電話接客」の実用レベル

しかし、近年の大規模言語モデル(LLM)を含むAI技術全般の進歩により、この状況は大きく改善されています。

現在のAI電話は、前後の文脈を深く理解し、適切な同音異義語の選択や、自然なイントネーションでの発声(TTS)を高精度で行うことが可能です。相手の話すペースに合わせた相槌や、会話の「間」の取り方も人間に近い水準まで進化してきました。

ChatGPTをはじめとしたテキスト処理を起点としたAIツールが高度化しているのと同様に、音声領域のAI技術も目覚ましい進歩を遂げています。現在では、複雑な日本語であっても、十分に実用的な電話接客ツールとして導入を検討できるレベルに到達しています。

コールセンター等にAI電話を導入する3つのメリット

AI電話の仕組みや技術的な背景を踏まえた上で、ここからは実際にコールセンター等へ導入した場合に期待できる具体的なメリットを見ていきます。

電話窓口の運営においては、「人手が足りない」「繋がらないと利用者の不満につながる」「スタッフの負担が大きく定着しない」といった課題が長年にわたり指摘されてきました。

AI電話は、これらの課題に対してそれぞれ異なる角度からアプローチできる点が強みです。以下では、導入によって得られる代表的な3つのメリットを順に解説します。

慢性的な人手不足の解消と採用コストの削減

現在、多くの企業が電話窓口での慢性的な人手不足に悩まされています。AI電話を導入する最大のメリットは、この課題を根本から解決できる点です。

24時間365日、休むことなく複数の着信へ同時に応答できるため、必要なオペレーターの人数を最小限に抑えられます。さらに、新たにスタッフを採用・育成するための時間やコストも削減され、長期的な視点で見ても大きなコストメリットが期待できるでしょう。

電話の待ち時間短縮による利用者の満足度向上

有人対応では、混雑時に「電話が繋がらない」という状況が発生しやすく、利用者の不満に直結します。

AI電話であれば、着信と同時に即座に応答を開始できるため、待ち時間を限りなくゼロに近づけ、放棄呼(利用者が待ちきれずに切電してしまうこと)の削減にもつなげることが可能です。結果として、「いつでもすぐに繋がる窓口」を実現でき、利用者の満足度維持・向上に大きく貢献します。

スタッフの業務負担軽減と離職率の改善

一次対応をAI電話に任せることで、オペレーターの業務負担を大きく軽減できます。

定型的な質問や案内はAIが完結させ、複雑な問題や細やかな気配りが必要な案件のみをオペレーターが引き継ぐという分業体制が構築できるためです。

これにより、スタッフが抱える精神的なストレスや疲労が緩和され、結果としてコールセンターの離職率改善にもつながります。

AI電話の普及に伴うデメリットと運用上の注意点

ここまでAI電話の導入メリットを紹介してきましたが、導入を検討するにあたっては、現時点での技術的な限界や運用上のリスクにも目を向けておく必要があります。

どれほど優れた技術であっても、すべての電話業務を完全に無人化できるわけではありません。AIが得意な領域と苦手な領域を正しく見極めておくことが、導入後のトラブルを防ぐ第一歩です。

メリットだけに注目して導入を進めてしまうと、想定外のトラブルが利用者の不満に直結する恐れもあります。ここでは、事前に把握しておくべきデメリットと、それを踏まえた運用上の注意点を整理します。

複雑な問い合わせに対する誤認識や対応の限界

多くのメリットが期待できる一方で、AI電話には技術的な限界というデメリットも存在します。定型外の複雑な相談や、感情的に話す相手の意図を正確に汲み取ることは、現在のAIであっても難易度が高いためです。

たとえば、クレームのお申し出において相手の怒りのニュアンスを察知したり、複数の要望が混ざった長文の質問に対して的確に回答したりする場面では、誤認識や見当違いな返答が発生するリスクが伴うケースも少なくありません。

そのため、すべての電話業務を直ちに完全無人化できるわけではないという点を、あらかじめ理解しておく必要があるでしょう。

イレギュラー発生時におけるオペレーターへの引き継ぎ

AI電話を運用する際は、イレギュラーな事態を想定した「オペレーターへのスムーズな引き継ぎ」が不可欠です。

AIが回答不能と判断した際や、利用者が有人対応を強く希望した際に、スムーズにオペレーターへつなぐ仕組みがないと、利用者のさらなる不満を招く恐れがあるからです。導入にあたっては、「どの段階で人間にエスカレーション(引き継ぎ)するのか」という運用ルールを事前に明確にし、システム上でも滞りなく転送できる設計が求められます。

デメリットや限界を補う運用体制を整えることが、AI電話を活用した業務効率化を成功させる鍵となります。

まとめ

AI電話は自社のDX・AX推進において有効な手段となるか?

コールセンター等の電話業務において、慢性的な人手不足やスタッフの負担増加は深刻な課題です。DXの推進にとどまらず、業務そのものをAIで自動化する「AX」の実現が求められるなかで、その具体的な手段として注目されているのが「AI電話」です。従来のIVRとは異なり、利用者の発話を直接理解して自然に回答する仕組みを持っています。

懸念されがちな日本語特有の同音異義語や複雑なイントネーションに対しても、LLMをはじめとするAI技術の急速な進歩により、音声認識や音声合成は実用的なレベルまで到達しています。

導入により、採用コストの削減や待ち時間短縮による満足度向上といった大きなメリットが期待できる一方、複雑な問い合わせへの対応には限界もあるため、イレギュラー時のオペレーターへの引き継ぎ体制構築が不可欠です。

AI電話の特性と最新の技術水準を正しく理解し、メリットとデメリットを客観的に比較した上で、自社のDX・AX推進に向けた具体的な導入検討を進めてみてはいかがでしょうか。

有料プランの14日間無料お試し実施中!

直感的に使えるチャットツールです

無料お試し