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BtoB SaaSの顧客対応でAIはどのように活用できるのでしょうか。FAQのような定型文で返答ができる問い合わせなどであれば、AIを活用し効率化を推し進めることが可能です。しかし、BtoB SaaSでは顧客ごとに異なる設定・利用プランに応じての案内が必要であり、顧客情報を加味しつつ、適切な案内をするためには有人対応が必須な部分が多くあります。ではBtoB SaaSにおける顧客対応で、AIの活用は限定されてしまい、高い効果は望めないのでしょうか?
そんなことはありません!実際に私たちチャネルトークのCXチームでは、自らもALFを活用し、問い合わせ数・対応時間を大幅に削減することができています。
どのような要件定義を行いAI活用をスタートしたのか、日々のAI運用についてチャネルトークCXチームにインタビューを行いました。
-チャネルトークのお客様対応の体制や問い合わせ数を教えてください。
CX Manager Ava
Ava:顧客対応をメインで担当しているのは2人です。シフト制なので同時に2人が稼働するのではなく、対応時間内は1人で顧客対応を行なっています。
ALFを活用して顧客対応をスタートし始めたのが2024年10月からです。元々1ヶ月の問い合わせが730件ほど発生しており、効率化できる余地がないか検討していくためにALFの自社活用を本格化しました。
ALFを導入して2ヶ月後の1月は有人での問い合わせは約600件でした。年始のことを考えたらもう少し件数が減っていた方がインパクトはあるかなと思っていますが、件数としては18%の削減にとどまりました。
一方、対応時間は大幅に減りました。チャット対応の際、お客様とは複数回ラリーを行うことがほとんどです。ALF経由のお問い合わせですと、基本的な機能や設定方法についてはALFが事前に回答してくれます。そのため私たちはALFでは回答できなかった最後の問い合わせのみに対応します。従来は1件の問い合わせが完了するのに1時間かかっていたものがALF導入後は30分ほどに短縮できています。
1日1時間、1ヶ月では20時間ほどALFのおかげで余裕ができるようになり、新たにクライアントサポートの強化体制について考えるプロジェクトのリーディングを行うことができるようになっています。
Marry:汎用的な問い合わせを効率化できたことで、よりお客様と向き合い会話をする時間を増やせていると感じます。チャネルトークのCXチームのこだわりでお客様からの質問に1問1答で返さず「深掘り」を行い、本質的なニーズが何かを理解しにいく、というこだわりがあります。
時間はかかってしまうのですが、チャネルトークの機能を表面的に理解してもらうのではなく、「顧客のビジネスの課題をチャネルトークでどのように解決するのか?」この問いを一緒に考える存在としてチャネルトークのCXチームはあるべきだと考えています。
そのためにはもっと顧客と向き合う時間が必要です。今の設定以上にALFの正答率を高める取り組みを進めていかなくてはいけないと考えています。
-初期設定と日々のチューニングはどれくらい?
CX Team Leader/Biz-dev Marry
Marry:ALFの立ち上げから公開するまでには、ほとんど時間がかかっていません。というのもALFはチャネルトークのFAQ、またはドキュメントに登録している情報を元に回答を行うのですが、もともとドキュメント機能を使って利用ガイドを作成していたため、スタートは早かったです。
しかし準備当初は、顧客がALFにどのような質問を投げかけてくるのか?のイメージがありませんでした。仮説として問い合わせタグの上位の質問は多いと考えていましたが、ALFの回答に満足してくれるかは未知数です。そのため使われやすい導線にALFを設置し、たくさん使ってもらうことをまずは重要視しました。
Ava:運用を進める中で気付いたのですが、機能の細かい設定に対するご質問などへの回答は、ALFで完結するには限界がありました。そこで顧客窓口に繋がる導線の中で、単純な質問などはALF対応に繋がりやすくする導線、バグや詳細な機能設定など有人が対応すべき質問はスタッフに繋がる導線のように、導線を棲み分けさせることで最適化を行なっています。
チューニングなどを含めた、日々のALF運用に関しては1日あたり30分〜1時間ほど使っています。まだスタートしたばかりということもあり、ALFが回答した問い合わせは全件、その内容を確認しています。これは1週間で約100件ほどのボリュームです。ALFの回答に満足しなかった or ALFが回答できなかった質問に関しては、チャネルトークのドキュメントに、Q&A形式で追記を行い、ALFが回答できる幅を広げるようにしています。
Ava:ALFを運用し始めて3ヶ月が経過しました。現在の正答率(ALFが回答したうち、役に立たなかったと評価したユーザーを除いた数値)は73%です。中にはどのように調整してもALFが回答できない問い合わせも含まれていますが、それらを除いた場合は80%です。ALFを導入していただいているBtoB企業では正答率60%が一つのハードルになるのですが、順調に推移していると思います。
ただ正答率を高めることだけを追いかけるのはむしろ危険です。顧客への支援と自社での運用を経験して分かることは「有人対応は絶対に必要」ということです。AIだけで解決しようとせず、Botの構成はわかりやすいのか? 有人で対応すべき問い合わせに即座に対応できているのか? 顧客がどのような点につまづいてお問い合わせしているのか? などを理解しないままAI対応を進めると無機質な顧客体験に行き着くと思います。
そのため、今現在はどのような問い合わせが多いのか?Botの導線は正しく機能しているのか?等、AIが本領を発揮できる土台を予め作っておけると運用しやすいと思います。
Marry:BtoBは特に顧客毎に回答するべき内容が異なるため、有人対応とAIの補完関係が重要になります。お互いの強みをどのように活かすのか、最初の要件定義はとても重要です。あとはAIに期待しすぎないことです。繰り返しになりますが、AIを活用して全ての問い合わせを無くすことはできません。有人対応を無くすためではなく、有人対応の価値を最大限高めるためにALFを活用してほしいと考えています。
Ava:今回、チャネルトークのCXチームでALFを活用して顧客対応の最適化を図る中で学んだことは、ALFの活用目的を明確にすること、そしてALFでどのような効果を生み出せるのか事前に認識しておくことです。チャネルトークはEC事業者様の顧客が最も多いのですが、BtoBビジネスやSaaSの管理画面内で、カスタマーサクセスのツールとしても活用できることを知らない方もいるのではないでしょうか。
適切な使い方をしていただければ私たち同様にALFの効果を実感いただけると思います。チャネルトークのCXチームの取り組みを根拠として、BtoB SaaSならではのALF活用術を多くの企業様に対して伝播していければと思います。
編集後記
チャネルトークのCXチームは、インタビュー内でも言及した通り、顧客の問い合わせに返答するだけのチームではなく、顧客の課題を把握し解決に導くチームです。求められる能力は高く、採用も簡単ではありません。他の企業様同様、現在の採用環境では簡単にメンバーを増やせる状況ではありません。一方で、顧客数の増加に比例し、問い合わせ数も増えていきます。プロダクトの機能が増え、複雑化すると同時に問い合わせ内容のレベルも高くなっていきます。そのため、このような時にAIをうまく使えるかどうかで顧客体験に大きな差が出ると考えています。
チャネルトークのALFはCS/CXの現場で運用することを前提に開発を行っています。そのため専門知識などは一切必要なく、運用が可能です。チャネルトークの全てのお客様のサポートを行なっているCXチームの2人がそのことを実現してくれました。特にAvaは入社4ヶ月(インタビュー当時)でチャネルトークの社内ALFの運用統括をしています。ぜひ今回の取り組みでALFに興味を持ってくれたCS/CXチームの方がいたらお気軽にご相談いただければと思います。