AIが「対応力」を底上げする時代へ SNKRDUNK CSチームの進化と挑戦

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スニーカー/トレーディングカード/アパレルの売買プラットフォーム「SNKRDUNK(スニーカーダンク)」。2018年のスタートから急成長を遂げ、現在は月間アクティブユーザー数が600万人を超え、年間流通総額は数百億円規模に達しています。

この成長の背景には、カスタマーエクスペリエンス(CX)部門の存在があります。サービスが急成長し続ける中、ユーザー体験を高めながら、土台を支えるCX組織は、どのような理念を持ち、課題に向き合っているのでしょうか。

今回は、運営元である株式会社SODAのCX部門でCS部全体を統括するマネージャー・阿部幸太氏、CS部の運営管理リーダー・菅原亜実氏にお話を伺いました。

急成長とともに進化するCX組織 体制の構築はスピードと成長重視で

-SODAが立ち上がって7年。サービスの規模は急成長を遂げてきています。CXの体制はどのように構築してきたのでしょうか?

菅原:お客さま体験の向上とサービスの成長を最優先に考え、スピード感を持って今の体制を構築してきました。

CX部門は主に以下の3部署で構成されています。

カスタマーサービス(CS)

物流(Logistics)

鑑定

阿部はCS全体を見ており、私はCSの中の運営管理関係を見ています。

物流と鑑定は、豊洲のみ拠点を構えていますが、CSは、物流・鑑定と密に連携するため豊洲オフィスと、オペレーションを推進している仙台オフィスの2拠点で運営しています。

仙台に拠点がある理由は主に2つです。

1つは、サービスの急拡大に伴い、CSの体制を強化する必要がありました。豊洲の1拠点だとカバーできないと考え、オペレーションを中心に担うメンバーで構成される仙台拠点を立ち上げました。

2つ目は採用です。仙台はBPOの拠点、メガベンチャーのCS拠点が多く、CS人材が多いです。複数拠点でオペレーションを回すことを考えた際に採用は必須条件でした。仙台はこの要件も満たす場所だと判断しました。

阿部:私は豊洲、菅原は仙台で働いています。豊洲のCSには顧客体験の向上を目的とした施策の企画・推進を担うプロジェクト推進チームが存在します。このチームは、お客様からの問い合わせ内容を分析し、根本的な課題解決に向けて社内フローの見直しや改善提案を行っています。

最近ではプロジェクト推進チームのリードで、チャネルトークのAI機能「ALF」を顧客対応に導入しました。導入に際しては、対応品質の担保や有人対応との棲み分けについて慎重にテストを重ね、本格運用に至っています。

他にも、キャンセルとなった商品を出品者へ返送せずに倉庫で保管する仕組みや、キャンセル率を下げる施策を通じて、GMVの向上にも貢献しています。

-スタートアップの急成長フェーズに拠点を増やすと連携に不安もあったのではないでしょうか?

阿部:2拠点により運用が難しくなるリスクもありましたが、私も菅原も、前職で複数拠点のCS現場を経験しており、立ち上げ初期から施策を講じてきました。

たとえば、四半期ごとに東京・仙台合同で方針共有や振り返りの会議を実施。理念浸透が必要なタイミングでは、東京の経営陣に仙台を訪れてもらうなど、積極的に交流を図っています。

またミッションや方針はリーダー達と擦り合わせをしますが現場における業務推進は任せきれています。CSの軸は「速さ・品質・課題の根本解決へのフィードバック」。もちろん課題はゼロではありませんが、この方針が全員に共有され、ブレていないため、大きなトラブルは起きていません。

菅原:サービスの成長に合わせて、CS体制も強固な体制を作り上げてきました。ただ、CSとしてはまだやるべきことはあります。既存の業務を効率化し、採用も引き続き強化しながら新しいチャレンジに注力していく予定です。

CX投資に積極的な理由 安心してサービスを使ってもらうための重要な要素

-投資はかなり積極的に行なっている印象です。どのような考えでCXへ投資を行っているのでしょうか?

阿部:CtoCサービスは一般にも広く浸透してきましたが、BtoCと比べると、トラブルの発生が多いのも事実です。特にSNKRDUNKで取り扱っているモノは、高額で希少性の高いアイテムが多く、ユーザーが「安心して取引できるかどうか」が、サービス利用における重要な判断軸になります。

そのため、当社では商品鑑定・検品・配送といった一連の工程をすべて自社で担い、さらに取引の仲介役としてCSが介入することで、安心してサービスを利用できる体験を提供しています。

このような体制を構築し、継続的に改善を重ねていくためには、CXへの投資が不可欠です。CXにしっかりと資源を割くことで、「SNKRDUNKなら安心して取引できる」というブランドイメージが生まれ、それがユーザー数や取引額の増加にも直結しています。

これは私たちの部門だけでなく、SODA全体としても共通認識です。CS・物流・鑑定といったお客様接点を支える領域には、継続して投資していく方針が全社的に掲げられています。

菅原:当社の取引では、出品者と購入者が直接やりとりを行うことはありません。すべてのやりとりの間にCSチームが入ることで、期待値のズレや意思疎通の齟齬によって起こるトラブルを未然に防いでいます。こうした体制を整えているからこそ、ユーザーがストレスなくスムーズに取引できる環境が実現できているのだと感じています。

また、鑑定領域では最新のテクノロジーを積極的に導入しています。熟練の鑑定士による目視での外観確認だけではなく、X線や赤外線カメラ、マイクロスコープといった専門機材を用いて、商品の内部構造や染料の違いまで検査することで、高い鑑定精度を保っています。

阿部:鑑定精度の高さと、安心できるCS体制。この2つがあることで、「SNKRDUNKなら高額・希少なアイテムでも安心して売買できる」とユーザーに信頼していただける基盤が築かれていると実感しています。

「速さ・品質・課題解決」——3つの軸を支える社内体制

菅原:SNKRDUNKのCSチームでは、メンバーごとの1時間あたりのチャット対応件数や、対応の質を細かく分析しています。ただし、これは単に数字を追いかけるのが目的ではありません。あくまで「お客様の負担を軽減し、より良い体験を提供するための一つの手段」として、リーダーとメンバー間で丁寧にコミュニケーションを重ねています。

数値が低いからといって否定するのではなく、その背景や状況を把握し、最終的にお客様にどう向き合えているかを重視しています。

例えば、日ごとの問い合わせ件数を予測し、それに応じた人員配置を行うことで、シフトを考えています。対応予測件数は、メンバーごとの処理能力をもとに精密に算出しています。しかし、管理することは目的ではありません。お客様を待たせず、課題解決のお手伝いを円滑に対応する適切な人員配置を行うことが目的です。

阿部:私たちリーダー陣が常に意識しているのは、「数字を上げること」よりも「本質的な価値を追求すること」です。

四半期ごとに業務を止めて、CS全体で今期の注力テーマや方針を共有する機会を設けています。全体方針をチーム・個人レベルに落とし込み、段階的に共有していく文化を定着させてきました。この取り組みのおかげで、メンバーからも「マイクロマネジメントされている」という感覚はあまりないと思います。

菅原:品質面でも、対応チャットの一部をサンプル抽出してチェックし、改善が必要な点があれば即時フィードバック。課題解決そのものに加えて、「お客様に寄り添う姿勢」や「適切な言葉づかい」など、細やかなコミュニケーションスキルも評価軸としています。

加えて、根本的な課題解決に向けては、プロジェクト推進チームや他部署との連携が欠かせません。現場だけでは解決できない構造的な課題にも、横断的な視点から取り組んでいます。

こうした体制をさらに強化するためには既存業務の効率化は欠かせません。そのために今後はAIの活用による顧客対応にも積極的に取り組んでいます。

AIへの期待 さらなる進化を求めて

-AI対応は2024年からですね。運用してみて想定していた期待を超えていますか?

阿部:チャネルトークのAI機能「ALF」を、2024年11月から本格運用を開始しました。もともとチャネルトーク自体は以前から活用していました。AIはこれからの時代のスタンダードになると考えており、SODAとしてもAIの利活用を早急に検討していくために、ALFリリース直後からスピーディにテスト検証を行いました。

実際に導入してみたところ、お客様自身が適切な選択肢を選ぶシナリオ型Botと比べて、お客様自身が自身の悩みをチャットベースで質問された内容に回答してくれるため、有人への接続率が5%ほど低くなりました。ネガティブな声もないため、今後も活用の幅は広げていきたいと考えています。

菅原:私も阿部と同様、ALFには大きな可能性を感じています。ALFは、チャネルトーク内のドキュメント機能などに登録された情報をもとに回答を生成します。あえて「有人対応が適している内容」は登録せず、AIと人間の対応領域を明確に分けて運用しています。

現在、SNKRDUNKのFAQページはチャネルトークのドキュメント機能で作成しています。そのため、FAQページに載っていない質問はALFでも回答できません。逆に言えば、ALFが回答できなかった質問から「FAQに不足している情報」を洗い出すことができ、日々その改善に取り組んでいます。このサイクルが自然と回り始めているのは大きな収穫です。

阿部:今後は、チャネルトークとSODAの基幹システムを連携して、よりパーソナライズされた対応がALFでできるようになることを期待しています。たとえば、お客様の取引状況に応じた案内などがAIで可能になれば、ALFの価値はさらに高まるでしょう。

菅原:お客様対応だけでなく、社内業務の支援にもALFの活用を広げていきたいです。AIがどれだけ進化しても、感情的なケアが必要なシーンでは人間の対応が欠かせません。だからこそ、その有人対応部分にもAIを活用していく工夫が必要です。

たとえば、すでに導入されている「対応内容の要約機能」も非常に有用です。今後は、メンバーがALFに相談してメッセージ文を提案してもらったり、問い合わせの温度感に応じて優先順位を判断するような機能も期待しています。

阿部:もともとは「AIは社内支援向け」という印象が強かったのですが、思いのほかお客様対応でもうまく機能しました。今後は社内の業務効率化にもさらに役立てていきたいです。

CSの未来と、さらに広がるユーザーサポートの可能性

阿部:今後はより多くのお客さまにご利用いただけるよう、取り扱い商品のカテゴリを拡大していく予定です。それに伴い、チャット以外のサポートチャネルも必要になってくるかもしれません。

出品ガイドや発送方法などをわかりやすく説明するコンテンツも整備し、つまずきやすいポイントの解消に努めたいと考えています。

菅原:ALFの対応範囲が広がれば、CSの役割も変化します。将来的には、より“コンシェルジュ”に近い形でのサポートへと進化していくと考えています。

例えばスニーカーとトレカでは、ユーザーが求めるサポート内容も異なります。それぞれのニーズに合わせた対応ができるよう、今後も業務改善を進めていきたいです。

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