生成型AIエージェント「ALF」がお客様にあった化粧品のおすすめやキャンセルの代行対応まで
Marry • CX Team Leader / Biz-dev
10月 31日
創業から68年を迎えた高級化粧品メーカー株式会社アルビオンが運営する『ポール & ジョー公式オンラインストア』が、24時間顧客対応の課題を解決するためチャネルトークの生成型AIエージェント「ALF」を導入。予想以上の利用率で、AIの正答率は96%を記録。問い合わせ対応数増加と顧客満足度向上を実現しました。
PAUL & JOEはパリ発のファッションブランドです。ブランドのコスメはユニークなパッケージデザインや高品質な商品が高い評価を得ており、創業から68年を迎えた高級化粧品メーカーの株式会社アルビオンがライセンスを取得、製造し、国内外に販売しています。
コスメ業界のEC化率は僅か8.24%(※1)と低く、多くの企業がオンライン展開に苦戦する中、『PAUL & JOE』では、よくある質問をすぐに解決できる導線を構築することで、オンラインでも実店舗のような顧客体験を提供しています。
この度、さらなる顧客体験向上を目指し、24時間顧客対応を実現するため、チャネルトークのAIエージェント「ALF」を導入、正答率96%を記録しました。今回はPAUL & JOEでの「ALF」活用術を株式会社アルビオン 国際ブランド営業部 国内推販グループ グループ長の榊原さんに伺いました。
※1経済産業省「令和4年度 電子商取引に関する市場調査」より
榊原さん:私たちのオンラインストアでは、営業時間外の顧客対応が大きな課題でした。特に夜間や早朝に、SNSや広告を見てブランドに興味を持ったお客さまからの問い合わせが多かったです。商品の質問や注文変更など、すぐに対応が必要なケースも増えていました。
しかし、有人チャットだけではスタッフの稼働時間に限界があり、お客さまが困ったときにすぐに解決できないことで、購入意欲が低下するリスクがありました。そこで、24時間対応を実現するため、チャネルトークの生成型AIエージェント「ALF」の導入を決めました。
榊原さん:ネットショッピングでは「ちょっと聞きたいことがあっても回答が来るまでに熱が冷めてしまう…」そんな経験は多くの方がしていると思います。私たちは、営業時間外でも素早く回答をお届けすることで、お客さまの購買意欲を維持したいと考えました。
AIを導入することで、24時間体制でのカスタマーサポートが可能になります。お客さまが疑問を持った瞬間に対応できれば、リアルタイムな購買決定をサポートできると期待しました。
また、AIと人間の役割分担も重要だと考えています。よくある質問や標準的な対応はAIが自動で処理し、複雑なケースは人間が対応すれば、スタッフの負担を減らしつつ、顧客対応の質も向上させられると思ったのです。
榊原さん:実は導入前のスタッフミーティングでは、懐疑的な意見が多くありました。「うちのお客さまはAIにコスメのことは聞かないですよ」とか「AIチャットボットでいい体験をしたことがない」という声が上がりました。正直、大きな期待は持てていませんでした。
ところが、蓋を開けてみると予想外の展開になったんです。昼夜問わず、多くのお客さまがAIを積極的に利用してくださいました。そして驚いたことに、人間のスタッフが対応可能な昼間でも、AIが選ばれる傾向が強かったんです。
榊原さん:これは私の推測ですが、AIなら「早く回答が来そう」という期待感があったのではないでしょうか。また、人間のスタッフに話しかけるよりも心理的なハードルが低く、「とりあえずAIに聞いてみよう」という気軽さがあったのかもしれません。
ただ、導入初期はAIの正答率が24%と低く、スタッフから「AIはダメだ」という声も上がりました。しかし「新人と同じで育てる必要がある」と考え、AIの教育(チューニング)に力を入れました。スタッフによる継続的な改善と、AIが提供する情報の正確性を常にチェックし続けることで、3週間ほどで正答率が96%まで上がったんです。
榊原さん:チャネルトークの生成型AIエージェント「ALF」は、「ドキュメント」と「FAQ」というチャネルトーク内のコンテンツ管理機能から回答を探します。つまり、この2つのコンテンツを充実させることで、正しい回答を素早く提供することが可能です。
さらに、「ALF」はこれらのコンテンツ以外からは情報を探さないため的外れな回答をすることはありません。また回答できない質問がある場合は「ドキュメント」と「FAQ」に情報を追加することで、次回から回答可能になります。
また、弊社ではスムースな顧客体験を実現するために、注文キャンセルと配送先の変更も「ALF」を活用しています。拡張機能である「コマンド機能」(※2)を活用することで、「ALF」が注文キャンセルや配送先の変更、注文履歴の確認を自動で行っています。
PAUL&JOEでは、全体の問い合わせのうち約3割が商品に関する問い合わせです。
「ドキュメント」へ情報を追加することで、「ALF」が商品に関する質問にも対応できるようになります。現在は、外部ツールで作ったヘルプページをチャネルトークの「ドキュメント」に取り込むことができ、短時間で「ドキュメント」を充実させることが可能です。
Tips!
同一の問い合わせに対しても、お客さまによって表現が違う場合があります。 例えば、PAUL&JOEでは、チークのことを「ブラッシュ」と表現しますが、お客さまからは「チーク」と質問される場合もあります。「ドキュメント」を作成する際に、「ブラッシュ」「チーク」の両方の表現を記載することで、「ALF」はより正確に質問を判断して回答を行います。
「コマンド機能」とは、スラッシュ(/)を入力し、注文キャンセル・発送日の確認・注文履歴の確認など、特定の作業を実行する機能です。お客さまが問い合わせを通じて「コマンド」を実行すると、インストールしたアプリ内に内蔵された機能が作動します。
生成型AIエージェント「ALF」を組み合わせることで、お客さまが自然言語で入力をしても、まるでオペレーターと話しているような自然な言葉遣いで、最適なアクションや回答を自動で行うことができます。
※2現在、「コマンド機能」は『Shopify』と『LOGILESS』をご利用のお客さまのみご利用いただけます。 ご興味ある方は、チャネルトークまでご連絡ください!
榊原さん:まず、問い合わせ対応の効率化と最適化が両立できました。AI導入前は有人チャットで1日30件ほど対応していましたが、導入後はAIが1日15件、有人対応が23件と、全体の対応数が増えました。AIが補完的に機能することで、より多くのお客さまをサポートできるようになったのです。
また、顧客満足度も向上しました。特に夜間や早朝の問い合わせにおいて、即座に回答が得られるようになったことが好評でした。「とりあえずAIに聞いてみる」という利用パターンが浸透し、購買につながるケースも増えています。
さらに、月平均200件弱あるキャンセル対応の大部分をAIが処理できるようになり、非常に効果的であると考えています。「ALF」導入後、1ヶ月で143件のキャンセルに対応し、オペレーションの効率化にも貢献しています。
榊原さん:私たちは、お客さまにサイト上で快適に過ごしていただき、ブランドをより好きになっていただきたいと常に考えています。AIの導入により、「とりあえずAIなら聞いてみたい」「回答を今すぐ欲しい」というお客さまの気持ちにも応えられるようになりました。
今後は、AIの対応範囲をさらに拡大し、より高度でパーソナライズされた接客を目指しています。技術を単なる「効率化」のツールではなく、「お客さまのため」に活用することで、より大きな安心とご満足をお届けしていきたいと考えています。
PAUL&JOEでは2023年からチャネルトークを導入、強みである1to1接客をECでも実現した方法についてこちらの記事で紹介しています!ぜひあわせてご覧ください!