Marry • CX Team Leader / Biz-dev
アパレル ジュンのECサイト「J'aDoRe JUN ONLINE(ジャドールジュンオンライン)、以下 ジュン」にてチャット接客を行い、転換率は実店舗並みの40%を誇ります。さらに、利用者から「すごいサービス」と評価があがり、アンケート調査では満足率が85%に達しています。 ECサイトでの買い物について、サイズ感やコーディネイトに悩み、実店舗のようなスムーズな購入が難しいなか、「チャットでこんなに親密に相談に乗ってもらえると思わなかった」「コーディネートを提案してもらえて安心して購入できた」と多くのお客さまから支持されているジュンのチャット接客。
ここまでお客さまに喜ばれる接客を実現出来ている理由として、アパレル不況と言われる中でも耐えられる筋肉質経営を目指し、“顧客にフォーカス”しているからです。そしてその顧客の行動を理解した上での顧客体験向上こそが、ブランドのお得意さんを作る上で重要だと語っています。今回は、ジュンEC事業部 情報システム室ロジスティクス部 取締役執行役員 中嶋さんから、ジュンが取り組むチャット接客についてご紹介いただきました。
ジュンEC事業部 情報システム室ロジスティクス部 取締役執行役員 中嶋さん
ーーアパレル業界が厳しい状況にあると言われていますが、どのように市場を捉えられていますか?またジュンではどのようにこの危機を乗り越えようとしていますか?
アパレル業界の動向として、供給が需要より上回っていることに加え、日本の人口が減少傾向にあることから、今後さらにアパレルの市場規模はシュリンクしていきます。その中でも今アパレルが直面している問題は、モノを作りすぎて値引きしてでも販売せざるを得ない状況であることです。
われわれもシーズンエンドにセールで在庫を売り切ることを前提に生産をしてきたのですが、そのやり方から方向転換しつつあります。企業が筋肉質な体質になり正規価格で売り切っていくことで、商品価値を毀損せず、利益体質になります。そのためには、チャネルを超えたお客さまとの接点作りや接客を通して一人一人をお得意さまにすること、ECでも店舗でも同じサービスが受けられることが重要になります。
ーー実店舗同様のサービスをECでも受けられるようにしてきたことで、お得意さんがさらに増えているジュンですが、その中でもチャット接客に注力している理由はなぜでしょうか?
お客さまのために、店舗でもECでも、境のない快適な買い物ができるようにしないといけません。われわれはこの時代を乗り越える利益志向の筋肉質経営とそれを支える顧客基盤作りを目標としています。買い手と一期一会の関係ではなく、顧客基盤を厚くするために考えるべきなのは、まさに「顧客」です。その顧客の行動がオムニチャネル化しているため、OMO(= Online Merges with Offline)戦略を強化しています。
ジュンが掲げるOMO戦略「ECと実店舗の体験をイコールに」では、①情報のOMO ②在庫のOMO ③接客のOMOといった3つの戦略があります。情報や在庫のOMOはすでに実装済みですが、今は差別化のために「接客のOMO」に力を入れています。そもそもお客さまを理解し、ニーズを把握して商品作りをしないといけないことからも、接客のOMOはとても重要です。
ーー接客のOMOが、筋肉質経営に近づく手段の一つになるのですね!
また接客のOMOを行うことで、上記のメリットだけに止まらず、実店舗並みの購買転換率に繋がります。一般的にECの転換率は1%と言われているなかで、ジュンの40%という数字はとても優秀です。一般の実店舗でさえもアパレルの購買率は30%前後と言われているので、実店舗と同じくらいの転換率になっています。そして、実店舗並みの転換率を目指す上で重要になってくるのが、お客さまの期待値を超える体験を提供することです。今はまだ、きめ細やかな接客ができるECは多くありません。だからこそ、今から接客を通してお客さまに感動を与え、ファンやお得意さんを作っていくことが、我々が掲げる筋肉質経営に繋がると思っています。
ーー満足度85%という質の高いチャット接客を行われていますが、具体的にはどのように運用していますか?
ECのお客さま対応で重要なことは、有人で対応すべき問い合わせに丁寧&スピーディーに対応することです。ジュンでは、有人で対応すべき問い合わせに関しては、初動時間を1分以内に維持できるようにしています。実店舗で店員に声をかけたのに、数十分後に対応されたら、体験として良くありませんよね。だからこそ、初動時間を早めるというのは、当たり前にやるべきことなんです。
このようにスピーディーな対応を行う上で、自動で解決できる問い合わせはチャットbotなどを使って効率よく解決していくことがポイントです。チャネルトークのチャットbotを使うことで、再入荷や配送に関するよくある問い合わせを自動的に対応することができるようになっています。今まで全部人が一つ一つ返信しなければならなかったのが、よくある問い合わせの70%を自動で解決できるようになったので、お客さまをお待たせすることも減り、購買やお得意さん作りにつながる問い合わせに集中できるようになりました。
よくある問い合わせをチャットbotで自動解決
また、チャット対応時間も10時〜22時で運営しています。ECの訪問者数が多いのは、日中よりも夜の時間帯です。その時間にお客さまが買い物をしやすくするために、シフト制をとって販売員を配置するようにしています。
ーー感動接客を行うには、いわば選択と集中が大事ということですね。ECは実店舗と違って情報量が少ない中で、お客さまの満足度を高めるために行っていることはありますか?
ECは基本的に、画像・テキスト・動画の3つでしかコミュニケーションできません。だからこそ、その質を徹底的に高める必要があります。店舗にいった際に接客を受けなくてもお客さま自身が商品を手に取り、「これってこういう商品なんだな」と実感できるはずです。それをECでもできるようにする必要があります。これがベースにあって、その次のステップとして、ご自身だけで商品を選ぶことが難しい方に「このようにコーディネートするとより良く見えますよ」といった感じに、お客さまの好みに合わせてアドバイスすることで実店舗のような体験が得られます。
ジュンの行う丁寧なチャット接客
そうすることでお客さまに感動を与えることができ、実際に「オンラインでここまで丁寧にコーディネートの相談に乗ってもらえると思わなかった。また相談したい」といった声が寄せられています。チャット接客を行うことで、サイトとしての価値を上げる一因にもなります。
チャット接客でWCSがコラージュする画像のイメージ
ーー実店舗以上にお客さまのことを理解できる力が求められそうですが、ジュンではどのようなバッググラウンドを持っている方がチャット接客を行っていますか?
接客するのは販売員を経験したベテランスタッフが中心となり、15名が専属でフルリモートで働いています。長年、店舗で接客を経験してきたものの、旦那さんの転勤で引っ越さなければならず、そこには自分の所属するブランドの店舗がなかったり、産休が空けてフルタイムで店舗に立つことが難しいママさんが多いです。スキルは高いのに、実店舗に立てないという理由だけで活躍できる場所が失われていたスタッフにリモートで働ける環境を提供し、新たな働き方を創出することができています。
またベテランを起用している理由としては、ECの特性上、対面せずにニーズを的確に汲み取るスキルが必要になり、そのためには接客経験が重要だからです。また今までの経験に合わせ、教育も大事になってきますが、チャネルトークの場合、全員が一つの管理画面に入って他のメンバーの接客を見ることもできるからこそ、他のメンバーがどのように受け答えしたり提案をしたりしているのかを見ることができるので学べる機会が自然に生まれています。リアルタイムで他のメンバーの接客を見ることができるので、フルリモートであっても「孤独じゃない」「一緒に頑張っている姿が見えるから楽しい」といった声も上がっており、チャット接客によってモチベーションも上がっています。
さらに、実店舗同等の知識や最新のトレンドをキャッチアップするために、週に一度近隣の店舗に赴き、実際に手に取って商品を確認したり、各ブランドの商品説明会や最新のトレンド研修に参加したりしています。そうすることで、トレンドを把握した上でコーディネート提案できるようになったり、商品を手に取って確認することで、具体的な説明をすることができるようになります。
ーー質の高い接客を行っているからこそ、接客からの購買転換率が40%と高いジュンですが、転換率を高めるために見ている指標はありますか?
そもそも、チャット接客の目的は売ることではなく、お客さまの悩みを解決してお得意さんになっていただくことです。チャットで見る指標はコンバージョン率(Conversion Rate、CVR)ではなく、何件相談を受けたか、接客後アンケートでどれだけグッドコメントをもらえたか、お客さまをお待たせしなかったかという満足度につながるものだけです。絶対ECでコンバージョンさせなきゃいけないとなると、それは顧客起点ではなくなってしまいます。店舗とECを行き来しながら、快適にお買い物していただくことが重要なので、目先のCVRは追わず、いかにお得意さん(ファン)を作れているかというところにフォーカスします。
ーーだから、満足度85%という結果になっているんですね!お得意さんを増やすという観点で行っていることはありますか?
お得意さんを作っていくには、お客さまを理解して対応することが重要です。チャネルトークの場合、過去の問い合わせや顧客情報が見えるので、新規のお客さまなのか、お得意さんであるのかを判別しながら接客することができます。チャネルトークを導入する前にもチャットツールを使っていましたが、顧客を判別することができないため、一期一会になってしまい、次に繋がりませんでした。しかしチャネルトークを使うことで、お得意さんに声がけを行えるようになったり、新商品の提案も気軽に行えるようになり、お客さまとの継続的なコミュニケーションを実現することができました。
顧客情報を確認しながらシームレスな対応を行う
過去の問い合わせ履歴や、サイト内で訪問したページを一目で把握することが可能
ーーWCSの方は接客を通して得られたVOCをどのように、サービス・EC改善に繋げていますか?
WCSのメンバーが毎日日報を共有してくれます。その中には、ECの改善案も出ていて、販売員が指摘したEC上の情報抜けや画像の変更点などは翌日にはサイトに反映するのがルールになっており、顧客起点のPDCAを回すことができています。一般的なサイト改善はABテストなどを行うことから時間がかかったり、社員も毎日サイトを見ているとそれに慣れてしまい、顧客の立場としてサイトを判断することが難しくなってきます。しかし、日々お客さまと対話しているメンバーは、お客さまがどのようなポイントで悩んだのか、どのようにUX/UIを改善すべきなのかを常に共有してくれます。お客様から言っていただけることをストレートにどう改善していくかを考えていくことがチャンスにつながります。
もちろん、ECサイトを分析するツールなどはありますが、それは定量的な指標しかみることができません。一つの商品を購入するにしても、その前段階でどの商品と比較してどのようなポイントで選んでくださったのかといった定性的な情報を常にWCSが社内に共有してくれるので、圧倒的にEC改善のスピードが早まりました。
ーー今後はどのようなことに取り組んでいきたいですか?
今後は百貨店の外商のように、顧客にパーソナルに寄り添うサービスをやりたいと考えています。弊社だけで購入してもらうためには“ここでしか得られない”という体験価値がないといけません。そういった質の高いサービスを非対面で提供するには、データが重要です。趣味趣向性が分析されていることで、確実な提案ができるようになります。そのためにもチャネルトークをさらに活用しながらデータやお客さまの声を集めていきたいです。