アパレル飽和時代、創業2年で年商8.5億円ブランド「nairo」の“差別化戦略”

Channel Talk

4月 27日

  • 活用事例

Instagramでフォロワー16万人を誇るブランドディレクターりぃさんの発信力と揺るがない製品コンセプトで創業2年目にして売上8.5億円を達成している女性アパレルブランド「nairo」。 一般的にインフルエンサーブランドは終わった、アパレルは競争が激しく生き残りにくいという声も多くありますが、それでもnairoが成長し続ける理由は“差別化”にありました。

創業初期には失敗も多く、ピボットも経験したnairoが、どのように現在まで成長したかを代表の杉山さん、ディレクターのりぃさんにお伺いしました。

左:ディレクター りぃさん、右:代表 杉山さん

アパレル飽和時代において、生き残るブランドに欠かせないリアリティと顧客とのコミュニケーション

――根強いファンが多く、海外も視野に入れての規模に広がろうとしているnairoですが、創業当初は失敗もあったとか?

りぃさん:創業当初は海外の既製品を取り扱っていました。既製品では自分たちの強みが活かせないと気づきました。私は151㎝の低身長のため既製品だとサイズが合わなかったんです。元々「背が低くてもスタイルよく見せる」「低身長はコンプレックスじゃなくてアイデンティティだよ」と伝えたくてInstagramで発信していました。そこで、低身長の方向けに、ゼロから洋服作りをすることに振り切りました。今は全てオリジナルの製品を展開しています。

杉山さん:既製服のときはいくら検品をかけても、お客さまが着たときにボタンが外れたなどのクレームがありました。製品のクオリティに妥協があったんですね。失敗を教訓にして、今では本当に自信があるものしか販売しないように心掛けています。 ――低身長に振り切ったことで不安があったり、売上が伸び悩んで辛い時期もあったかと思いますが、どのように乗り越えましたか?

杉山さん:たしかに最初は不安しかありませんでした(笑)。しかし、当初から意識していたのは他のインフルエンサーブランドとの差別化です。洋服という切り口で考えると、生地や生産場所は大きく変わらないのでそこで差別化することが難しいです。だからこそ、お客さまのためになるコンテンツこそが、差別化に繋がると考えていました。テレビでもYouTubeでも、ユーザーが興味があるものは離脱されませんよね。同じ洋服でも「どうやったらよく見えるか?」とかお客さまの気持ちに立っていろんなアプローチを試したりとか、常に研究していました。りぃは良い意味で、ファッションやビジネスを体系的に学んでない分、純粋に作りたいものを自由に表現して、お客さんのニーズを的確に捉えられるんです。ほぼ毎日Instagramで投稿を続けており、コメントには全て目を通しては、お客さんが求めていることを明確にして、それをブログやSNSのコンテンツにしていきました。ダイレクトで毎日お客さんの反応を見ていたからこそ、「工夫をし続ければお客さまがついてきてくださる」と信じながら、売れない時期を持ち堪えられたと思います。

▲お客さまの声をコンテンツ化

ーー毎日お客さんとコミュニケーションを取られたのですね!もし今、売上が伸び悩んでる事業者様にアドバイスするとしたら、どうですか?

杉山さん:多くのブランドはお客さまの顔を見ているようで見ていない気がします。事業なのでもちろん売上や利益は大事ですが、事業者目線だけに囚われるとお客さまの顔が見えなくなりがちです。りぃの強みはたくさんのフォロワーと密にコミュニケーションがとれるところですね。私が事業者側、りぃがお客さま側で意見が対立する場合もあります。私が見えないところを彼女が見て、逆に彼女が見えないところを私が見るので、持ちつ持たれつで今のところ順調にいっているのかもしれません。今も続けてはいますが、とにかく初期はお客さまはどのような方なのか、何を求めているのかを毎日SNSなどを通してコミュニケーションをとっていきながら、それを社内に随時共有していくことが重要です。初期の頃は、りぃのアカウントに届いたお客さんからのDMやコメントを全てスクショして、全員で見ていました。

ーー毎日お客さんとコミュニケーションを取るというのは、インフルエンサーだからこそできる強みでもありますよね。しかし今は、誰でもインフルエンサーになれる時代で、ファンと繋がってブランドを持てる人もいれば、持てないままで終わる人もいます。その違いはどこにあると思いますか?

りぃさん:そもそもブランドを立ち上げようとした背景として、フォロワーが5万人になったときに、何か恩返ししたいと思ったのがきっかけです。何をしたらフォロワーにとって素敵な体験になるのかと思って始めました。「お客さまにどうなってもらいたいか?」というビジョンを持っていることが愛されるブランドになる秘訣だと思います。

杉山さん:私はリアリティだと思います。インフルエンサーでブランドを持っている人もいますが、自分のブランドを着ているイメージがないんですね。売れてしまえばしまうほど違う方向へ行く気がします。りぃの場合、nairoの服が誰よりも好きなので、自分の作った服を自信を持って着ています。「本当に着ているのか」「好きなのか」フォロワーは見透かします。裏表なしでやっているからこそ、今も継続できていると感じています。

“お得意さん”を増やすためのnairoならでは自社ECへのこだわり

――自社ECだけで年商8.5億円を創出されているとのことですが、モールには出店されていないのでしょうか?

杉山さん:nairoでは、モールに出店はしていません。実はnairoとは別事業で大手アパレルモールで販売していた経験があるのですが、大手アパレルモールで販売している商品を購入されるお客様は「ブランド」と認識して購入しない傾向が強いことがわかりました。特に値段が安いブランドであればあるほどこの現象は顕著でした。 「このブランドのシャツが好きだから買う」ではなく、「安心できる大手モールで安くシャツが売っているから買う」という消費者側の心理が見えたので、折角、自分達が自信を持って販売していても「ブランド」として認識して貰えないことが非常に残念でした。そして、自分達が自信を持って仕入れた服が翌週には、他社からデザインも似ている商品が安い値段で売られていることが常でした。資本力がないと勝てない世界だと痛感しました。

さらに、モールECは自分達が知りたいお客さまのリアルな情報を得ることができません。実際にご購入頂いているお客さまの顔が見えない状態でブランドを成長させることは難しいです。だからこそ、プラットフォームに依存することなく、着実にお得意さん(ファン)を増やすことができる自社ECしかないと思っています。

ーー自社ECを運営することだけでなく、製品作りにもこだわったとか?

りぃさん:nairoでは、プロダクトづくりにもこだわっていて、お客さまの声を反映し、再販する際は、1cmの丈感の修正なども行います。「ウェストの幅はこの位がいい」などの細かいお声を反映させています。初期の頃から、お客さまの声と共に改良し続けている愛されている商品に「ワッシャープリーツスカート」があります。

▲nairoの定番商品「ワッシャープリーツスカート」

初期にはクリンクル加工で端の方にほつれがあるという声をいただきました。そこですぐに生産する工場を変更し、きれいに縫製するようにしました。雨の日に白い鞄に移染したという声もあって、全てリコールしたこともありましたが、生地や染料を変えて今では安心してお届けできるnairoの看板アイテムになっています。

杉山さん:ファーストサンプルが届いてから、修正指示もとても細かく出します。こだわりが強くThirdサンプルまで作ってもらうこともざらにあります。このように私たちは、自分たちが納得していない商品は売らないようにしています。だからこそ、このこだわりを理解してくださるお客さまから愛されているのだと思います。

ーーお客さまの声を誠実に製品作りに活かしていて、体験も良さそうですね!

杉山さん:とにかくお客さまの声がブランド運営に欠かせません。だからこそ、ECでももっとお客さんの声を拾っていく必要があると思い、チャット接客をチャネルトークで始めました。チャネルトークの場合、社員全員が管理画面に入ることができるので、私を始め全てのメンバーがお客さまの声を毎日見ることができます。自然と顧客理解も深まり、急成長するECに起きがちな顧客理解の不均等さをなくすことができています。

りぃさん:以前までは、私の個人アカウントに商品に関する質問がたくさん届いていて、社内に共有する際にスクショをとって展開する必要があったり、データとして管理しにくかったのですが、現在はチャットに問い合わせしてくださるようになり、お客さまの声を社内全員で把握しやすくなりました。 また、チャネルトークを使って担当制のオンライン接客も始めました。サブディレクターの「あお」が中心でやっているのですが、お客さまが「何に不安を感じているのか?」等、リアルなお声を頂く事が出来ています。

▲ディレクター自らチャット接客を行う

お客さまの声によって、私は、商品デザインやサイズ、CSはお客さまのECサイト上での悩み、社内全体としては、サービス面の改善・向上に役立っています。

お得意さんから実店舗より率直な感想を引き出す接客術

ーーnairoでは、なぜインフルエンサーやアパレルでの接客経験のあるメンバーをチャット接客担当者として起用しているのでしょうか?

杉山さん:お客さまのことを理解し、的確な提案ができるには接客スキルが必要だと判断し、アサインしています。また、高い接客力を通してお客さまに楽しんでお買い物をしていただくことができます。体験が良いことで、またECに来たくなったり、nairoのスタッフへの信頼も高まり、結果的にブランドへの好感度も上がります。

ーー実際、お客さまからお問い合わせが来た時に、どのようなフローで対応されているのでしょうか?

りぃさん:基本的に配送や決済に関する問い合わせに関しては、即返信を心がけています。コーディネート・サイズ感・素材等のお問い合わせは、オフィスでサンプルを確認し、担当者が着用した上で自信を持って返信するようにしています。

杉山さん:さらに、お問い合わせいただいたお客さまの注文情報はチャット対応をしている画面で確認できるため、一人ひとりの顧客情報を調べる手間もなくなり、効率的かつ正確に返答できるようになっています。

▲過去の注文履歴や、サイト内で訪問したページを一目で把握しながら対応することが可能(Shopifyとの連携により、注文履歴の情報が連携されます)

そして送料や再入荷・再販に関するようなよくある質問は、お客さま自身で自己解決できる導線としてチャットbotを活用しています。社内のみならずお客さまにとっても正確かつスピーディに対応できるようになりました。このチャットbotも初期設定のまま放置するのではなく、お客さまがどれくらいクリックしているのか、どこで離脱するのかがわかるのでそういった情報を元に改善を繰り返しました。

▲お客さまの自己解決力を高めるチャットbotの活用

また、チャネルトークではお客さまからのお問い合わせを一方的に受けるのではなく、こちらからお声がけ・接客することができるのが魅力的な点です。例えば、「予約会」で毎回お買い物をしていただいているお客さまに、「nairo」のことをどう思っているのか正直な意見を伺ったことがあります。店舗に来店されたお客さまに対面で接客をすると、実際に顔を合わせているため気を遣っていただきながらお話しいただくので率直な意見が伺いにくいのですが、チャネルトークでは顔が見えない分、実店舗以上にお客さまの本音を引き出しやすいですし、グッと距離を縮めることができたと感じています。

ーーチャネルトークを活用し、実際に得られたお客さまの本音や気づきにはどのようなものがありましたか?

りぃさん:実際に行った施策としては、購入頻度の高いお客さま向けに「どのような情報があると嬉しいですか?」というアンケートを行ったことがあります。当初はセール情報やキャンペーンといったご要望が多いと想定していました。しかし実際は、オリジナルノベルティ、ディレクターとの交流会、特別イベントに関する要望が寄せられました。ブランド側が考えて発信しようとしてた情報を、お客さまの声を元に変更したり、ブランドとしてお客さまにどういうイベントや情報を提供していけば良いのかが明確になりました。 またポップアップを開催する際に、事前に、ポップアップに来店されるか否かのアンケートを実施したこともあります。ポップアップに来られる日にち、ポップアップで楽しみにしていること、また来られない際の理由などについても聞くことができ、当日の運営や今後のポップアップ運営の参考にすることができました。

▲実際に行ったアンケートの一部

ーー最後に、今後の展開を聞かせていただけますか? 杉山さん:セール・クーポンなどは実施せずラグジュアリー路線はそのまま継続しながら、ライフスタイルブランドとして、扱う商品を広げていきたいと思っています。 りぃさん:現在は服が中心ですが、お客さまから鞄やアクセサリーも販売して欲しいというお声をいただいているので、最近では、アクセサリーのローンチも行いました。ありがたいことにすぐにSold outになるほど多くのお客さまからご期待頂いています。今後もお客さまの期待を超えていけるようなブランドにしていきたいと思います。さらに、国内ではまだ認知されていないけど、お客さまに喜ばれそうな国内外の素晴らしい商品などをセレクトという形で展開することを構想中です。

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