Marry • CX Team Leader / Biz-dev
10月 17日
コーヒー豆のサブスクリプションサービスを展開するPostCoffeeは2020年2月にローンチ後、順調に顧客数を伸ばし、現在の会員数は7.5万人。SNS上でのUGCが盛んなことでも有名であり、ローンチから2年で売上は450%に成長し、多くの熱狂的ファンから支持されています。
そんなPostCoffeeの成長の根幹は、UGCの生成、リピーター強化、離脱防止戦略の3つを同時に行なったことにありました。どのようにリピーターを増やしながら離脱を防止してきたのか、その戦略をどのように実現してきたのかを、代表の下村さん、CSの日置さん、築地さんにお話をお伺いしました。
ーー2020年から2022年の売上が450%増ということで、かなり急成長していますが、どのように顧客を増やしてきましたか?
下村さん:SNSでUGCが生成されるように継続的にアクションを行ってきました。新興サービスであったことや、弊社が扱っているスペシャルティーコーヒーの認知が低かったことから、まずは多くの人に試していただきたいと思い、様々な特典を訴求した広告を出稿していました。しかし、デジタル広告施策での訴求に限界を感じるようになりました。 広告業界は、出稿企業の増加に伴って、CPM(広告表示1000回当たりの費用)が高騰しており、顧客の獲得効率が下がっています。このような状況下で、広告だけに頼るのではなくオーガニックでもお客さまから購入いただける仕組み作りに注力することが重要だと考えました。
ーー広告による新規顧客獲得の難易度が上がったこと以外にもUGCにこだわる理由は何でしょうか?
下村さん:購買に至る態度変容を促せるのは、最終的にはUGCだと考えています。実際に、自分が本を買う際に、何をきっかけに購入するのかを考えてみたところ、X(旧:Twitter)等のSNSでシェアされているものを見た時でした。このような体験が多くあり、口コミ・UGCからの購買体験がとても重要だと思い注力するようになりました。
ーーただ、購買のプロセスにおいてUGCが重要な要素であることを認識しつつも、なかなかやり切れていない企業様も多い印象です。PostCoffeeが徹底してUGC施策にコミットし続ける背景には、しっかりと定量面での成果が出ていることがあるのですね。
下村さん:UGCから得られる定性の情報が、サービスや各施策の改善に欠かせないからです。各施策が本当に効いているのかどうかは、サイトのアナリティクスだけを見てもわからず、UGCを通じて見ないと分からないことも多くあります。実際の顧客の声を通して、定性的な情報を得ることがサービス開発・改善に欠かせません。
また、UGCがないブランドは世の中に存在していないのと同じだと考えてます。本当に良いと思うモノは誰かに伝えたいものです。良いと思ってもらえない、UGCが発生していないというのは、誰にも刺さっていない可能性があるので、ブランドの存続が危ぶまれます。
ーー具体的にどのような働きかけを通して、UGCを増やしましたか?
日置さん:UGCを絶やさないために定期的にキャンペーンを行っています。直近では、非売品であるスタッフ限定のPostCoffeeTシャツをプレゼントするキャンペーンを実施しました。 その結果、想定を超える多くの方が投稿をしてくださり、毎週プレゼントを差し上げるようになっています。このように、お客さんへ還元する形のUGCキャンペーンに取り組んでいます。
結果的に#postcoffeeのハッシュタグで検索すると、インスタグラムでは現在2.2万件のUGCが表示される状態を作れています。
築地さん:PostCoffeeに入社して驚いたことですが、弊社の企画の判断軸の中に常にUGCが入っています。通常であれば、売上や工数が重視されるかと思いますが、PostCoffeeでは常にUGCが判断軸に入っており、本当にUGCを大事にする会社なんだなと実感しました。 下村さん:私たちは創業当初から今まで、いわゆるマーケティングと言われるような活動は、一時的な広告以外はしていません。そういう形に会社の方針を変えたのも、お客さまに向き合ってプロダクトを作っていくことが重要だと再確認したからです。そのため、ユーザーインタビュー等、お客さまとのコミュニケーションを大事にしています。
日置さん:多い時だと、月に30件のインタビューを行ったりしていますね。
下村さん:今だからいえますが、初期にβ版のサービスをリリースした時は、ユーザーにハマらなかった時期がありました。その後ユーザーインタビューを徹底的に行いながら解像度を上げていったことから、ユーザーを理解する上でコミュニケーションが重要であることを実感しました。
ーーちなみに、β版と正式版で解像度はどのようにズレていたのですか?
下村さん:実は「美味しいコーヒーが顧客の身の回りにないこと」がお客さまのペインではなく「そもそも美味しいコーヒーを知らないのだから、まず出会いたい」というペインがあることに気づきました。さらに、美味しいコーヒーなのかわからないのに、100g〜200gといった一般的なコーヒーの多い販売量でしか買うことが出来ませんでした。それにより1杯目飲んだ時に「これじゃなかった」という失敗が負になっていることがわかり、少量から試せるような量で提供しています。
ーーだからこんなに顧客理解を大事にしてるんですね!
下村さん:サブスクのサービスで大事なのは、リピーターを作ることと離脱防止です。長期で愛用いただくには、UGCや実際の声を元に商品だけでなく、サービスを改善し続けることが重要だと思っています。お客さまの声を受けてサービスを改善しないのはバケツに穴が空いた状態を放置していることと同じだと考えています。そのような状態では新しいお客さまにも満足していただけません。そのため、注文からコーヒージャーニーを続けるまでの全体をプロダクトとして設計しています。
ーーユーザーインタビューでしか得られなかったインサイトを元にサービス改善したエピソードはありますか。
日置さん:たくさんありますが、その中でもコーヒー豆の分量をわかりやすくするためのコンテンツ作りに繋がったエピソードがあります。コーヒーは豆の分量がとても重要なのですが、私たちが想定してた10分の1の量しか入れてない方がいて、「なんか味がいつも薄いんだよね」という声をいただきました。それまでもレシピなどは送付していたのですが、さらに分量がわかりやすいように、「目分量サポート」という案内を同包するようにしました。実際にお客さまからもわかりやすいと仰っていただき、この取り組みがお客さんのためになることもわかりました。
ーーお客さまを大事に考え、成長してきたとのことですが、そんな中でどのような悩みがありましたか?
下村さん:とにかくお客さまに迷惑をかけない問い合わせ対応の仕組みを探しており、その先で「接客に注力できれば……」と思っていました。実は以前は問い合わせの90%がエラーに関する問い合わせで、接客に注力できていませんでした。その中で、チャネルトークを知り、これだ!って思いましたね。チャネルトークならば問い合わせ対応と管理を一つでできる他、よくある問い合わせは自動化させ、さらには問い合わせの傾向を定量的に管理できます。CSの問い合わせ状況のみならずサービスの改善ポイントも抽出しやすくなりました。
日置さん:これは弊社の活用Tipsになりますが、チャネルトークのタグ機能は3段階で設定や色分けができるので、重要度に応じて、タグ分けをし、問い合わせを見た時にどれくらい緊急度・重要度の高いものなのかを瞬時に察知することができるようにしています。 そして、毎日始業時に、「今日は何の問い合わせが多いのか」タグを見ながら確認するので、「今このエラーが発生しているかもしれない」といったように、バグやエラーを発見するスピードも上がりました。実際にエラーが減ったことで、問い合わせの50%が味やサービスといった購入に繋がる問い合わせになりました。
築地さん:また、自分たちが見やすい、分類しやすいというのはもちろん、それを元に各部署に「どんな問い合わせや要望がどれぐらいきているのか」をすぐに共有できるようになりました。その結果、お客さまの声を元に会社全体が動けるようになりました。開発にしても、サービス改善にしても、定量、定性両方の観点で優先順位をつけられるようになりましたね。
ーー顧客の声を可視化していったことで、反映した施策などはありますか?
日置さん:多くのお客さまから、「好みの変更がしたい」という要望がチャット経由で多く寄せられました。そこで、マイページにご自身でコーヒータイプを変えられる仕様にサービスの改善を行いました。
そして、解約導線の中にも、好みの変更ができるようチャットbotを設置したところ、400件ほどの解約防止を行うことができました。「次の月は、浅煎りにしてみたい」「深煎りも試してみたい」と気軽に、自由に購入いただけるようになったため、解約防止にもつながり良かったと思います。 運用していく中で、ニーズが高く解約防止にもつながることがわかったので、ログイン画面からタイプ変更できるように本格的にシステム開発をしました。
サービス改善も相まって、購入前の相談が40%増加しました。結果、お客さまが相談を通してご購入いただいたりサブスクに登録してくれるというのはもちろん、お客さまの好みがわかるようになってきました。
ーー最後に、今後取り組んでいきたいことを教えてください
下村さん:より実店舗に近い形での接客を実現することです。オンラインバリスタを実現し、お客さんがよりPostCoffeeを楽しんでもらえる世界にしたいと考えています。もっとお客さんに喜んでもらいたいので、今後私(代表)含めて全員でオンライン接客に取り組み始めました。お客さまのリアルな声を日々目の当たりにすることができるので、やって良かったと思います。
日置さん:さらに、一度PostCoffeeを体験していただいた方は満足していただけるようになってきたので、新規の方にちゃんとアプローチしたいですね。具体的にはサイトに2回目訪問された方へのアプローチを強化したいです。チャネルトークであれば、訪問回数に合わせて自動で声掛けもできるので、そこからコミュニケーションに繋げたりして、楽しんでもらいたいです。