お客様はともに歩む“仲間”。登山人口が減少する中でも平均売上推移225%で成長し続けるYAMAP STOREの取り組み

Marry • CX Team Leader / Biz-dev

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登山人口の約50%が利用しているアプリとして、累計370万ダウンロードを突破し、MAUは66万人に達している国内シェアナンバーワンの登山地図GPSアプリ「YAMAP(ヤマップ)」。 そんなYAMAPを運営している株式会社ヤマップは、2019年からセレクトオンラインストア「YAMAP STORE」を立ち上げ、2020年以降の平均売上推移は約225%という成長を遂げています。 そこで今回は、成長し続けるYAMAP STOREの顧客体験の要であるCXに関して、CXリーダーの津本さんからお話をお伺いしました。

▲YAMAP STORE

YAMAP STOREが自社製品の開発に取り組み、成長してきた根幹には、“ユーザーの声”があった

ーーYAMAPでは様々な事業を展開されていますが、その中でも「YAMAP STORE」の立ち位置を教えてください。

YAMAPのパーパスは、「地球とつながるよろこび。」です。人と地球環境がともに豊かになる世界の実現のため、国内No.1の登山ユーザー数を誇るYAMAPアプリのコミュニティを中心に、登山・アウトドアに関する「コミュニティ」、「読みもの(コンテンツ)」、「オンラインストア」などの事業を展開しています。

出典:

その中でもYAMAP STOREのコンセプトは、「私たちが本当に良いと思った商品を取り扱うセレクトオンラインストア」です。YAMAP STOREには、社員やユーザーさんの声を反映した商品が揃っています。YAMAPアプリに集まる活動日記や行動データ、商品アンケートやユーザーさんとの交流会、日々のチャット接客など、さまざまなチャネルからヒントを得て、商品のセレクトや開発に生かしています。

ーーYAMAP STORE立ち上げ当初は、セレクトメインだったと思いますが、自社製品を展開し始めた理由はなぜでしょうか?

YAMAPはこれまで、ユーザーさんに寄り添い続けて成長してきました。また、YAMAPの社員も山好きの一人のユーザーとして事業に向き合う中で、「登山に関する悩みを解決したい」「もっとこうすれば山登りの体験が良くなる」といった思いの蓄積が明確にありました。そんな私たちだからこそ、登山中の悩みの解決につながる商品を作ることができると思い、自社製品を展開し始めるようになりました。

登山は、時には厳しい自然環境の中で行われることから、命に関わるアクティビティでもあります。ウエアひとつをとっても、運動時の快適性を保つ、低体温症を防ぐなどと重要な役割があります。山道具の信頼性はとても重要であり、自信を持ってお届けできる商品をご紹介するようにしています。

既製品でも素晴らしい製品はたくさんありますが、YAMAPだからこそ得られるユーザーさんの声を元に商品企画・開発を行なっており、現在では月間売上げの約30%を、コラボやオリジナル製品が占めるようになっています。 ーーユーザーの声に向き合いながら、自社開発のオリジナル製品の売り上げを伸ばしてきたとのことですが、日々どのようにユーザーの声を集めているのでしょうか?

先ほどもお伝えした、商品アンケートやユーザ交流会の他、現在はユーザーインタビューを強化しています。直近では、月に10名の方にインタビューを行いました。また、オリジナル商品をご購入くださった方には、購入から一定期間が経過するとアンケートの配信を行ない、使用感や改善点を伺っています。

YAMAP STOREでは、頂いたご意見を次シーズンの商品や商品ページに反映して、実際に改善しています。アンケートはいつも短期間の実施ですが、たくさんの方にご回答いただいており、多い時だとひとつの商品に対して100件以上の声が集まります。自分の声が実際に次の商品に反映される、というYAMAPならではのコミュニティ意識があるからこそ、ユーザーさんからの声がたくさん集まっていると実感しています。オリジナル商品のリピート率は高い商品で約70%ほどと、今では多くのユーザーさんにご愛顧いただけるまでになりました。

また、商品開発を行う際にはYAMAPユーザー約4,700人にアンケートを行ったこともありました。「メリノウール」というアウトドア商品によく取り入れられている素材についてのアンケートでしたが、使わない人にも使わない理由を聞き、不安を払拭するコンテンツや、その声を元にした商品開発を行いました。

ーー自分の声が商品にしっかり反映される体験をすることで、ブランドへの信頼にも繋がりますよね。

YAMAP全体として、ユーザーさんは“お客様”というよりも、一緒にサービスをつくっている“仲間”と捉えています。「仲間が困っているなら助けたい」「一緒に山登りしている人の声は大事にしたい」という思いがあって動いてきたからこそ、ユーザーさんに支持され、結果として大きく成長することができました。 ユーザーさんの声に耳を傾け、ユーザーさんを巻き込みながら運営していくことがYAMAP STOREの成長には欠かせないのです。

守りのCSから攻めのCXへ YAMAP STOREが取り組んだ3つのこと

ーー事業を伸ばすべく、守りのCSから攻めのCXに変革が必要だったと伺ってますが、YAMAP STOREが考える“攻めのCX”とはなんでしょうか?

一般的なEC・ネット通販でのCSは、お客様の質問に答えたり、お買い物のサポートを行うことで、お買い物の満足度を向上させ、ひいては売り上げにつなげていくという目的が強いですよね。

しかしYAMAPのパーパスは「地球とつながるよろこび。」です。山道具を通じて、ユーザーのアウトドア体験をサポートするという目的があるので、登山の実体験があったり、実際に山道具を手にとって自分で使用しているメンバーが、知見をもとに提案・接客を行っています。

ユーザーさんの体験のためには、時にはおすすめの商品を「あえておすすめしない」という選択をすることもあります。以前、ユーザーさんから「雪山で使用するピッケルのサイズ選び」に関する相談がありました。問い合わせのやり取りの中で、このユーザーさんは雪山に関しては初心者だと判断することができました。YAMAP STOREには良い商品があり、サイズをご案内して接客を終えることも可能でしたが、その時はまず、雪山や道具選びの講習に参加してから購入することをおすすめしました。

▲実際のチャット接客の様子

雪山では夏の登山とは全く異なる道具やスキルが必要になります。雪崩などによる事故も起きやすく、最悪の場合、命を失うことにも繋がりかねません。売上が目的であれば、そのまま商品をおすすめするべきだったかもしれませんが、この時はユーザーさんの山での体験や、命を守ることを優先する接客を選びました。 ーー「ユーザーさんの命を預かる」という意識があるからこそ、ユーザーファーストの接客ができるのですね。

YAMAPアプリのCS業務では、山での遭難対応など人命に密接に関わる場面があります。関連して、YAMAP STOREのCX業務では、山道具を通じてユーザーさんの「楽しい」「快適」「安全」を守る大切さを日々意識しています。こうした事業の繋がりが、YAMAP SOTREの「攻めのCX」の軸になっています。 ーーこのような背景を考慮すると、質の高いCXが求められそうですが、YAMAPではCXやオンライン接客の質を高めるためにどのように取り組んできましたか?

以下の3つを意識するようにしました。 1. 初動は素早く、有人対応はしっかり時間をかけて回答チャット接客を表示する 2. ユーザー数を絞り、1日の問い合わせ対応件数を一人当たり15件以内に収める 3. 「CS経験者」よりも「ユーザーさんのアウトドア体験を支援できる人」を重視した担当者配置

お問合せに早く応対することは、チャット接客の満足度向上や、経由売上・CVRアップに明確に繋がると実感しています。実際に、多くの問い合わせが来て初動が遅れた時よりも、10分以内に対応できる体制で運用できた時は明確にCVRが上昇しました。YAMAP STOREのメンバーリソースは決して潤沢ではないため、常時サポートbotやフローの自動化を組み合わせています。その効果があって、チャット接客によるCVRは、25%〜30%と安定していることが大きな特徴です。

また、限られたメンバーで接客の品質をコントロールする必要があったため、チャットでの接客開始後、しばらくの期間は、問い合わせできる会員を全体の50%に限定していました。問い合わせの入口をを制限することには、ユーザさんに対して心苦しい気持ちもあったのですが、大事なお問い合わせ対応だからこそ質を担保すべく、このように取り組みました。

現在も、兼務メンバーは一人当たりの1日の対応件数を15件以内に、専任のメンバーに関しては30件以内に収められるように発信量をコントロールしています。あえて多くの問い合わせを処理することにKPIを置かずに、クオリティを大事にしていくことが、CXの土台を構築するために重要だと考えています。

そして、YAMAP STOREのCX業務担当者は、ほぼ全員が他の業務を兼任しており、もともとCS業務の経験者ではないメンバーで構成されています。先ほどもお伝えした通り、CS業務の経験よりも、アウトドアの実経験や山道具への関心の高さがユーザーさんに求められていると考えるためです。

CX・CSの経験がないメンバーでも、クオリティの高い接客ができるワケ

ーーCXの経験のない方でもクオリティの高い接客はできるのでしょうか?

チームには、リアル店舗での接客経験者、ECの運用経験者、WEBディレクターなどがいますが、どのメンバーも山が好きだったり登山に関する知見が豊富なので、それらを元に接客を行なっています。さらに、山道具が好きで自らたくさん購入しているメンバーもいて、全員が「自分がユーザーならどう思うのか」を考えて接客しています。

チャネルトークの場合は、ユーザーのサイト上での行動履歴や過去の注文情報・問い合わせ履歴をチャット対応画面で確認することができます。ユーザーが何を見ているのか、何を聞きたいのかの背景を把握できるので、シームレスな接客を実現出来ています。

▲サイト内で訪問したページを一目で把握しながら対応することが可能

ーー未経験の方が“接客”を行うことに不安はありませんでしたか?

最初は「ミスしないかな、自分の対応でクレームが来たらどうしよう」と心配していましたが、その心配はすぐになくなりました。もちろん注意するべきこともたくさんありますが、チャットでの接客は、対面でのコミュニケーションに近いため、接客経験のある人であれば入口のハードルは低く感じると思います。 従来のメール対応ではユーザーさんに「ありがとう」と言われる機会がほとんどありませんでしたが、チャットだと気軽にコミュニケーションができることもあり、ユーザーさんから「ありがとう」と言われる機会が増えて、メンバーのモチベーションにもつながっています。今ではメンバー全員がチャット接客を通して、ユーザーさんとのコミュニケーションを楽しんでいます。 ーーYAMAP STOREは拡大期にあり、最近も新たなメンバーが入社されたと伺ってますが、どのように質の高い接客を引き継いだり、オンボーディングを行なっているのでしょうか?

チャネルトークの使い方はそのものは1時間程度しかレクチャーしていないのですが、翌日からチャット対応を積極的に行ってもらい、すぐに実務に移行することができました。チャネルトークの場合、過去の問い合わせを全て見ることができるので、そこでどのように接客すれば良いのかを体得することができます。さらに検索機能も優秀で、キーワードを検索するだけで、過去にどんな商品の問い合わせがあり、どのように返答したのかを参考にすることができます。つきっきりでオンボーディングをしなくても、セルフオンボーディングができちゃうんです。既にあったたくさんの過去のお問い合わせの蓄積が、そのまま資料になったのでとても助かりました。

▲検索機能を活用し、セルフオンボーディングを行う様子

ーー蓄積されたやりとりを見て、YAMAPならではの質の高い接客を体得できるのはとても良いサイクルですね!質の高い接客を行っているからこそ、多くのユーザーさんの声が集まっていると思いますが、それらをどのように事業やサービス改善に活かしていますか?

例えば、サイズの問い合わせが多い際には、サイズを理由とする返品がどれくらい発生しているのかを確認し、ユーザーさんの声をコンテンツや商品ページを管理するチームに伝えつつ、CX担当者が実際の商品を計測し直して、サイト上の表記を改善しています。 また、故障の問い合わせが多かった商品に関しては、ユーザーさんの声を元に、メーカー側にフィードバックを行っています。オリジナル商品に関しては、ユーザーさんの声の傾向も隔週や月次など定期的に共有することから、より良い商品作りにつながっている実感があります。

エンジニアやバックヤードチームとも、デイリーで共有の場を持っており、YAMAP STOREのどの担当者も、週に1回以上はユーザーさんの声に接点がある状態です。今後はさらに、問い合わせデータの定性的な分析や管理の質を上げて、共有の範囲も広げていきたいと考えています。

YAMAPではこの春に、レンタル事業も開始しました。山道具は比較的高単価の商品が多く、最初から全てを購入して揃えるのはユーザーさんにとって負担が大きいです。セットでの貸し出しや、お試し後購入などの仕組みを導入して、登山初心者の方にも安心して体験いただけるサービス、購入の意思決定がしやすいサービスを目指しています。

私たちは、山道具というモノを通じて、ユーザーさんに登山・アウトドアの“体験”を深めてもらい、その体験にこそ価値を感じていただきたいと思っています。今後も多くのユーザーさんに寄り添いながら、ユーザーさんの体験と、私たちが提供できる価値の両方をアップデートしていきたいです。

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