AIによって現場を変える。CSの次なる進化を実現するアダストリアの挑戦

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アダストリアが推進するCS変革の原動力は、現場で積み重ねられる日々のトライ&エラーです。前編では全社レベルのCS戦略を概観しましたが、後編では、現場主導で実装したAIソリューションの導入プロセスと、今後想定されるビジネスインパクトを深掘りします。(前半記事はこちら

生成AIの急速な普及を受け、多くの企業がAI活用を模索する中、アダストリアCSチームは月間3000件超のチャット問い合わせを完全自動化し、顧客満足と業務効率の両立を実現しました。AI黎明期に先行して成果を創出できた要因と運用のリアルを、CS統括・宇都宮氏とCS/DXチームリーダー木津せりか氏に伺います。

ワークフローとAIのハイブリッドで、有人チャットから無人チャットへ

-木津さんのご経歴を教えてください。

木津:アダストリアのブランド「グローバルワーク」にアルバイトとして入社し、その後社員登用を経て約2年間店舗店長を務めました。その後、会社の社内公募に手を挙げCSに異動して、現在3年目になります。顧客対応に加え、チャネルトークのAIエージェント「ALF」のチューニング(教育)やシナリオ設計、VoCレポートの作成・推進を担当しています。

-AI活用は今回が初めてでしたか?

木津:はい。ただ、チャネルトークはUIが直感的で、ALFの設定や運用にも専門的なAI知識は不要だったため、スムーズに取り組めました。店舗で培った「お客様が本当に困っていること」に寄り添う視点でチューニングを行った結果、自然とALFの正答率も向上し、非常に相性の良さを感じています。

-ALF導入以前からワークフロー型Botを設定いただいていました。そこにALFを追加したことで、さらに効果はありましたか?

宇都宮:2023年にチャネルトークのワークフロー型Botで自己解決導線を構築した結果、導入直後から自己解決率が向上し、顧客満足度は5段階中の4.7という高水準を記録しました。問い合わせ件数も2024年11月にAI機能ALFを追加したところ、2025年4月の時点で有人対応は月3000件超から300件弱まで減少しました。

土日祝の問い合わせも9割以上がALFで自己解決され、平日でも1日あたり10件未満の有人対応に抑えられています。チャット起動数が2023年から5%→23%に増えている中でここまで効率化できたのは大きな成果です。

木津:特に削減効果が大きかったのは、カートイン後のポイント利用やキャッシュレス決済注文エラー関連の問い合わせなどを自己解決に繋げる定型的な問い合わせ回答領域です。ALFは毎回内容を生成して回答するため、シナリオ型Botでは満足いただけなかったお客様にも寄り添い、適切な回答を提供できます。 

定型文や検索補助ではなく、人と人の会話のように動的に応答できる点が、“デジタルに不慣れなお客様ほど助けになる”という逆説的な価値を生み出していると感じています。

日々5分の改善。チューニングを文化に

木津:導入当初は週2〜3時間を分析・調整に充てていましたが、現在は「毎朝5分」で済んでいます。重要なのは最初の1ヶ月で“答えられなかった問い合わせ”を徹底的に洗い出してチューニングすること。この準備ができれば、その後は日常業務の中で回せます。 

また、システム障害などのレアケースにも即応できるよう、少数の有人対応からパターンを抽出し、ALFへ即時反映する仕組みも整備済みです。チャット対応がほぼ自動化されているため問い合わせ自体が稀ですが、同じ内容が重複して発生した場合は内部エラーを疑い、早急に対策を検討します。  

「不具合かも?」と思ったタイミングでALF向けFAQを追加する──これに要する時間は最長10分。この短時間のチューニングで不具合関連の問い合わせはALFが代行対応してくれます。実際、有人問い合わせが10件発生した段階で、その後も問い合わせが増加することを予測して、ALFに対応方法を追記したところ、その日のうちに同件の問い合わせ120件を自動回答できました。10分の設定で120件を自動化できたのは、ALFの運用に慣れた証しであり、その扱いやすさを改めて実感した出来事です。

-今でこそALFに慣れていますが、導入前に不安はありませんでしたか?

木津:当時はAIに多く触れていたわけではなく、「普段CSが受ける多様な質問に本当に答えられるのか」という漠然とした不安はありました。ですが、実際に触ってみると設定はシンプルで、ALFが回答するロジックも分かりやすい。デジタル領域の経験が浅い私でも理解し、日々改善を重ねて成果を出せています。まだ手が行き届いていない部分もありますが、これから大きな変革を起こせそうでワクワクしています。

宇都宮:当社ではAIは、ビジネスを大きく変革する鍵と捉え、1年前から準備を進めてきました。導入前には検証を行い、お客様が安心して利用できるかクオリティチェックを実施したため、ALF活用自体に抵抗はありませんでした。  

AIの進化は非常に速く、常に情報をアップデートし続ける必要があります。準備段階より、導入後に学び・改善を続ける姿勢の方が重要だと感じています。ALFは木津が言う通り使いやすいツールなので、チーム全体でさらに理解を深め、活用範囲を広げていきたいですね。 

実際、CSチームの94%がAIを日常の業務で活用し、生産性を向上させています。今後数年間のスピード感に対応する上でも、ALF導入を早期に決断していたことは正解だったと確信しています。

CSから全社へ。AI活用を組織に広げる

宇都宮:チャネルトーク経由の問い合わせは現時点で概ね自動化されており、ALFの返答品質も高水準です。そのため、2025年4月30日からチャット問い合わせは完全無人運用へ移行しました。

そこで創出できた余剰時間は、VoCレポートの深掘りや新たな次世代CS業務の設計・価値創出に投資しています。

木津:問い合わせ件数が減少したことでスタッフ負荷は大幅に軽減され、私自身もVoCレポート作成に注力できています。ALFを通じてお客様の声がよりクリアに可視化されれば活用の幅はさらに広がると期待しています。まだ手を付けられていない領域としては、音声対応が大きな伸び代だと思います。

宇都宮:社内でも調査は進めていますが、音声系ソリューションはコスト面でハードルが高いのが現状です。チャネルトークが音声領域までカバーしてくれれば、チャット対応で培ったナレッジを活かしながら、お客様にも私たちにもシームレスな体験を提供できると考えています。

電話対応はCS業務でも特に心身的なスタッフへの負担が大きいので、将来的に電話もALFで自動化できるようになれば、CS部署への人気もさらに高まるでしょう。

チャットと電話の両方がALF対応可能になった後は、これまで以上に精緻なデータ分析が求められるはずです。木津の言う通り、お客様の声をALF経由でも確実にキャッチアップし、CSがデジタルとAIを駆使して新たな付加価値を生み出すチームへ進化していきたいですね。

さらに、リアル / WEBの対応領域問わずテクノロジーを使いこなせる人材を増やし、部署全体でコンタクトセンター・アワード受賞を狙える体制を整えていきたいと考えています。個人として2024年にZendesk User Champion2024の表彰をいただきましたが、2025年はチーム全員での受賞を目指したいですね。

そのためにも今以上にAIによる生産性を高め、お客様にとって有益な体験を提供し、会社の成長を我々が下支えできるよう貢献して行きたいと思います。

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