CESとは?顧客の手間が離脱を招く理由と活用術
Nova • CXチーム | 現場のオペレーターからマネージャーまで、11年間お客様の「困った」に向き合い続けてきました。現場の泥臭い試行錯誤と、組織で支える難しさの両方を知っているからこそ、導入検討時も活用中も、皆様と同じ目線で誠実にサポートいたします。
- CS Tips
「顧客満足度(CSAT)の数値は安定しているのに、なぜか解約が減らない」という課題を抱える企業のカスタマーサポート(CS)やコールセンターの現場は少なくありません。
実は、最新のCX(顧客体験)研究では、顧客の継続利用に影響を与えるのは「感動体験」よりも「解決までの手間の少なさ」であると言われています。
そこで重要視されているのが、顧客の負担を数値化する指標「CES(カスタマーエフォートスコア)」です。
本記事では、「CESとは何か、なぜ離脱防止の鍵となるのか」という疑問に答えるべく、CS業界の基本用語であるCESの基礎から実践的な活用方法までを解説します。また、ネット・プロモーター・スコア(NPS®)やCSATとの違いも詳しく解説します。
あわせて、顧客理解のためのAIエージェント「チャネルトーク」を用いて顧客の負担を可視化し、改善につなげる実務的な手法も紹介しています。
サポート品質の向上や離脱防止の新しい切り口を探している方は、ぜひ今回の記事を参考にしてください。
CES(カスタマーエフォートスコア)とは?
CES(カスタマーエフォートスコア)とは、顧客が課題を解決するために費やした「手間(努力)」の度合いを数値化した指標のことです。
カスタマーサポートの現場では、顧客がストレスなくスムーズに目的を達成できたかを測るための重要なKPIとして活用されています。
なお、CSの現場でCESとあわせてよく使われる指標として、顧客の対応直後の満足度を測る「CSAT(顧客満足度)」と、ブランドへの長期的な推奨意向を測る「NPS®(ネット・プロモーター・スコア)」があります。それぞれ測る対象が異なるため、目的に応じた使い分けが重要です(詳細は後述の比較表で解説)。
本章では、CESの具体的な定義や測定方法、そして現代のCSにおいてこの指標が不可欠とされる理由について詳しく解説します。
CESの定義とCS業界での使われ方
CESは、主にサポート対応が完了した直後のアンケートによって測定されます。
一般的には「今回の問題を解決するために、どれくらいの手間がかかりましたか?」という問いに対し、1〜7の段階評価(「1:全くかからなかった」から「7:非常にかかった」まで)で回答してもらう形式が主流です。
注意点として、CESという言葉は、世界最大級の家電・IT見本市「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」を指す際にも使われますが、CSやコールセンター業界においては「顧客の手間」を指す指標として定義されています。
本記事で取り扱うCESは、解決までに何度もやり取りを強いたり、複雑な操作を求めたりしていないかを客観的に評価する指標です。
CESの計算方法
CESの算出方法はいくつかありますが、一般的で運用しやすいのは「平均値方式」です。
1(全くかからなかった)〜7(非常にかかった)の7段階で回答を得た場合、この全回答の合計値を回答数で割った平均値がCESとなります。
スコアの解釈:
数値が低いほど「顧客の負担が少ない(良い状態)」と判断します。
ポイント:
定期的にこの平均値をモニタリングし、急激に数値が上昇した(手間が増えた)タイミングで、直近のサポート体制やサイト改修に問題がなかったかを振り返る運用が効果的です。
CESを測定するメリットと重要性
CESを測定する最大のメリットは、解約(チャーン)のリスクを早期に検知できる点にあります。
Harvard Business Review誌に掲載されたCEB(現ガートナー社)による研究によると、特別な感動体験を提供することよりも、顧客の「手間」を減らすことの方が、リピート率やロイヤルティの向上に強く相関するという結果が出ています。
顧客は「早く、簡単に」問題を解決したいと考えています。
どんなに丁寧な接客を受けても、解決までに数日待たされたり、担当者をたらい回しにされたりすれば、心理的な負担は増大し、結果としてサービスから離れる原因となります。
CESが可視化されることで、企業のサポート体制が顧客に「負の体験」を強いていないかを正確に把握できるのです。
なぜ顧客の手間を減らすことが離脱防止に直結するのか
顧客がサービスを解約する最大の理由は、期待外れの体験ではなく、解決までに要した「過度な負担」にあります。
どれほど製品が優れていても、サポートを受ける過程でストレスが蓄積すれば、顧客の心は次第に離れてしまいます。
満足度の高い顧客が離脱してしまう理由
アンケートで「満足」と回答した顧客が、翌月には解約していたという事象は珍しくありません。
これは、CSAT(顧客満足度)が「その瞬間の感情」を測るのに対し、継続利用の意思は「一連の手続きで感じた疲労度」に左右されるためです。
例えば、問題自体は解決して満足したとしても、解決までにFAQを何ページも探し回り、最終的に電話で何度も同じ説明を強いられたとしたらどうでしょうか。
顧客は「次もこの手間をかけるのは面倒だ」と感じ、より楽に利用できる競合サービスへと流れてしまいます。
満足度という表面的な数値だけでは、こうした「隠れた解約予備軍」を捉えることはできません。
感動体験よりも「スムーズな解決」が求められる背景
かつてのCSでは、期待を超える「感動体験(サプライズ)」の提供が推奨されてきました。
しかし、現代のタイパ(タイムパフォーマンス)を重視する顧客にとって、最大の価値は「自分の時間を奪われないこと」です。
実務の現場でも、「丁寧だが話が長い対応」よりも「簡潔で即座に終わる対応」の方が、結果としてリピート率に寄与するケースを多く目にします。
顧客はサポートに対して、過度なホスピタリティよりも「迷わず、待たず、二度手間がないこと」を求めています。
このマイナス要因(手間)をゼロに近づける活動こそが、離脱を食い止める確実な防波堤となるのです。
CES・CSAT・NPS®の違いと使い分け
カスタマーサポートの現場では、CESは重要な指標の一つですが、それ以外にもさまざまな指標が活用されています。それぞれの指標は「何を測るか」という目的が異なるため、適切に使い分けることが重要です。
各指標の役割と比較表
CSにおける主要な3指標は、それぞれ「感情」「推奨」「負担」という異なる側面を可視化します。
各指標の定義と特徴を以下の表にまとめました。
指標名 | 測定内容 | 質問例 | 活用シーン |
|---|---|---|---|
CSAT (顧客満足度) | その瞬間の満足度 | 「今回の対応に満足しましたか?」 | 個別のサポート品質評価 |
NPS® (ネット・プロモーター・スコア) | 長期的な信頼度 | 「このサービスを友人に勧めますか?」 | 企業・ブランドの成長予測 |
CES (カスタマーエフォートスコア) | 解決までの負担感 | 「解決までにどれほど手間がかかりましたか?」 | 離脱防止・プロセス改善 |
CSATは対応直後の「点」の評価に優れていますが、NPS®はブランド全体へのロイヤルティという「面」の評価に適しています。
さらに、CSATは主にスタッフの接客品質を、CESは手続きや仕組みの利便性を測るという違いもあり、両者を組み合わせることで顧客体験を多角的に把握できます。
そこにCESが加わることで、満足度が高いのになぜか継続されない、といった指標間のギャップ(矛盾)を解明する手がかりが得られます。
【具体例:ECサイトの返品対応】
例えば、あるアパレルECサイトで返品対応について、お客様アンケートを取ったとします。
「スタッフの対応」を聞くCSATは5段階中4.5点と高評価で、接客品質に問題はなさそうに見えました。しかし、リピート率は低下傾向…。
そこで「返品手続き全体」のCESを測定したところ、スコアは7段階中5.8点と高く出ました(=手間が大きい)。
原因を深掘りすると、「返品フォームに10項目以上の入力が必要」「返送先の住所が記載されておらず毎回問い合わせる必要がある」といった、プロセス自体の煩雑さが浮かび上がってきました。
このように、CSATで「人(スタッフ)の接客品質」を、CESで「プロセスや仕組みの利便性」を測ることで、「人による対応」と「仕組みによる体験」の両方を客観的に把握できるようになります。
状況に応じた指標の組み合わせ方
結論として、1つの指標だけに頼るのではなく、複数を組み合わせて多角的に分析することが、顧客体験(CX)の改善には不可欠です。
具体的には、以下の3ステップで運用するのが理想的です。
STEP 1:CESで「つまずきポイント」を特定する
まずは顧客がどこで負担を感じているかをCESで可視化します。例えば、SaaSサービスで「契約変更プロセス」のCESを測定したところスコアが7段階中5.5点と高く出た場合、「契約変更フォームの項目が多すぎる」「変更内容によっては電話が必要」など、具体的なボトルネックが見えてきます。これを基にフォームの簡略化やFAQの整備を進めます。
STEP 2:CSATで日々の対応品質を管理する
CES改善で導線を整えた後は、個別の問い合わせ対応がきちんと機能しているかをCSATで確認します。例えば、チャットサポートのCSATを毎週モニタリングし、5段階中4.5点を下回ったオペレーターには追加トレーニングを実施するといった運用が可能です。
STEP 3:NPS®で長期的なロイヤルティを追跡する
CESとCSATが改善されてくると、半年〜1年後にNPS®(推奨意向)の向上として成果が現れます。NPS®はビジネス全体の健全性を測る指標であるため、四半期に1回など長めのサイクルで測定するのが一般的です。
特に解約率の改善を最優先課題とする場合は、NPS®よりも先にCESの数値改善に取り組むことで、より即効性のある施策を打ち出せます。「明日からでも改善できる目の前の手間」を削ることが、解約防止の最短ルートだからです。
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CESを改善し顧客体験を高める3つの実践方法
CESを改善する本質は、顧客が「考えなくて済む」環境を整えることです。
本章では、FAQの活用、問い合わせ窓口の最適化、そして現場で徹底すべき「二度手間の排除」という3つの実践的なアプローチを解説します。
FAQの充実で自己解決をサポートする
自己解決できる環境を整えることは、顧客の手間を最小限に抑える効果的な手段です。
顧客がわざわざ問い合わせを行うという行動自体がすでに「手間」であり、検索して即座に回答が得られるFAQの整備は、CESを劇的に改善します。
FAQの検索性を高め、顧客が迷う時間を物理的に削減することが重要です。
顧客が使う言葉(検索語句)に合わせて見出しを調整し、図解や動画を用いて「直感的に理解できる」状態を目指しましょう。
接客プラットフォームの導線を見直す
どうしても問い合わせが必要な際、迷わずに連絡できる「接客プラットフォーム」の配置が重要です。
サイトの深い階層まで潜らなければ窓口が見つからない状態は、顧客の心理的な負担を大きく増大させます。
顧客が困りやすいページに適切なタイミングでサポート窓口を表示させるなど、アクセスのしやすさを追求してください。
また、入力フォームの項目を最小限に絞ることも、物理的な負担を減らし「このサービスは使いやすい」という実感に繋がります。
実務Tips:対応の二度手間を徹底的に排除する
CSの実務において、顧客がストレスを感じるのは「同じ説明を何度もさせられること」です。
担当者が代わるたびに最初から状況を説明しなければならない二度手間は、離脱の決定打になり得ます。
現場の洞察として、情報のシームレスな共有こそが最大の「おもてなし」になります。
顧客が過去に何を聞き、どのようなトラブルを抱えていたのかを瞬時に把握し、「前回お話しいただいた件ですが」と一言添えるだけで、顧客の精神的な負担は大幅に軽減されます。
チャネルトークで顧客の負担を可視化し改善する
顧客理解のためのAIエージェント「チャネルトーク」には「CES」を計測するための専用機能はありませんが、標準搭載されている満足度調査(CSAT)や統計機能を活用することで、顧客の負担を十分に可視化できます。
本章では、自由記述欄の分析方法と、統計機能を用いたボトルネックの特定手順について解説します。
満足度調査(CSAT)の自由記述から負担感を抽出
チャネルトークの満足度調査(CSAT)は、チャットでの相談終了後に自動でアンケートを送信できる機能です。
ここで重要なのは、数値だけでなく「自由記述欄(コメント)」を徹底的に分析することです。顧客が「解決はしたが、説明が難しかった」「FAQがどこにあるかわからなかった」といった不満を記載している場合、それはCESが高い(=数値が大きく、負担が大きい)サインです。
満足度評価が「満足」であっても、コメントに「手間」を感じさせるキーワードが含まれていないかを定期的にチェックすることが重要です。
分析機能でサポートのボトルネックを特定する
分析機能(接客チャット統計やカスタムレポート等)を活用する最大の目的は、データから「本来は発生しなくてよかったはずの問い合わせ」を見つけ出すことです。
顧客にとって、解決策を探した末に問い合わせに至るプロセス自体が大きな手間であるため、問い合わせの「数」と「内容」を分析することがCES改善の第一歩となります。
具体的には、分析メニューの各統計画面で相談に付与された「タグ」の集計結果を確認し、特定の操作方法や手続きに関する問い合わせが急増していないかをチェックします。
(※カスタムレポートはGrowthプラン以上でご利用いただける機能です。)
例えば、「返品方法」に関する問い合わせが全体の多くを占めている場合、それはFAQの導線が分かりにくい、あるいは説明が不十分で「自己解決を妨げているボトルネック」であると特定できます。
こうした課題をFAQの改善やサイト改修で「問い合わせる前に解決できる状態」へと変えていくことが、顧客の手間を物理的に削減する確実な方法です。
CESに関するよくある質問(FAQ)
CESの導入を検討する際、現場の担当者からよく寄せられる質問をまとめました。
指標を正しく運用し、改善に繋げるための参考にしてください。
CESはどのタイミングで測定すべきですか?
CESの測定は、顧客の記憶が鮮明な「サポート対応完了直後」が効果的です。
具体的には、チャット終了直後や通話終了直後に自動アンケートを送信する形が理想とされており、顧客の記憶が鮮明なうちにフィードバックを得ることが推奨されています。
CESが高い(顧客負担が大きい)場合の主な原因は何ですか?
顧客が「手間だ」と感じる主な要因には、以下の3つが挙げられます。
たらい回しと二度手間:
担当者が何度も変わり、そのたびに同じ説明を求められる状態。
自己解決導線の不足:
FAQを見つけられず、簡単な確認のためにわざわざ問い合わせを強いている状態。
チャネルの断絶:
「チャットで解決できず、結局電話をかけ直す必要がある」など、手段を切り替えなければならない状態。
これらに共通するのは「顧客の時間を奪っている」という点です。
CESを改善するには、優れた接客プラットフォームを活用して顧客情報を一元管理し、シームレスな体験を提供することが近道となります。
まとめ:顧客の手間を最小化し選ばれるCSへ
本記事では、カスタマーサポートにおける新たな重要指標「CES」について、その定義から具体的な改善手法までを解説してきました。
顧客がサービスを使い続けるかどうかを左右するのは、特別な感動体験の有無ではなく、「いかにストレスなく、自分の時間を奪われずに問題を解決できたか」という点にあります。
CSATやNPS®といった既存の指標にCESを組み合わせることで、これまで企業が見落としていた「顧客の負担」を浮き彫りにし、より精度の高い離脱防止策を講じることが可能になります。
まずは自社のサポートにおいて、顧客に「二度手間」や「探し回る手間」を強いていないかを見直すことから始めてみましょう。
顧客理解のためのAIエージェント「チャネルトーク」を活用し、データを可視化しながら一つひとつボトルネックを解消していくことで、顧客に選ばれ続ける企業の強固な関係性を築けるはずです。