コールセンターはAI導入でなくなるのか?事例と実データが示す業界の未来
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「コールセンターは、AIによってなくなるのではないか」
生成AIの急速な進化を受けて、こうした不安が業界に広がっています。
経営層からは人員削減の期待、現場のオペレーターからは仕事を失う懸念。カスタマーサポート(CS)部門の運営責任者は、両者の板挟みのなかで判断に迷っているのではないでしょうか。
結論を先に示すと、コールセンターはなくなりません。ただし、その役割と構造は確実に変わります。
定型的な応対はAIが担い、複雑な対応や関係構築では人の価値がむしろ高まる「AI×人」のハイブリッド運用が、業界が向かう次のフェーズです。
本記事では、「コールセンターがなくならない理由」と「AI×人によるハイブリッド運用」について、事例と実際のデータを交えて答えます。
AI導入に伴うCS部門の戦略立案にお悩みの方は、ぜひ今回の記事を参考にしてください。
「コールセンターはなくなる」論の正体とは?
「コールセンターはAIによってなくなるのか」
この問いを考える前に、前提を整理しておきましょう。
コールセンターは電話だけでなく、メールやチャットなど多様な手段で対応する「コンタクトセンター」として進化しています。
この問いには、立場によって異なる「なくなる」の意味が混在しています。まず必要なのは、論調を整理することです。
この章では、業界に広がる「なくなる論」の正体を解きほぐし、CS部門の運営責任者が向き合うべき本質的な問いを明らかにします。
なぜ「コールセンターはAIでなくなる」と言われるのか?
「コールセンターはなくなる」と言われる背景には、生成AIの急速な進化があります。
ChatGPTをはじめとする生成AIが一般化したことで、定型的な問い合わせをAIが処理できる現実味が一気に高まりました。
株式会社PRIZMAのリサーチでは、実際に企業の37.5%はすでにAIによる自動対応を導入済みです。検討中の企業を含めると、およそ8割に達するという調査結果もあります。
その結果、「もうオペレーターは不要になるのではないか」という議論が業界全体に広がっています。
ただし、「なくなる」という言葉の意味は、立場によって大きく異なります。
経営層が言う「なくなる」:人件費・運営コストとしての規模が縮小する
現場のオペレーターが感じる「なくなる」:自分たちの仕事が奪われる
メディアが報じる「なくなる」:業界そのものが消滅する
実際に、株式会社PRIZMAの同調査では、AI導入のきっかけとして「人件費を削減したい」を挙げる企業は48.0%にのぼります。
経営層を含めた回答者の間で「コスト圧縮」への期待が強い実態が浮かびます。
同じ言葉でも、想定するシナリオは三者三様です。この前提を整理しないまま議論を続けると、社内で合意形成が進まなくなります。
コールセンター業界が向き合うべき本当の問いとは?
向き合うべきは「なくなるかどうか」ではなく、「どう変わるか」という問いです。
なぜなら、コールセンターは顧客の悩みに対する迅速な対応を行うことで、顧客側と企業側の双方にメリットをもたらす職種だからです。
この本質的な価値が変わらない限り、機能そのものがなくなることはありません。
AIが代替できる業務領域が広がっているのは事実です。
導入後の業務工数の削減は、数字にも表れており、今後ますます削減率も向上することが想定されています。
「業務工数(対応時間や作業負荷)がどの程度削減されたか」という質問では、『30〜49%削減(33.5%)』できたと回答した方が最も多く、次いで『50〜79%削減(30.3%)』と続きました。
3割~7割近い工数削減を実感する企業が多く、業務の一部をAIに任せることで、担当者がより付加価値の高い業務に注力できる環境が整いつつあるようです。
参考:【AIチャットボットの導入実態調査】導入後、顧客満足度が「向上した」企業が6割以上!?リアルな声を調査!(株式会社PRIZMA、2025年5月公開)
一方で、コールセンター/CSの業務には、感情に寄り添う対応や複雑な個別判断もあります。AIだけでは完結しない領域も存在します。
本記事では、AIエージェントの直近1年の運用データと、実際の導入企業の事例から、業界がどう変わりつつあるかを実例ベースで読み解いていきます。
データが示すAIエージェントの「現在地」
AIエージェントはすでに、コールセンター業務の一部を実用レベルで担えるところまで到達しています。
もともとコールセンターでは、対応品質と効率を両立させるためにKPI(重要業績評価指標)を用いて運営状況をデータ管理しています。AI導入の効果も、このKPIの変化として可視化されます。
この章では、チャネルトークのAIエージェント「ALF」の直近1年間(2025年5月〜2026年4月)の運用データ(※グローバル全体)を通じて、AIの現在地を具体的に見ていきます。
ALFの1年間の成長:セッション数約2.3倍の意味
ALFとは、顧客理解のためのコミュニケーションツールを提供するチャネルトークのAIエージェントです。
ALFが処理する顧客とのやりとり(セッション数)は、2025年5月から2026年4月までの1年間で約2.3倍に成長しました。
ここでいう「セッション」とは、AIと顧客のひとまとまりの対話を指します。
ALFは、ECサイトや企業サイト上で、顧客からの問い合わせにチャット形式で自動回答します。
今回掲載している「セッション数」は、AIがどれだけのチャット問い合わせを実際に担ったかを示す指標です。
実際のセッション数の推移は以下の通りです。
【Before】2025年5月:293,946セッション
【After】2026年4月:684,638セッション
同期間(2025年5月〜2026年4月)に、ALFを導入している企業の顧客対応窓口(累積チャネル数)も1,211から2,923へと、約2.4倍に増加しました。
つまり、AIエージェントは多くの企業が日常の顧客対応に活用する実運用フェーズに入った段階です。
解決率81.3%が示すAIの実力
ALFは、2025年10月に解決率81.3%というピークを記録しました。
解決率とは、AIが対応した問い合わせのうち、人の介在なしで完結した割合を指します。
つまり、8割以上の問い合わせが、人を経由せずに解決できているということです。仮に1日100件の問い合わせがあれば、約80件はAIだけで完結する計算になります。
「AIで完結する問い合わせ」は、実運用で実証されている運用方法なのです。
AIで代替可能な業務領域とは?
AIで代替可能な業務領域は、「定型性が高く、判断基準が明確な業務」に集約されます。
コールセンターで働く際の注意点として、マニュアルを覚えることが大変であることが挙げられます。
多くのコールセンターには業務フローや注意点がマニュアル化されており、これを覚えなければスムーズに仕事を進められません。
AIエージェントは、こうしたマニュアル化された業務を学習データとして即座に取り込めるため、定型業務の代替で強みを発揮します。
これまでの運用データから、自動対応が進む領域は主に以下の3つです。
定型FAQ対応:商品仕様、利用規約、サービス内容など
決済・契約関連の案内:支払い方法、料金体系、手続き案内
営業時間外の一次対応:24時間365日の即時応答
これらは情報が体系化された領域です。一方で、感情に寄り添う対応や複雑な個別判断は、人の領域として残ります。
AIと人の役割分担を整理すると、以下のようになります。
業務領域 | AIが得意 | 人が担うべき |
|---|---|---|
定型FAQ対応 | ◎ | △(補完的) |
決済・契約手続き案内 | ◎ | △(複雑な個別判断) |
営業時間外の即時応答 | ◎ | ×(リソース確保困難) |
クレーム対応・感情労働 | △ | ◎ |
個別事情を踏まえた相談 | △ | ◎ |
関係構築・カスタマーサクセス | × | ◎ |
事例で見るAI×人のCS現場の進化
ここまで見てきたAIエージェントの「現在地」を、実際の導入企業の事例から確かめていきましょう。
本章では、ALFを活用してCS現場を進化させた2社の取り組みを紹介します。
SHE株式会社とアダストリア(現・株式会社アンドエスティHD)の事例から、AIと人の役割分担、そして「AI運用」の発想を具体的に読み解いていきます。
事例1:SHEが実現した問い合わせ50%減
「オンラインスクール × コミュニティ」の先駆けとしてSHElikes(シーライクス)の事業を開始したSHE株式会社では、ALFを本格運用したことで、月間の問い合わせ数を半分にまで削減しました。
導入後の効果は以下の通りです。
2025年1月:問い合わせ4,000件
2025年2月以降:2,000件まで減少
2025年6月:2,600件を自動化
その結果、有人チャット接続率を25%に抑えながら、顧客満足度指標(CSAT)は4.6以上を維持できています。
この成果を支えているのは「AI導入」ではなく「AI運用」という発想です。週1回、現場のCSメンバーが回答精度をチェックし、改善を続けています。
事例2:アダストリア(現アンドエスティHD)のCS自動化の到達点
アパレル大手のアダストリア(2025年9月より株式会社アンドエスティHDへ商号変更)は、ALFの活用により、チャット問い合わせの完全無人運用に到達しました。
導入後の効果は以下の通りです。
有人対応件数:月3,000件超 → 約300件(2025年4月時点)
土日祝の問い合わせ:9割以上がALFで自己解決
平日の有人対応:1日10件未満
2025年4月30日からはチャット問い合わせは完全無人運用へと移行しました。
創出された余剰時間は、VoC(顧客の声)分析や次世代CS業務の設計など、より付加価値の高い領域に投資されています。
コールセンターはなくならない、変わる
ここまで見てきたデータと事例から、ひとつの結論が見えてきます。
コールセンターはなくなりません。代わりに、その役割が「コストセンター」から「バリューセンター」へと変わりつつあります。
この章では、AIと人の役割分担、「AI×人」のハイブリッド運用の未来像、そしてCS部門が取るべき次の一手を整理します。
AIが代替する領域、人が担い続ける領域
AIと人の役割分担は、業務の性質によって明確に分かれます。
AIが得意なのは、定型的で判断基準が明確な業務です。一方、人が担い続けるのは、感情や個別事情に寄り添う対応です。
AIが代替する領域:
定型FAQ・契約手続きなど判断基準が明確な業務
24時間365日の即時応答
大量の問い合わせの一次受付・自動振り分け
人が担い続ける領域:
感情に寄り添うクレーム対応・心情への配慮
複雑な個別事情を踏まえた相談
顧客との関係構築・長期的なファン化
特にクレーム対応は、人にしか担えない代表的な業務です。
コールセンターの仕事には、顧客からのクレーム対応が含まれます。クレーム対応では、理不尽な要求や罵詈雑言を受けることもあり、毅然たる態度で接することが求められます。
こうした感情的な機微への対応を、現時点でAIに任せるのは困難です。
また、顧客との関係構築や長期的なファン化といったロイヤリティを高めていくことも人によるケアが必要です。
「AI×人」のハイブリッド運用とは?
「AI×人」のハイブリッド運用とは、AIが定型業務の土台を支え、人がより付加価値の高い業務に集中できる構造です。
単なる業務分担ではなく、両者のシナジーを生み出す仕組みを指します。
従来、CS部門は「直接収益に貢献することのないコストセンター」と見なされがちでした。しかし、AIが定型業務を担うようになると、人の役割は大きく変わります。
顧客の声を起点に商品・サービスを改善する「意思決定の源泉」として、CS部門が事業成長を牽引する存在へと進化していきます。
VoC活用が拓く「バリューセンター」の姿
CS部門が「バリューセンター」になる鍵は、VoC(Voice of Customer:顧客の声)の戦略活用です。
日々の問い合わせには、製品改善のヒント、新規ニーズ、解約理由など、経営判断に不可欠な情報が眠っています。
これまでは目の前の対応に追われ、こうした情報は十分に活用されてきませんでした。
AIが定型業務を担うことで、CSは顧客の声を構造的に分析し、経営や商品開発へ届ける役割を担えるようになります。
具体的なVoC活用シーン
商品開発への還元:解約理由や要望をプロダクト改善に直結させる
マーケティング戦略:顧客が実際に使う言葉でメッセージを設計する
経営判断:現場の声を経営層に届け、意思決定の精度を上げる
CS部門は、顧客と経営をつなぐ「戦略部署」へと進化していきます。
CS部門の運営責任者が取るべき次の一手
CS部門の運営責任者がまず取り組むべきは、AIと人の役割分担の言語化です。
経営層に対しては、AIによるコスト圧縮の効果だけでなく、「人が担う付加価値領域への投資」として説明する。
現場に対しては、AIによって仕事が奪われるのではなく、より創造的な業務にシフトする未来を示すことが重要です。
共通して語るべきメッセージは、次の3点です。
定型業務はAIに任せ、人は感情労働や関係構築に集中する
VoC(顧客の声)の戦略活用を通じて、商品開発・経営判断に貢献する
CS部門を「コスト」ではなく「成長投資」として位置づける
この説明軸を社内で持つことが、AI導入を単発のコスト削減で終わらせず、組織の競争力に変える分岐点になります。
よくある質問(FAQ)
ここまでの内容を踏まえて、コールセンターにおけるAI導入の場面で寄せられる質問にお答えします。
Q. AIを導入するとオペレーターは不要になりますか?
オペレーターは不要にはなりません。役割が「定型対応」から「複雑な対応や関係構築」へとシフトします。 AI導入が進む企業では、定型業務はAIが担い、人は感情労働や個別判断に集中する役割分担が定着しつつあります。
むしろAIが下支えすることで、人はより付加価値の高い業務に集中できるようになります。
「AIに仕事を奪われる」のではなく、「AIに任せる業務」と「人が価値を発揮する業務」が明確に分かれていく構造です。
Q. AI導入の効果が出るまでにどのくらいかかりますか?
既存のFAQやマニュアルが整備されている企業では、導入当日から効果が出るケースもあります。これは、AIエージェントが社内に蓄積されたFAQ・マニュアルを学習データとして活用するためです。コンテンツが豊富な企業ほど、導入初期から成果につながりやすい傾向があります。
短期間で大きな成果につながる事例も多いといえます。ただし、安定的な成果を出すには、回答精度を継続的に高める「AI運用」の組織体制が重要です。
導入後の定期的なチューニングを習慣化することで、効果が持続的に積み上がっていきます。
Q. AIで対応しきれない問い合わせはどう扱うべきですか?
AIが対応できない問い合わせは、人のオペレーターにエスカレーションし、AIと人で役割を補完し合う運用が基本です。
具体的には、以下のような流れになります。
一次受付:AIが全件対応し、定型的な内容は自動回答
振り分け:AIが解決できない複雑な内容を人にエスカレーション
二次対応:人が感情への配慮や個別判断を要する対応を担う
重要なのは「AIだけ」「人だけ」で完結させようとせず、両者のシナジーを設計することです。AIに任せる範囲と人が担う範囲を明確にすることで、運用の質と効率の両方が向上します。
まとめ:コールセンターはなくならない
「コールセンターはAIによってなくなるのか」という問いへの答えは、コールセンターはなくなりません。定型業務はAIが担えても、感情労働や関係構築は人にしかできないからです。
ただし、その役割と構造は確実に変わります。
チャネルトークのAIエージェント「ALF」は直近1年で、セッション数約2.3倍、解決率ピーク81.3%を記録しました。これは、AIがすでに実用フェーズに到達したことを示しています。
さらにSHE株式会社は、問い合わせ50%減を「AI運用」の発想で実現しました。アダストリア(現アンドエスティHD)も、ALFの活用によりチャット問い合わせの完全無人運用に到達しています。
これらの事例が示すのは、AIで人が減るのではなく、CSが顧客の声を経営に活かす「戦略部署」へと進化する未来です。
CS部門は「コストセンター」から「バリューセンター」へと進化していきます。AI×人のシナジーで、事業成長を牽引する存在になります。
自社のCS戦略を次のフェーズへ進めたい方は、ぜひALFの詳細をご覧ください。